沖縄の風をカナダへ
金城ブラザーズ
バンド(2012年12月21日記事)

カルガリーに住む日系カナディアンの兄弟がトロントでライブ。それも、沖縄の那覇まつりなどに参加したことがあるバンドだと聞き、カルガリーと沖縄を繋ぐのはどんな音楽? と期待に胸膨らませて会場に向かった。アネックスエリアのバー、少し重めのドアを開けると何とも心地よいグルーヴが耳をくすぐる。優しい響きなのに、そのリズムはタイト。思わず聞き入ってしまうサウンドだ。隣の席に座った客と「うん、このバンドいいね」と目配せする。するとブルースからどこか懐かしさを感じさせるサウンドへと曲は移行。ふんわりとしたこの曲調は、沖縄フレーバーが散りばめられているに違いない。

「父親が聞いていた琉球音楽の中で育ったからですね」

ギター&ボーカルのジョリーさんは、その音の秘密を教えてくれた。

「だから、日本の音楽、特に琉球音楽はとっても自然に僕達の中に入ってきました。家には三味線もあって、僕はあんまり弾かないけど、妹はかなり弾けますよ」

ジョリーさんは5人兄弟の次男。長男と一番下の紅一点となる長女は音楽では生計を立てていないが、それぞれが楽器をたしなむという。そんな金城ブラザーズ、今回一緒にトロントに来てくれたのはベース&ボーカルで四男のキャリーさん、そして、ゲストメンバーとして沖縄を中心に活躍するドラマーの池原克弥さんだ。

「彼らはどんなジャンルでもこなすんですよね。もちろん、琉球音楽も」

金城ブラザーズ

数年前、金城ブラザーズが来日した時に知り合ったという池原さん。

「波長があったんです。彼らと一緒に演奏することが自然に感じられた。”言葉“を超えて音楽が伝わってきて…、言葉なんて要らなかったですね」

ジョリーさんは相槌を打つ。

「克(池原さん)は英語が話せるけど、日本で一緒に演奏した人たちの中には全く英語を話さない人もいました。でも、一緒に演奏すれば分かり合える。言葉を使ってコミュニケーションをとるより、もっと深いところで繋がることができるんです」

そうして知り合ったミュージシャンには、日本でも指折りの名前が挙がる。DIAMANTESのアルベルト城間氏、THE BOOMの宮沢和史氏などもその内の1人だ。

「宮沢さんとは一緒に音楽を作ろうと話し合いました。金城ブラザーズがもっと日本で演奏できるようにということもあわせてね」

カナダ・カルガリーを拠点としている金城ブラザーズだが、現在のスケジュールに加えて日本での演奏を増やすとなると、とても忙しくなりますねと言うと、

「ミュージシャンとして、演奏旅行で忙しいことは非常に有難いこと」

と、キャリーさんが笑った。

「僕は、何を職業に選んでも結局、音楽を続けていたと思うんです。どうせ音楽から離れられないんだったらミュージシャンとして勝負しよう、と思った。毎日、自分が音楽に関わっていられるのは本当に幸せですね。幸せだ、と思うことって人生で一番大切なこと。自分の人生を自分の手で決められる、って嬉しいことです」

そんなキャリーさんに池原さんはこう応えた。

「僕は一度、音楽以外の仕事をしていた時期があるんです。建築系です。毎月ちゃんとお金は入ってきたけど、それでは満足できなかった」

ジョリーさんも同じように感じているという。

「どうしてもやりたいことがある時って、選択の余地はないよね。情熱の赴くままにやってみれば、たとえ失敗したとしても、残りの人生を後悔しながら生きることはなくなる。
自分の夢を追いかける人は誰でも、それなりの対価を払わなきゃいけないんです。その道のりはとても険しいものだしね。でも、時に得ることの出来る報酬は本当に大きいものだよ。ある意味、麻薬みたいでね。癖になってしまいそうなくらい大きなご褒美が待ってると思ったら、チャレンジせざるを得ないよね」

音楽への愛と自分達のルーツを大切に思う気持ち、そんな温かい思いが金城ブラザーズの音楽を作る。これからトロントでの活動も増やして行きたいという彼らに、近いうちにまた会いたい。

 
 


Biography

キンジョウ・ブラザース

カナダのカルガリーを拠点に活躍するバンド。日本やヨーロッパなどでツアーも行なう。バンドメンバーは固定ではないが金城家の兄弟が中心となる。今回のトロント公演でのメンバーはギター&ボーカルのジョリー(Jory)さん、ベース&ボーカルのキャリー(Kaley)さんに、沖縄在住のドラマー池原克弥(Kats)さんが加わった。金城ブラザーズはバンドとして活躍するほか、それぞれがソロ活動なども行なっている。www.kiaimusic.com