賃貸・雇用のトラブルに巻き込まれないために


トロント滞在中の日本人ワーキングホリデーメーカーや留学生からジャパニーズ・ソーシャル・サービス(JSS)に寄せられる相談で、最も多いカテゴリーのひとつに「賃貸」と「雇用」に関するトラブルがあります。そこで、それらトラブルに巻き込まれる可能性を減らすためのアドバイスをご紹介します。
賃貸に関するトラブル
賃貸に関するトラブルに巻き込まれないために最も有効で確実な手段は、テナント(借家人)としての法的な権利を知ること です。トロントに来て間もない人やこれから来る予定になっている人は、「英語はあまりわからないし、法律とか権利とかそんな難しそうなこと言われても…」と思うかもしれませんが、実際はとても簡単です。
FMTA(Federation of Metro Tenants Associations)
FMTAとは、テナント(Tenant)の権利の擁護を目的とする機関です。オンタリオ州が規定する『住宅賃貸法(The Residential Tenancies Act、略称RTA)』に基づくテナントの権利や義務を知るために、FMTAのウェブサイトにアクセスすることをお勧めします。テナントとして知っておきたい情報がわかりやすくまとめられています。

さらにFMTAは無料の電話サービス(テナント・ホットライン)を提供しており、実際に大家(Landlord)との間にトラブルが生じた場合にはRTAに準じた、より実質的な解決のためのアドバイスしてくれます。英語で状況を説明するのが難しいという人は、I need a Japanese-English Interpreter.と伝えれば、日本語通訳をつけてもらえます。

電話相談をすると、テナント・ホットラインのスタッフが、当事者(大家とテナント)間で問題を解決するためのアドバイスをしてくれます。それでも解決できない場合には、『The Landlord and Tenant Board、略称LTB』という大家とテナントの間の、賃貸にかかるトラブルを解決する裁判所のような機関に申し立てをすることができます。申し立てをすると、まずLTB付きの仲裁人(Mediator)が大家とテナントに和解を促します。それでも和解が成立しない場合、最終的にこの機関が審問会(Hearing)を開き、RTAに基づいた裁定が下されることになります。LTBへの申し立ての方法は、テナント・ホットラインのカウンセラーおよびLTBのスタッフがアドバイスをしてくれます。申し立てには、その問題の種類によって$45~50の料金が必要なものと、無料のものがあります。

FMTAウェブサイト
www.torontotenants.org

※トップページ上部「FIND OUR RESOURCES IN」で Japaneseを選択すると、「Tenant Survival Manual - Japanese」(賃貸人必須マニュアル)と「Guide to Tenant Rights - Japanese」(賃借人の権利ガイド)の項目があり、そこから日本語のPDFファイルがダウンロードできます。

賃貸人必須マニュアル
www.torontotenants.org/resources/tenant-survival-manual/japanese

賃借人の権利ガイド
www.torontotenants.org/resources/guide-tenant-rights/japanese

電話相談サービス
テナント・ホットライン(Tenant Hotline)
tel. 416-921-9494
注意! RTA(住宅賃貸法)が適用されないケース
大家との間に問題が起きた時、テナントの強い味方になってくれるRTAですが、テナントが大家と、キッチンかバスルーム(トイレ・風呂場・シャワー)、またはその両方を共有(シェア)している場合には適用されず、法律的な後ろ盾のない完全な個人間契約とみなされます。

ワーキングホリデーメーカーや語学留学生の多くはシェアハウス、または間借りや下宿というスタイルで居住していると思いますが、こういう場合には、大家とキッチンやバスルームをシェアするケースがかなりあるようです。RTAが適用される賃貸契約かどうかは大家が一緒の建物の中に住んでいるか否かではなく、キッチン、もしくはバスルームをシェアしているか否かによります。以下に例を見てみましょう。

例)ベースメントのついた地上2階建ての一軒家があります。
●テナントAさんは、キッチン・トイレ・シャワーがついているベースメントを借りています。
●テナントBさんは、大家さんとキッチン・バスルームをシェアする形で1階にある1室を借りています。
●2階には2部屋があり、テナントCさんとテナントDさんが1室ずつ借りています。2階にはトイレがあり、CさんとDさんしか使用しません。でも、キッチンはないので1階に下りて行って料理などをしています。

このケースだと、テナントAさんと大家さんの間の賃貸契約だけにRTAが適用されます。つまり、テナントAさんのみがこの法律に基づく借家人としての権利と義務を有することになります。

大家とキッチンやバスルームをシェアしているとRTAが適用されないので、大家との間にトラブルが起こっても、テナントはテナント・ホットラインなどのサービスの使用やLTBへの申し立てはできません。そのため、どうしてもトラブルを解決したい場合には『Small Claims Court』という、日本でいう簡易裁判所のような機関に申し立てをするしかなくなります。このSmall Claims CourtはLTBと違い、賃貸問題だけを扱う機関ではないので、申し立てをするための書類の準備もより大変ですし、何より膨大な数のケースを扱う機関なので申し立てをしてから審理が始まるまでに何か月と待たされるのが普通です。ワーキングホリデーメーカーや留学生などの短期滞在者は申し立てをしても、日本に帰国するまでに審理プロセスが始まらないということも多々、出てきます。そのためRTAが適用されない賃貸住居でトラブルにあっても、泣き寝入りせざるを得ないケースが多いのです。

