のんびりアート Vol.56

重力まかせ!?

(2011年08月19日記事)


「筋力を使わないで、重力を使うのだよ」…焚火用の木を割っていた僕の後ろから声がかかって来た。ついこの前、アニメ映画の“カンフーパンダ2”を見たばかりだったので、その言葉が、何か、カンフーマスターからの深い意味がある奥義の様に響き、一瞬にして僕はパンダになった。今回の映画の物語りは、ある戦いとパンダの自分探し(?)がテーマ。大好きな優しい自分の父親はグースであるという、シュールな関係の現実に、どうも生まれて間もなく、自分は親に捨てられたのではないかと疑い始めます。そんなある日、老カンフーマスターは敵を倒す技の極意を教えながらパンダに諭します…「どこで、どの様な生い立ちを過ごそうが、過去は問題ではないのだ。重要な事は、未来の自分の姿をどう描くかであり、現在をどう生きているかなのだ」。

と、そこまで映画の中に没頭したあと我に返った。そして「筋力を使わないで、重力を使うのだよ」…を思い出すと、何か素直に納得できるピンと来るものがあり、僕はすぐ実行してみた。そしたら、そしたら、沢山の木を割っても疲れないではないか!! 子どもの時も薪割りはやったけれど、足をこう開いてとか、腰をおとしてとか、腕に力を入れてとかの教えばかりで、極意(?!)の様なものは無かったなあと気が付いた。振り向けば声の主はニオさんで、また凄い事を言った…「木のあるポイントを打てば木はひとりでに割れるんだよ」。

あワワのワッ!! ワタシは少林寺拳法の道場に入門しているのではないのです。オンタリオ州のジョージアン・ベイとヒューロン湖の境にある、マニツーリン・アイランドにキャンプに来ているのですヨ。それに仕事も抱えているのだった。6月17日(金)トバモリー発のフェリーの中で原稿を受け取った。

“ウォーラス”という雑誌の1頁イラスト。この雑誌は創刊当時から若手の今風のイラストレーションを多く使っていて、僕のスタイルのリアルな描き込みは無理かも…と、興味はあったけれど遠くに眺めていた雑誌なのだった。それが今回、僕の水彩スケッチのスタイルで仕事が入ったのだ。そんな訳で、先の薪割りをしていた時も、どんなアイデアでやろうか、頭の片隅で考えていたのだった。5日目の22日(水)えんぴつ線でのアイデアスケッチを3点提出。23日(木)アイデアの1点にOKが出る。6日後の29日(水)締め切り厳守でカラーイラストを納めた(9月号掲載?)。

いつもなら青のアクリル絵の具で塗り込める空も、今回は水彩で最小限度に押さえた。スケッチ描写に近づくため、筋力を使わないで重力にまかせた。ニオさんの言葉が役立った。…ところで、自分探しをしたパンダさん、グースのお父さんを前よりもっともっと好きになれて良かったネ。