サンドウィッチのなかみ (2013年11月1日記事)

Vol.48 腹をくくる  

そのうち、と思っていたウチがきた。一生のウチ何度も決断をする場に立たされるが、今日までなんとか時にかなった決断をしてきたとは思うのだが、トロントのウチ(家)に関しては忙しさにかまけてかなり手抜きをしてしまった。
そして親が高齢になり日本とカナダを往復する生活に入り、気がつけば旦那もそう若くない。リノベーションとまでいかなくても何でも器用に 直していた彼は足腰の痛みを訴えるようになり、インストラクションばかりで行動にならない。そこでフトコロと相談の上、一大決心をした。

浴室、デッキ、台所の天井、エントランス、ドライブウェー… とリストは延々と続く。昔私が自分でデザインして作った道具小屋が庭の隅に若さの象徴のようにまだ立っているが、今はペンキのブラシを持つのさえ億劫で当時のスタミナはない。いい加減な業者が多い昨今、頭痛の種になるのはコントラクター。まず始めに頼んだペイヴィングカンパニーは古いアスファルトをはがして砂利を敷き詰め、翌週に新しいアスファルトを敷きに来るといって帰っていった。よく見ればガレージ床から2インチ下のところまで砂利がきている。つまりこの会社のアスファルトは厚さ2インチということだ。アスファルトは3〜4インチないと破損しやすいと後で知り、ゴタゴタを避けるためその業者とはさよならした。ところで砂利というのは靴底のジャリジャリ感が心地よく、歩くと気分が良い。この嬉しい新発見にドライブウェーは後回しにすることにした。

さて、家中の修理・改修が出来る《何でも屋》というのはいないものか。
デッキ屋に水道管の修理は頼めないし、分野ごとにコントラクターが出入りするのも面倒だ。デッキだけでも業者間で見積もりにかなりの差があるし、高ければいい仕事をしてくれるとは限らない。選択に手間どる。数日後、ラッキーなことに、旦那の友人が実績のある職人を紹介してくれた。早速状況写真をメールしたところ、どれもOKの返事、それも格安の時間給で。北のほうから往復4時間かけて出張してくれるので我が家に泊り込み、昼食・夕食付きということで話が決まった。
32歳のその若者、朝は7時に起床しTim Hortons で朝食をすませ8時に仕事を開始する。一番困ったのは夕食に出すメニュー。私達は魚と野菜中心の食生活をしているが若者は魚は嫌いときた。肉やこってりしたものが好物で野菜は人参、ねぎと芋が主。普段から料理が得意でない私だが、〔いい仕事をしてくれよ〕と嘆願するような気持ちで台所に立ち、毎日こってりしたものを作る。20年以上使っていたトイレがエコトイレに変わり、壁にはUSBつきのプラグも入った。浴室の水漏れがとまり、台所の天井も張り替えられ、綺麗にペンキがぬられた。30メートルも家に寄りかかるようにして成長してしまったもみの木が根っこごと消え、エントランスが広くなった。古ぼけたデッキがはがされ、真新しい木材が張られ、以前より広く感じるアウト・ドアのスペースが出来た。あまり木で、ステップやテーブルも作ってくれた。こんなふうに着々と 新装が進んでいくと、そうだ、ここも、あそこも直してもらおう、と欲がでてきてしまう。

この若いパパ、週末は家族のもとに帰っていったが、週日の2週間を我々と過ごし、初めての出稼ぎをした。そして改修ほぼ完了というときに旦那がまた一つ注文をだした。結局次週も3日間泊まりがけで来てくれる。腹をくくって始めたこのプロジェクト、ネガティブなインパクトは私のコレステロール。若者に合わせた食生活のせいか、医者がビックリするほど基準値をはるかに超えてしまった。整備された家に住む楽しみに胸をはずませると同時にコレステロールの挑戦を受けてあわてる私。


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