笑いあり、少しの涙あり 時空を超えた裸の付き合い
阿部 寛
俳優(2012年9月7日記事)

古代ローマ人と現代日本人が繰り広げるお風呂談義

いよいよ始まるトロント国際映画祭! 今年は邦画『テルマエ・ロマエ』がなんと、ロイ・トムソンホールでのガラ上映に決定している。ガラ上映といえば、レッドカーペット上に出演俳優陣や監督が一堂に会し、煌びやかな映画祭の目玉イベント。カメラのフラッシュが眩いほどに焚かれるのを見るだけで否応無しに高まる興奮度…。『テルマエ・ロマエ』からは主演のお2人、阿部寛さんと上戸彩さんが舞台に登場予定! そこで今回はその興奮を先取りして、ルシウス役で出演された俳優の阿部寛さんにお話を伺った。

 『テルマエ・ロマエ』は古代ローマの浴場建築技師ルシウスが現代日本にタイムスリップし、そこで知る最新技術や人々との出会いを面白おかしく、そして温かく描いた作品。既に日本では公開されており、大反響を呼んでいる。また、作品の半分の舞台となっているイタリアはローマでも上映。ローマっ子からの高評価を得て、国と人種の違いを超える秀作だということは既に証明済みだが、トロントでは、さらに様々なバックグラウンドを持つ観客が来場することになる。「日本では幸いにも、とても多くの方に観ていただくことができました。この映画のもう一つの舞台であるイタリアの方々にも観ていただく機会がこれまでにありましたが、今度はさらに多くの国の方(に足を運んでいただく)ということで、受け入れていただけるか、笑っていただけるか、今からとても楽しみです。笑うポイントが国によって違ったりするので、そういったところも含めてご覧になられる方々の反応を直に感じ取ることが出来るのをとても楽しみにしています。是非、みなさんの感想を直接聞いてみたいですね」

そう語る阿部さんにこれまでの上映でのフィードバックから、耳に届いたものを紹介してもらった。

「『声を出して笑った』『笑った後に最後は涙してしまった』など有難い感想をたくさんいただきましたが、『温泉に行きたくなった』というのはこの映画らしくてユニークだなと思いました。また、ローマ・プレミアで『本当に日本人なのか?』と聞かれたときは、ローマ人役をやれてうれしく思いました。確かに、ちょっと生真面目なルシウス役は、阿部さんの(日本人離れした?)外見だけでなく、誠実な人柄をそのまま表しているようなはまり役。「ローマ人役の5人(の俳優)で誰が一番濃いかを話し合っているうちに言い争いになることがよくありました(笑)」と、撮影は和気藹々だった感が伝わってくるが、やはり真剣勝負の厳しい現場、楽しいだけではない現実もあったという。「自分がローマ人に見えなかったらこの映画が失敗するという責任を感じていたので、どうやったら古代ローマ人に見えるかということばかり考えていました。(実際の現場では)肌に霧吹きで水を吹きかけられながらの撮影が多く、寒さに耐えながら演じました。また、ラテン語の先生がとても厳しい方で、何度やってもOKがでなくて大変でしたね」

阿部 寛

撮影は、日本とローマのチネチッタスタジオの両方で行なわれたという。

「ローマの大浴場のシーンは日本のセットで撮影したのですが、色々な国の方にエキストラで参加していただいたため、恥ずかしがる方や見せたがる方など入浴に対する感覚が多種多様で面白いなと思いました。また、(ローマでの撮影は)震災直後の撮影だったため、私たち日本人スタッフ・キャストのことを本当に心配していただきました。そんな私たちの力になってあげたいというムードがひしひしと感じられ、すごく撮影に協力してくれて、とても感謝しています」

そんな現場を仕切ったのは、テレビドラマの演出家としても活躍する武内英樹監督。

「明るくおおらかで、現場の雰囲気作りを大切にする、とても信頼のおける監督です」と阿部さんは評する。『電車男』(05年)、『のだめカンタービレ』(06年)を手掛けた敏腕監督だ。また、作品原作はマンガ大賞、第14回手塚治虫文化賞短編賞を受賞した人気作品。現在も『月刊 コミックビーム』に連載中、シリーズ累計500万部の売り上げを突破している。「(出演作に)原作があるときとないときで(演技の)スタンスを大きく変えることはありませんが、原作で面白いと思われるポイントだけは外さないように気を付けています」

 そんな阿部さんをルシウス役に…、と聞いたとき、原作者のヤマザキマリさんは適任だと思った、といわれている。

 ローマの騒がしい大浴場に違和感を覚え、ゆったりとリラックスできる場所であるべきだと考えるルシウス。阿部さん自身も「じっくり湯船につかるのが好きです。出たり入ったりを繰り返しながら1時間くらい入ることもあります」というから、何か繋がるものがあるのかも知れない。

最後に、「今回のような思いがけない役に出会えることが俳優をやっていて最高の喜びです」と語る阿部さんが、メッセージをくれた。

「スタッフ・キャスト一丸となって、とにかく面白いものをつくろう、一人でも多くの人に笑って元気になってもらおうとつくった作品です。あまり構えずに銭湯に出かける気持ちで観に来ていただけると嬉しいです。みなさんとお会いできるのを心待ちにしています」

日本の技術に衝撃を受けるルシウスの大真面目なリアクションに笑い、”平たい顔族“の日本人との心の交流に涙し、そしていい味出してる風呂屋の常連さんのお爺ちゃんたちと共に和む。『テルマエ・ロマエ』の初回上映は9月8日(土)。手ぬぐいやケロリンの黄色い湯桶、シャンプーハット無しで(持って行ってもいいけどね)銭湯気分をじっくり味わおう。そして、湯船から立ち上る湯気にように暖かな人と人との触れ合いをゆっくりと楽しんで欲しい。

 
 


Biography

あべ ひろし

1964年、横浜市生まれ。大学在学中に「集英社ノンノボーイフレンド大賞」で優勝。以降、モデルとして活躍。87年に映画『はいからさんが通る』で俳優デビュー。93年、つかこうへい作・演出の舞台『熱海殺人事件 モンテカルロ・イルージョン』で話題となる。94年、日本映画プロフェッショナル大賞・特別賞。08年、毎日映画コンクール男優主演賞、日本放送映画藝術大賞映画部門優秀主演男優賞。09年、ドラマアカデミー賞主演男優賞。今年に入ってからは橋田賞を受賞するなど、テレビドラマ、CM、映画、舞台など多方面で活躍中。

テルマエ・ロマエ

『テルマエ・ロマエ』上映スケジュール

9/8(土)13:30 Roy Thomson Hall(60 Simcoe St.)
9/9(日)12:30 Cineplex Yonge & Dundas 7(10 Dundas St. E.)
9/15(土)19:30 Cineplex Yonge & Dundas 7(10 Dundas St. E.)