全力を尽くすという刺激
その日、そこでしか出来ないこと、その選択の組み合わせが映画作品を生む
北村龍平
映画監督(2012年12月7日記事)

全く人気がない郊外のレストラン・パブ。旅行者と思われるカップルが食事をしようとドアを開ける。中にいたのは、いかにもタチの悪そうな男女数人。仲間の制止も聞かず、彼らの1人がカップルの女性にちょっかいを出す…。このまま、ならず者達の餌食になってしまうのか !? そう思った矢先、物語は意外な方向に急展開。悲鳴とともに飛び散る血しぶきになんとも残酷なバイオレンス映画かと思いきや、バランス良く散りばめられた思わず吹き出してしまう場面、そしてなんとも個性的な台詞回しに、監督のウィットに富んだ性格が推し量られる。その監督は、『あずみ』や『ゴジラ/ファイナル・ウォーズ』で知られる北村龍平さん。現在、ハリウッドで活躍する唯一の日本人映画監督である北村監督にお話を伺った。

北村監督、お帰りなさい! ですね。前回、トロント国際映画祭に来てくださったのはいつでしたっけ?

「11年ぶりですよ!  前回は『911』が起こった年だったんです。『いつ帰れるのかな~』と思いながら、トロントに10日くらい居ました」

今回もそうですが、その時もミッドナイトマッドネスでの上映でしたね

北村龍平

「そうですね。『ヴァーサス』で…。ミッドナイトマッドネスのオーディエンスは変わらないですね。クレイジーですね、相変わらず」

監督の作品も相変わらずクレイジーな…

「(笑)。ラブストーリーなんですよ。だって、愛する女性の為だからって、あそこまで普通やらないですよね。あんなに人、殺さないですよ(笑)。(シナリオを読んだ時)僕の中では凄いラブストーリーに思えて…ねじくれた愛情で、そこが面白かったんですよね」

殺人鬼の主人公は、監督と何か通じるものはあるんですか?

「凄く通じるものがありますね。危ないかも知れないな…(笑)。
僕はもう少しタランティーノっぽい、コメディ寄りのアクション映画『LoveDeath』という作品も作ったんですが、これはタイトルそのまま、”愛のために死ね“という作品です。今回の『No One Lives』とは違った、ホラーでもサスペンスでもない映画だけど殺しまくる…。スキなんですよ、そういうのが。愛を貫く男っていうのがね」

今回の撮影はどのように進んだんですか?

「毎日、色々ありましたよ。とにかく、映画の撮影っていうのはどんな現場であっても、1日に何百件も問題が起こるんですよ。誰かが怪我をしただとか、予定してたものが届かない、だとかね。毎日が本当にサバイバルでしたね。 非常に限られた時間と予算の中で作らなければいけなかったですし、盛り沢山の内容なのでね…毎日、どんどん人を殺さなければいけないんで(笑)」

外国の映画作りと比べて日本の映画は撮影期間が短く、予算も低い、とおっしゃる日本の映画監督さんもいらっしゃいますが、北村監督のようにハリウッドで活躍されていても予算の心配はしなければいけないんですか?

「同じですよ。予算が増えたところで、結局、湯水のようにお金を使って出来るものでもないですし、増えたら増えたなりの、それ以上のことをやらなきゃいけない。だから、毎回チャレンジですよね。
でも、もう慣れてますから(笑)。何百億でもお金を使っていいよ、っていうのはなかなかない。それに、例え何十億あったところで、きついものはきついんだと思うんですよね。与えられた期間とお金、撮影のクルーをどう使って、掛かった値段以上、日数以上のものを作るか、っていうことにいつも集中しています」

映画監督としての長いキャリアの中で、気持ちや作風は変わりましたか?

「それは変わらないですね。ブレないですね、全く。やりたいことというのは明確に見えていて、そのために努力をしてきてここまで来ました。今だに自分のやってることには決して満足をしてないですし、反省点は一杯でてくる。
でも、そこがよくもあり辛いところでもあるんですけど、最終的に作品の責任はやっぱり監督が取るしかないんですよ。この役者がこうだったから、お金がなかったから、撮影の時に雨が降ったんだ、とかね、そんな言い訳しても仕方がないんです。そりゃあ腹立つことが毎日ありますよ。何で言った通りになってないんだ、とか、打ち合わせをしたメイクじゃねーだろ、とか、そんなことが一杯あるんですよ。でも、しょうがないんです。毎回全力を尽くさなきゃしょうがない。それが刺激的でもあります。そういうトラブルも障害もなく、何もかもがスムーズにのほほんと作れたら、多分、エッジの効いた作品にはならないと思いますよ。
でも、僕が年を取ったら緩やかなペースで、誰も死なない、全く血も出ない映画を作りたいな、と思います」

年を取ったら緩やかな作品を…って、それは嘘でしょ?(笑)

「(笑)。作品は、変わらないところと毎回変えたいところがあって、僕がハリウッドで一番最初に撮った『ミッドナイト・ミート・トレイン』という作品はホラー映画だったんですけど、それと同じようなことだったら絶対今回やりたくなかったんです。
基本的には自分が、誰よりも厳しく作品を見ているので、ちょっとでも、自分がいい仕事を出来てきたな、って思える映画を作っていけるようになっていったらいいな、と思います。それに、同じことをやってると飽きてくるので、次にやる作品は全然違う切り口で、自分の中にどれだけの引き出しがあって、中に何が入っているのか、それを出していきたいですね」

映画作りの楽しさはどんなところで感じていらっしゃいますか?

「映画って、その日、その場にいて、全部そこで決まっていくものなんですよ。だから、例えば『あずみ』をまた同じメンバーで作り直そう、と思ったとします。多分、出来上がった作品は過去のものと全然違うものになると思うんですよね。よくも悪くも、その時そこでの反応だったり、その日のチョイスで映画っていうものは出来ていくので、なんでこんなことしたんだろ、でもいいな、というものもあれば、何でこんなことになっちゃったのか、ということもあって…。でも、それを全部ひっくるめて、楽しいですね。映画ってね」。

 
 


Biography

きたむら りゅうへい

1969年大阪府生まれ。ロサンゼルス在住。17歳でオーストラリアへ渡り、スクール・ オブ・ビジュアル・アーツ映画科入学。卒業制作の短編映画が高い評価を受ける。長編デビューはローマ国際ファンタスティック映画祭監督賞を受賞した『VERSUS -ヴァーサス-』(01)。その後『あずみ』(03)『ゴジラ FINAL WARS』(04)などの大作の指揮を執る。ハリウッドデビュー作は『ミッドナイト・ミート・トレイン』(08)。映画以外にテレビドラマやCM、ミュージックビデオ、コミック原作なども手掛ける。www.ryuheikitamura.com