サンドウィッチのなかみ (2014年1月10日記事)

Vol.50 変えられて行く、変えて行く

2時間ほど寝ただろうか。水一滴も飲まず車でトロント空港へ。朝食はそこでとればいい。いつものTim Hortonsやハンバーガー屋などが目にとまる。でも朝食ぐらいは美味しいものを食べたい。ことに今回は東京で新年を迎えにいく旅だから。さて何があるのか。少し時間があったため、国際線出発ゲートをぶらついてみた。

今まで〔座って居眠りして待つ〕ためだけにあった椅子の列がバーのカウンターのような長細いテーブルに変わっていた。プラグがあちこちに設置されていてコンピューター、スマホ、iPad、デジカメなどの機器を作動したり充電したりしている光景が見える。便利になったものだ。その両側はオープンレストランの白いテーブルが眩しく並ぶ。店の棚に目をやれば前日からそこにあったのかもしれないサンドイッチ類。似たようなレストランが3、4軒あるが、どれも同じディスプレー。こんなものしかないのかトロントよ。搭乗する前から疲れ切っている旅人を慰めてくれるようなブレックファーストってないのオ? ついに我慢しきれなくなり想いを声にした。「あったかいメニューってないんですか?」「ありますよ。どうぞこちらへ」。案内されたテーブルにすわると目の前にiPadが。未来都市か、ここは。「メニューはこちらからお選びください。」Pearson空港がアップブグレードされている のは知っていたがここまでやるとは思っても見なかった。各席に1台ずつあるのだ。棚には味気ないサンドイッチが並んでいてもテーブルにつけば美味しそうなメニューがiPadから注文できるというわけだ。それが座って初めてわかる。

iPad はメニューを選ぶためだけでなく、その日に出発する飛行機の情報が時間やゲートナンバーとともにパッと出てくる。搭乗券をゴソゴソ出さなくてすむ。イタリアンの温かい朝食を食べながらThe Globe and Mail を読む。字が小さすぎて読みづらければ指2本でストレッチすれば老眼鏡はいらない。トロントのロブ・フォード市長は滑稽にもまだ戦っているようだ。気になるYouTubeも見て残りのコーヒーを飲み干す私。始めの苛立ちも消え、馬鹿高い朝食代を払わされた後も一応、気分爽快という感じに”させられ“、ゲートへ向かう。
だが待てよ。スマホも iPadも触ったことのない人にとってはアン・フレンドリーだ。うちの旦那なら頭に来てさっさとTimへ直行するだろう。電子機器用のカウンターは受けるとしても、レストランまでこうなると、一般市民が利用する空港が差別の場になりはしないだろうか。私の席の後ろにもう1人客がいたが、なぜか全体的にオープンレストランは閑散としている。無数のiPadだけが置物のように朝日を浴びて光っていた。

搭乗完了。エアカナダ001便の機内に落ち着いた女性の声が流れはじめる。「This is Captain…」機長の声だ。私は数えきれないほどトロント・成 田間を飛んでいるが女性の機長にお世話になるのは初めて。嬉しい気持ちを押さえきれない。成田に到着後、機長が出てきたところですかさず歩み寄るズーズーしい私。聞けば今回は副操縦士を入れてすべて女性4人の構成で飛行したという。さらにエア・カナダには全部で100人以上の女性パイロットがいると聞かされ驚く。国際線には何人いるか知らないが、この初めての経験に私はiPadなどでは及びもつかないほど興奮してしまった。こうやって女性がこれまで男性の領域だった世界に進出している。

セクハラもあったであろうに、彼女達の不屈の向学心とプロフェッショナリズムに胸が熱くなる。数百人の人命を預かりボーイングの巨体に乗せて輸送する彼らが女性の可能性をさらに広げて行く。2014年はいい年になりそうだ。よし決めた。わたしの”来世“は国際線のパイロット!


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