サンドウィッチのなかみ (2012年10月5日記事)

Vol.35 演説大国アメリカ

これほどテレビにクギ付けになったことは無い。世界中、何処へ行っても恐らくこんな凄い番組は無いだろう。夏も終盤、私はアメリカの共和党(Republican)と民主党(Democrat)の全国大会の実況放送を夜な夜な観た。アメリカの政治を研究しているわけでもない私が何故この報道にクギ付けになったか? それは2万人の収容を誇る会場で大演説が熱狂的に繰り広げられていたからだ。日本ではあり得ない光景が茶の間に飛び込む。

老若男女の熱気あふれる顔また顔。フロリダ州タンパの共和党全国大会は白人の顔が目立つ。ノースカロライナ州シャーロットの民主党全国大会は、カナダなら何処ででも見られそうな多民族人種で埋まっていた。職業柄、レンズが狙う人々の顔が気になる。ここで私はバラク・オバマ大統領や野党のミット・ロムニー候補の政策を比較するつもりは全く無い。ただ両陣営の印象・価値観の違いが興味をそそる。

簡単に言うと、まずタンパ。共和党予備選でロムニー氏に負けたサントーラム上院議員の意外な演説。自分が大統領候補になったときのために用意していたものをそのまま使ったかのようで焦点がずれる。彼がロムニー氏の名前を出したのは最後の数分間。(なにこれ?)と私の顎が出る。ブッシュ政権下で国務長官を務めたコンドリーザ・ライス氏が党大会では一番説得力があったものの、強いアメリカを主張するあまり、また戦争に引き込まれそうで物騒。(地球はアメリカを中心に動いていなけりゃいけないの?)という疑問が続く。ブッシュ臭い。彼女はロムニー氏が政権を取ったとしても官職にはつかないとインタビューで語っていたから、安心していいのか。アン・ロムニー氏は、知られざる夫について多くを語った点ではロムニー氏を一段格上げした。大会期間中、着用していた服のデザインも色も保守的で、ミシェル・オバマ氏の開放的なドレスと対照的だった。ロムニー氏自身の演説はとりわけインパクトがあったとは思わなかったが、成功した実業家としての自賛と彼のモットー【ファミリー】への執拗なまでの熱弁が鼻につく。(これって、結婚して子どもを作れってこと? ファミリーが無い人達のことはどうなの?)【宗教の自由】を口したのは一度だけ。軽視の感あり。外交はどうするのだろう。頭の切れる童顔のポール・ライアン副大統領候補。これも大統領候補みたいな演説だった。ロムニー氏を立てられるのか? 非常時の大統領(ありうる事)役としては想像外。

全体的に一番楽しかったのはシャーロットでのクリントン元大統領の演説。「考えてみたまえ。これ、算数だよ、算数」と共和党の政策誤算を指摘する。オバマ氏の教授口調とも違う。どんどん話に引き込まれていく画面の顔と顔。まさにエンターテインメント。「オバマ氏は外側はクールだけど、中身は烈火のごとくアメリカへの思いに燃えている」と大統領を賞賛。過去にオバマ氏とヒラリー・クリントン氏の予備選中、オバマ氏を批判した彼も妻が敗戦すると彼を後押しした。オバマ政権はその強敵ヒラリーを国務長官に起用。うまい計算だ。米軍家族に対するミシェル・オバマ氏のイニシアチブは新鮮であり聞くものをうなずかせる。バイデン副大統領も【オバマ氏と意見が合わないこともあるが、大統領の決断力には絶大なる信頼を持つ】とチームワークのよさを御披露。さて共和党の政権奪還成るか?

余談だが、演説の”超プロ”連によるアメリカの二政党全国大会は、一般市民向けであって分かりやすく、かつ熱狂的で面白く、英語を学ぶ若者達にとっては大変よい教材だと思う。それにしても日本の政治家が選挙戦で堂々と無駄なく理路整然と熱意を込めて語ることができる時代が来るのだろうか。路上の「お願いします。ペコッ」以外に。


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