和食のつぼ

 (2013年6月21日記事)

「大切な事」

前回の味噌編まで、これまで色々な食材を使って和食のプロの技を紹介してきましたが、今回が最終回となります。さっそく大介さんに、最終回に当たってのお話を聞きましょう。
「1年以上続いたこのコーナーもいよいよ最終回ですね。僕の仕事は『料理を作る』ことなのですが、僕にとっては楽しい仕事なんですよね。今回は、仕事を通して料理について思うことのお話をしましょうか?

和食のつぼ 僕が以前働いていたお店は、経験者の集まりでした。つまり、飲食店で働く、調理場で働くという事がどういう事なのかスタッフはわかっていたんですよね。でも、今のお店のスタッフはワーキングホリデーでトロントに来ている若いスタッフが多く、経験者もいますが、飲食店で働くのが初めての子達もいます。そんな中で、経験のあるスタッフが新しく入ってきたスタッフを指導しながら、お互いが成長していく姿を見ているのは本当に嬉しい事です。
この間、もうすぐ店を辞めるスタッフがいて、お疲れさま、ということで一杯飲んだんです。その帰りがけに”私はあと1週間で終わりなのですが、頑張りますのでよろしくお願いします“なんて言ってくるんですよね。
このスタッフが十分頑張ってるのは知ってるんですよ、本人には言わないけどねぇ。なので、より多くの事を経験し学んで、それを生かして欲しいと仕事をお願いするわけで…。嬉しいですね。もちろん、なかなか若い子達にはこちらの意図が通じず残念な時もあります。時代背景もずいぶん変わってきたからといえばそれまでですが、それで済ませてしまうのもどうかと思うところがあるんです。
料理人の世界にいると、親方や先輩から色々学びます。そして、その親方や先輩も先代から学んできたのです。親方や先輩から学ぶこと。それは技術だけじゃなく、以前にも書かせて頂いたと思いますが、食べてくれる相手を思い、また使う食材への愛情なんですね。それが、昔も今も変わらず大切な事なのです」
辞めていくスタッフからも、店への気持ち、強いては自分の仕事、お客様を思う気持ちを、大介さんは感じたんでしょうね。
「きっと、同じ気持ちで働いてくれているだろう他のスタッフにも感謝しています。ありがとう、と言いたいですね。そして、最後になりましたが、『和食のつぼ』を今まで読んで頂きありがとうございました」

どんな料理でも”技“は幾らでも習い、覚えることができます。でも、そこに一番大切なものが欠けていたら、きっとどんな料理も物足りなく感じるでしょう。食べてくれる人を思い、食材を大切に扱ってこそ、その美味しさを十分に引き出した料理ができるんですね。