もちろん、大家さんとキッチンやバスルームをシェアするためRTAが適用されない賃貸物件でも、大家さんがとてもいい人で何の問題も無く快適に暮らせるケースも多くあります。しかしながら、いざ問題が起こったときにRTAの後ろ盾がないことで、思わぬ損害をこうむる可能性があることは心に留めておいて欲しいと思います。さらに言うと、RTAが適用されないのをいいことに、「おとなしくて、文句を言わず、ある程度お金を持っている日本からの短期滞在者」と思い、あの手この手で利用しようとする悪徳大家も少なくないようなので、ご注意下さい。

トロントで賃貸をする時の留意点
★ 払ってしまったものを取り返すのは、とっても困難! 払わなくていいものは絶対払わないようにしましょう! (例)セキュリティーデポジット・高額なキーデポジット・普通の生活によって生じるダメージ(Natural Wear and Tear)の弁償代など。

★ 払ったものに関しては必ずサインと日付の入ったレシートをもらいましょう! 大家がサインしてくれればいいだけの状態にした領収書を自分で用意しておいて、サインしてくれたらお金を払うという形で支払いができればリスクは下げられますよね。

★ 賃貸契約を交わす際に、少なくとも大家のフルネームと住所は入手しておくこと運転免許証などでチェックさせてもらいましょう! 万が一、法的なアクションを起こす必要がある場合に必要です。
雇用に関するトラブル
雇用に関しても、賃貸と同様に法律に基づいた労働者(Worker/Employee)としての権利を知っておくことがトラブルに巻き込まれないための一番の予防策です。
ESA(Employment Standards Act)
オンタリオ州において、労働者(Worker/Employee)の権利や義務に関する法律で一番主要なものは『Employment Standards Act、略称ESA』で、日本の労働基準法のような法律です。職探しを始めるときには、オンタリオ州労働省(Ontario Ministry of Labour)のウェブサイトで、「Guide to the ESA」の項目に目を通すことをお勧めします。雇用に関して質問があるとき、またはトラブルが起きたときには、オンタリオ州労働省のESA相談窓口に連絡するとスタッフがESAに照らし合わせたアドバイスをしてくれます(英語のみ)。また、ESAに違反している雇用者に対する申し立ての仕方も詳しく教えてくれます。

オンタリオ州労働省(Ontario Ministry of Labour)ウェブサイト
www.labour.gov.on.ca/english/es

※サイト画面の中央右側、「Key Resources」の欄に「Guide to the ESA」の項目があります。
www.labour.gov.on.ca/english/es/pubs/guide/index.php

オンタリオ州労働省ESA相談窓口
tel. 416-326-7160
オンタリオ州のESA(労働基準法)における規定
ESAで規定されるオンタリオ州の最低賃金について
一般の労働者(事務仕事に就いている人など)と、酒類を提供する仕事に就いている人では最低賃金が異なります。
●一般 $11.00/1時間
●リカーサーバー(酒類給仕者) $9.55/1時間
(2015年7月1日現在)
※2015年10月1日より一般の時給は$11.25、リカーサーバーの時給は$9.80に引き上げられる予定

※その他のカテゴリーはサイト参照:
www.labour.gov.on.ca/english/es/pubs/guide/minwage.php

無給トレーニングについて
雇用者が雇用している従業員に無給でトレーニングを課すことは違法です。しかしながら、雇用する前の従業員候補者に無給でトレーニングを課すことに関してはESAは関与しません。トレーニングに入る前に、雇用者に「トレーニングは有給なのかどうか」、「自分はすでに雇用されているのか否か」を確認しておきましょう。

チップ(Tip)について
ESAはレストラン等で発生するチップに関して一切規定していません。つまり、チップの分配方法は各ビジネスオーナー次第であると言えます。極端な話、オーナーがチップを独り占めしたとしても違法ではないわけです。チップが発生する仕事に就く際には、その店でチップがどのように扱われているかをきちんと確認しましょう。

給与明細(Wage Statement/Pay Stub)と
給料証明(T4スリップ=Statement of Remuneration Paid)について

雇用者は給与日かその前までに、①その給与にかかる勤務期間 ②時給(もし時給制であれば)③控除前の給与額 ④各控除の種類と金額 ⑤控除後の給与が記載された給与明細 の5点が記された明細を、給与の小切手とは別に発行する義務があります。「いくら頼んでもオーナーが給与明細をくれないんですけど…」という相談がJSSにはたくさん寄せられますが、そのような場合には、雇用主にそれが違法であることを伝えましょう。それでも給与明細がもらえない場合には、オンタリオ州労働省に申し立てするしかないようです。

また、確定申告(Income Tax Return)の際に必要なT4スリップを発行しない雇用者もいるようですが、これも違法です。雇用者は2月の末日までにその前年度のT4スリップを各従業員に発行する義務があります。 ワーキングホリデー就労許可証など、就労可能なビザがあるにも関わらず最低賃金以下で働いている人や、給与明細またはT4スリップがもらえない人の多くは、正式な形で雇用されておらず、知らぬ間に「アンダー・ザ・テーブル(Under the Table = 税金未納の違法労働の状態)」で働かされているケースがほとんどのようですので、気をつけましょう。

健康で楽しいトロント生活を送る上で、住環境や労働環境が安全かつ健全なものであることはきわめて重要です。このコラムが皆様のお役に立てば幸いです。ご相談がある場合には、JSSまでお問い合せ下さい。

【ジャパニーズ・ソーシャル・サービス(JSS)】
www.jss.ca
Tel:416-385-9200
カウンセラー:公家孝典
※上記の記事は、2014年4月30日現在の情報をもとに書かれたものです。