サンドウィッチのなかみ (2016年7月15日記事)

Vol.80 子に教えておきたいこと

ここ数年は日本にいる母の介護が私の時間の大半を占めていた。今は病院のお世話になっているが、いざという時にカナダを飛び出せるように、家の中の整理整頓など全く気乗りしないことに頭を巡らせている。しかし一つ、とても大事なことを忘れていた。それは娘とお金の話をしておくこと。

娘が独立してから10年以上の歳月が経つ。私が親とお金の話をしたことがなかったように、娘と私もお金の話は殆どしていない。昭和期に育った私は大学卒業後就職してコツコツ銀行に貯金をしていた。市場が変動することなど気にもせず。それが経済的安定に繋がると思っていたし、当時は銀行の利息もよかったのだ。しかし今老年期に入り、カナダでやっておいてよかったと思うことがある。30代で覚えた投資だ。カナダの投資会社でプログラマーをしていた時期、会社が費用を持つと聞いてCanadian Securities Course(CSC)という証券の試験を受けたのがキッカケだ。証券といえば国債・社債・株券・投資信託等々がある。個人で投資するのに資格は要らない。「投資」というと大金をかけると思われがちだが、私のは少額投資。冒険をして損をしたのもいい勉強になっている。兎に角何があっても諦めずに何十年もずっと続けてきた成果はあった、というより、私は優良証券を購入し、年に数回見直す程度の“ほったらかし”派。

昔の日本では「投資」と言うと、「株で大儲けする」とか「大損をする」といった、金欲に狂った人が週刊誌沙汰になるイメージ。だから「投資」という言葉は我が家で茶の間の話題になったことはない。だが今やカナダでも貯金の利息は1%にほど遠い。日本では日銀のマイナス金利がスタートして、市中銀行でもお金を預けると高くつく変な時代になった。銀行預金しかお金の置き場がないと考えている若者には殺生な話だ。一番安心していた銀行でお金が育たないなんて。

モントリオールの娘に久々に会ってきた。美味なフレンチを食しながら忘れていたお金の話に入る。学校でも教えないのがお金のマネジメントだ。彼女は自営業なので将来のため勤勉に貯金をしている。キッカケがないと投資には誰も手をださない。もちろん娘も。まずは投資用の口座を設けることからスタート。数日後「月曜の夜はどう?」と準備完了の連絡がはいり、トロントとモントリオールをつなぐ親娘の投資101が開始した。私の先は知れているが、娘には何十年という未来がある。「こんなのがあるんだけど」と自分で調べた証券のリンクをよこした。関心を持つ年代になっていたのだ。ひょっとすると私が彼女にお金を工面してもらう日がくるかもしれない、などと夢物語を密かに展開させてみたり…。



「サンドウィッチのなかみ」一覧へ

<コラム一覧へ