『TOKYO TRIBE』で魅せた世界初のバトルラップミュージカル
Sion Sono×YOUNG DAIS
映画監督 園 子温/ラッパー ヤングダイス (2014年9月19日記事)


日本映画の規格を覆す実験的な作品

9月4日、トロント国際映画祭初日、深夜23時59分に上映されるミッドナイト・マッドネス部門の開幕を華やかに飾った園子温監督の『TOKYO TRIBE』。

近未来のトーキョーでさまざまなトライブ(族)に属するストリートギャングたちの縄張り抗争を描いた人気コミックを実写化した最新作を引っさげて園監督が2年振りにトロントにやってきた。上映会場となったライアソン・シアターは新作をいち早く見ようというファンたちで超満員。終了後のQ&Aには園監督と、鈴木亮平さんと共にダブル主演を務めたYOUNG DAISさんが登場し、真夜中にも関わらず大賑わい。園監督作品のトロントでの注目の高さが再認識できる上映会であった。そんなオープニング・ナイトを盛り上げた園監督とYOUNG DAISさんに翌日、話を伺う機会を得た。


― 昨夜の歓迎ぶりは凄かったですね。園監督はトロント映画祭に参加されるのは『希望の国』以来、2年ぶりになりますが戻って来られてどのような感想をもたれましたか?

園監督:「トロント国際映画祭には過去に何度も作品が出品されていたり、実際に来てもいるので、段階を経てファンが増えてきているなと実感します。なかには僕の作品全てを観てくれているファンがいたりして…。そういう人たちと会話ができるのはうれしいことだと思いますね。歓迎されている感じがあります」

ⒸAlberto E. Rodriguez, WireImage/Getty for TIFF


― YOUNG DAISさんは初めてのトロント映画祭についてどのような印象をもたれましたか?

YOUNG DAIS:「昨日の上映会は衝撃的でしたね。感情を声に出したりしながら楽しんで映画を観る観客を目の前にしたのは初めてで、トロントが大好きになりました」

園監督:「僕もトロントが大好きになりました(笑)」

― 監督にとって今作品で一番チャレンジだった点はどこでしたか?

園監督:「オールセット。ミュージカルというのもはじめて、しかもラップ。原作のストーリーをほぼ骨抜きにすること。その三つ巴という感じでした。観客がついて来れるかどうかは定かじゃなかったけれど、やってみたかった。この作品はあらゆる意味で実験的。野心的な映画であると思います」

― アーティスティックなセットでしたよね。お金と時間がたっぷりかかったのではないですか?

園監督:「美術、アーティストの人にはかなり頑張ってもらいました。ほとんど全てセットなんですが、知らない人が見たらかなり危険な街に見えると思います。日活撮影所の撮影現場として使われていない部分を街並みにしたりとか、コロンブスの卵みたいに普通では考えられないような奇抜なアイデアを取り入れています。お金がかかっているように見えていたのであれば、それは成功しているということですね」

― ラップミュージカルという構想はどこから出てきたのですか?

園監督:「最初は普通に原作の漫画を実写化するという話だったのですが、俳優だけに出てもらっても面白くないなと。ストリートの話なので実際にストリートの人たちに出てもらおうということになって、実際のラッパーたちに声を掛けました。そして、実際にラッパーたちに集まってもらった時に、”この人たち、ラップをやってもらった方がいいな“と思って…。じゃ、台詞をラップに…そして、そこまでするなら全編ラップもありかなという感じで。ラップミュージカルって今までなかったから面白いんじゃないかなって」

YOUNG DAIS:「台本の中に監督が、♪マークを付けている箇所が何か所かあって、その部分をラップに変えるという感じで進められました」

▲園子温監督(左)とYOUNG DAISさん(右)

― 劇中のラップの歌詞はラッパーの方々が作られたのですか?

園監督:「大体の大筋、こんな内容にしてくれればいいっていうのは僕が伝えました。自由にやってくれって言ってしまうと、全く関係ない歌にしちゃう人が出て来るので…。実は若干1名いたんですが(笑)。なので物語の流れに沿って僕が書いたことに、彼(YOUNG DAISさん)が歌詞を加えてくれたりはありました」

YOUNG DAIS:「監督のガイドラインを元に、ラッパーたちが監督の思いをくんで、歌詞を起こすという方向でしたね」

― YOUNG DAISさんは俳優業は初めての挑戦だったんですよね?

