サンドウィッチのなかみ (2013年8月16日記事)

Vol.45 突如の変化

母の顔から笑顔が消えた。眉間にシワをよせ、いつも悲しそうな顔をしている。2か月前とはまるで違う。「どうしていいかわからない。やだなあ。やだなあ」を繰り 返す母。私や兄、孫がそばにいてもヤダナ病は続く。去年の夏元気で90歳を迎えた母がいま老人性の鬱になるのだろうか。入院させれば恐らく薬漬けにされ、そのまま廃人になるのは確実。かといって現状維持では私は買い出しも料理も出来ず、睡眠もとれない。家族の姿が見えないと救急車を呼んでしまう。どうすればいいのか。

老人ホームという手段は考えたが焦って決めたくはない。老人大国日本には有料の老人ホームがボコボコと建ち家から徒歩3分以内に5軒もある。立地条件や、運営会社によって入居金も0円〜超デラックスの1億円と全く違えば月額経費も最低18万からとまちまちだ。高ければいいというものでもない。母をお向かいの有料ホームで2週間ショートステイさせた。私が作戦を練る間の臨時処置だ。一日の料金はホテル並みにもかかわらず入浴させてくれたのに紙パンツ以外下着がとりかえられていなかったし、髪の毛が生がわきのままで母は鼻水をたらしていた。心配りが足りない。入居金は一律5年償却とか、90歳以上4年というのもある。

母のように短期入所させてもらえるのは有料の入居者が決まらないで空き部屋があるときだけ。それと比較して一般に特養といわれる特別養護老人ホームは福祉団体に運営されている。短期入所用のベッド数やフロアーが確保されていて毎月10日に2か月後の入所申し込みが始まる。期間は1泊から約4週間でそれ以上はいられない。とはいうものの、29日間介護保険を適用し、30日目は実費を払い、継続してまた新規に29日間滞在することができる。部屋数は6〜18室程で多くはない。ケアマネを通して予約を入れる。
ちなみに特養に完全に入居するのに300人待ちは普通。それに要介護度が高くないとチャンスに恵まれにくい。母の場合は要介護1なので待っていても入居は不可能。というわけで母の急変に予約こそしていなかったが、空いているところで3泊4日や9泊10日と飛び飛びのショートで特養の部屋を押さえた。しかし、実際に見学してみると個室にトイレが無かったり、転倒防止用のセンサーがなかったり、リハビリの有無の差、と千差万別。10軒ほど特養施設を訪問してから最終的に2軒にしぼった。ここで数か月短期入所を繰り返させることにした。

トイレ、洗面つきの個室で、紙パンツ、洗濯込み。介護保険の自己負担分を入れて要介護1の母は一日5000円余り。各種活動もある。もう一つ。医療保険が利く病院直 営の老人施設がある。医療を受けながら余生を文化的活動を通して楽しんでもらうというのが趣旨。有料や特養の老人ホームとは違い、何年お世話になっても本人の住所が自宅のままという税金面での特典がある。来年度からは税法が変わり他のホーム入居も考慮されると聞いている。受け入れ態勢は病院の専門によって異なり受け入れられない病気もある。評判のいいところは数か月待ち。それでも特養の入居待ちよりは入りやすい。金銭的には入居金がゼロなぶんだけ月額が高い。しかしここには母の場合、看護師つきの一般の有料老人ホームとは違った安心感がある。

今日は母が近所の短期入所を終えて帰宅する。土日を家で過し、来週またショートがはじまる。若い介護士が沢山いる施設で母は少々落ち着きをとりもどした。数か月特養のショートを利用し、来年入居を目標に母の落ち着き先を見つけたい。家でずっと面倒を看てやりたいと思ったが、母の急激な変化に急遽対策を変更せざるをえない。母も施設を望むようになった。親にあった施設を探すのが最後の親孝行になるのだろうか。


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