サンドウィッチのなかみ (2016年8月19日記事)

Vol.82 “頭”が高い(一話)

実家ではいつもの通り郵便物の山が私を待っていた。貴重な物だけを取り出し、あとはリサイクル袋へ。母と代理人の私のキャッシュカード2枚もそろそろ期限が切れるので新しいのが届いているだろうと思っていた。私が不在なら兄が受け取っておいてくれる。今回は銀行の手抜きか? それらしき物は来ていない。東京に着いて2日目にカード期限は切れた。

通知が来ていない、と銀行の窓口で告げると、銀行の記録では2回カードを宅配に回したという。もちろん郵便局がその宅配業務を委託されているわけだが、兄も私の不在中に対応を要する不在通知はなかったという。嘘をついて得する家族はいない。窓口嬢は、「連絡がなかったためカードは既に抹消されました」とあっけない。店長代理の男が対応に替わった。「郵便局の責任なのでうちでは対処できないし、抹消されているので再発行はできない」という間の抜けた返事。郵便局に委託している銀行の管理不行き届きではないか、とせまれば郵便局に連絡して記録を調べるとのこと。郵便局が自分たちの非を認めるワケが無い。気休めに言った言葉だ。そのあと、彼が真顔で言った。「再発行する為には本人確認が必要です」「!?」母はもう字も書けないし、いま病院から連れ出したら命取りになるのだ。「でなければ成年後見人をたててください」と銀行のルールでしか物事が見えない。後見人申請で何か月も待っているうちに病院用の口座が空になって母は病院から追い出されるか、のたれ死に? 銀行にとって、そんなことはどうでもいいのだ。さらに「印鑑と通帳だけでも取引はできます」と言ってのける。3時で閉店の銀行にいちいち駆け込め、というのか、手数料払って。

「銀行はお金を預ける人がいて初めてビジネスが成り立つもの。出来ない、ではなく、銀行側で何が出来るかを考えておいてください」と言い残して出た。彼らのズの高さは計り知れない。金利が下がっているなかで、こんな低級なサービスをしているなんて、大手のこの銀行のイメージがガタ落ちに落ちた。

数日後、同店の相談係という人から電話があり、彼が青梅の母の病院まで来てくれるという。幸い母はまだ基本的なことは理解できる。その人は母の一言でその場で直ぐ書類を用意した。2週間後、“期限なし”のカードが届いた。この時母が全く反応できない状況だったら、と考えるとゾッとする。

小さい人間は大きな組織のなかで仕事をしていると、組織のルールを旗印に権力者として顧客を見下ろす。似たような経験の読者もいるかもしれない。諦めずに最後まで粘ることだ。団塊族は負けない。



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