YOUNG DAIS:「そうです。もうそれはアメイジングな体験でした。撮影している最中も、撮影が終わって公開されてからも、昨日の夜も本当に最高! 園子温ワールド、アメイジング!!」

園監督:「彼は演技は初めてなのに、めちゃめちゃ上手くて、すごく自然。他のラッパーとは雲泥の差で芝居が良かったんで、彼がいたことはすごくラッキーでした」

YOUNG DAIS :「そのご褒美にスンミ(清野菜名さん)とのキスシーンをいただきました(笑)」

― 演じる側として一番難しかった点はどこでしたか?

YOUNG DAIS :「アクション終わった後にいきなりラップとか、ラップしたかと思ったら台詞になったりとか、緩急がすごくあるんです。それが1シーンとして成立するまでに何度も何度もテイクを重ねて…。僕らの中にちゃんと1つ1つの所作を紡いでいけているかどうか、俳優同士がフィールし合いながらやらないと絶対にかみあわない要素がぶつかりあっているので、みんなで作りあげる作業は大変でしたね。でも、それがやりがいでもありました」

▲ダブル主演演を務めた鈴木亮平さん(左)とYOUNG DAISさん(右)
Ⓒ2014 TOKYO TRIBE FILM PARTNERS

― 園監督は温厚そうなお人柄にお見受けするのですが、撮影現場ではどんな感じの方なんですか?

YOUNG DAIS :「現場ではものすごく集中されていました。おしゃべりできる時はできるんですが、そうでないときはそうじゃない。今みたいな感じとは全く違いますね。めちゃめちゃ集中しているんです。それが現場の集中力の高さにつながったんだと僕は思います」

― それにしても、久しぶりに肉食系男子を大量に見た気がしました(笑)

園監督:「日本映画という環境でいうと、小奇麗で、モジモジした青年とモジモジした少女の恋愛ものというのが定番で、今回の作品はそれに対するアンチテーゼ(反論)でもあったんです。日本映画に出て来る細い人たちと対照的なめちゃめちゃ油ギッシュな野郎どもの映画を早く作ってぶちかましたいと思ってたんです。そしたらすぐ出来たっていう。僕は思ったらすぐできるという、願望がすぐに実現する派なので、それであっという間にこんな映画が作れちゃいました。海辺でバカヤロー! とか叫んでいるような青春気取りなんて違うぞってね。そこに一石を投じるような感じです」

― 最後に作品をまだ見ていない読者にメッセージをお願いします

園監督:「とりあえず日本映画というと”あの地味なやつね“と思う人も多いかと思うんですが、これは全くの規格外です。今考えている悩みとか吹っ飛ぶくらいおもしろい映画になっていると思うので、ぜひ見てみて下さい」

YOUNG DAIS :「トロントのみなさん、頑張っていきましょー!」

園監督、YOUNG DAIS :「イェーイ!」。



 
 


Biography

その しおん


法政大学入学後、8mm映画の制作を始める。90年、『自転車吐息』がベルリン映画祭の正式招待作品に選ばれたのをはじめとして、『愛のむきだし』や『冷たい熱帯魚』など、国際映画祭への正式招待作品多数。トロント国際映画祭では、2012年『希望の国』が同国際映画祭「NETPAC賞(最優秀アジア映画賞)」を受賞、2013年には『地獄でなぜ悪い』が観客賞を受賞。
【サイト】www.sonosion.com


Biography

ヤング・ダイス


1981年生まれ。北海道出身。01年、アメリカ・ニューハンプシャーの高校を卒業し、日本でラッパーとしてのキャリアを本格的に始動。 03年、6人組の「NORTH COAST BAD BOYZ(現N.C.B.B)」を結成。06年、北海道のFM局NORTH WAVEで始まったHIPHOP番組「DDG THING」のパーソナリティに抜擢されるなど、ソロ活動も行なうなか、14年『TOKYO TRIBE』で俳優デビュー。
【サイト】www.digdagood.com/artists/young-dais