日本のニンジャを見たという楽しい思い出を提供したい
Ace-K
プロフェッショナル・パフォーマー 斉藤 エイスケ(2016年9月16日記事)

自分という存在を世界に発信していく

今年もトロント国際バスカーフェストが9月2日から5日までウッドバイン・パークで開催された。このフェスティバルは、トロントに4万人いると言われているてんかん患者の社会的認知度を高める目的で、エピレプシー・トロントが1999年にスタート。今ではそれだけでなく言葉や文化の壁を越えたユニークな毎年恒例の夏の人気フェスティバルの一つとなっている。さて、今年は日本から「Ace-K」こと斉藤エイスケさんがパフォーマーとして参加。日本のみならず、世界各地のイベントで活動を展開し、さまざまな賞を獲得している彼は昨年、モントリオールを拠点とするエンターテインメント集団「シルク・ドゥ・ソレイユ」の登録アーティストにもなった。そんな彼にお話をうかがう機会を得た。


―今回、トロント国際バスカーフェストに参加することになった経緯を教えてください

「このフェスティバルは毎年世界中からアーティストを募集していますが、今回はその応募者の一人として審査を経て招待していただきました。ナイアガラには以前に行ったことがありますが、トロントは初めてなので楽しみにしていました」

―日本のみならず世界15か国以上でパフォーマンスされていますね


「友人に誘われて、ドイツのあるフェスティバルにダメもとで応募したのが(日本国外でのパフォーマンスの)始まりです。その時、運よく審査を通過してしまったんですね。当時は言葉もできず、不安しかなかったのですが、『行くしかない! やるしかない!』と心に決めて挑みました。初めての海外でのショーはとにかく『緊張』の一言でしたね。頭の中は『次の流れはこう』『次の道具はこれ』…というので一杯で、まったく余裕がありませんでした。それでも、3日間のフェスティバルでは日を追うごとにショーに一体感が出てきて、だんだん楽しくなっていったのを覚えています」

―パフォーマーになる道を選んだ理由を教えてください

「1997年にハイパーヨーヨーが日本で大ブームになりました。そのヒットを受けて、バンダイからチャッターリング(大きな輪に小さな輪やビーズがついた玩具)やディアボロ(ジャグリング用の特殊なコマ)がリリースされたのですが、その時にディアボロを始めました。最初は友人達と技を競い合うだけでしたが、より凄い技、より凄い人を探しているうちにサーカス・アーティストへと辿り着きました。ある時、日本のフェスティバルでヨーヘン・シェル(Jochen schell)さんのパフォーマンスを見て感銘を受け、『彼のようになりたい、でもどうすれば?』『彼はサーカスの学校で勉強していた経歴がある。サーカス学校へ行けば彼のようになれるかもしれない!』。そう思っていた矢先に、日本で『サーカス学校が開校』というニュースが耳に飛び込んできて、迷わず入校を決めました」

―ヨーヘン・シェルさんのどんなところに引かれたのでしょうか?

「技術だけではなくアーティストとしての彼の動きや表現、ショー、キャラクターにとても引かれました。彼はドイツ人アーティストで、当時は3つのディアボロを扱う名手でした。私の友人達は技術にのみ注目していましたが、私が最初に真似をしたことは『バレエのようにつま先を伸ばす』こと。今でも、あの時感じたこと、学んだことは心の中で生きています」

―Ace-Kさんは忍者姿でパフォーマンスをされていますね

「サーカス学校で体操を習っていた時、宙返りが得意で、友人に『いつもよく動き回っていて漫画みたい、忍者みたい』と言われて取り入れるようになりました。外国人でも、和の芸なら曲独楽や玉すだれ、傘回し、侍なら刀というイメージを持っています。では、忍者は? 世界中で色々なキャラクターがあり、格好や道具も大きな決まりがありません。『ミュータント・タートルズ』は亀だし、漫画『NARUTO―ナルト―』の主人公に至っては金髪です。唯一共通していることは、スピード感があってアクションが派手だということ。これを満たしていれば、ジャグリングしてもいいじゃない?というのが僕の見解です。もともと忍者はスパイのようなもので世を忍ぶ姿として旅芸人をしていたという言い伝えもあります。ショーで最初にコートを着て、ハリー・ポッターのような恰好をしているのですが、それは『忍者には見えない=世を忍んでいる』という意味合いからなんです」

—パフォーマンスを通して伝えていきたいことを教えてください

「自分という存在を世界に発信していくこと。世界中のいろいろな場所を巡っていますが、『一期一会』を大切にしています。そこで出会った多くの方々の人生の中で、『名前も忘れたし、どんな人だったかも覚えてないけど、日本のニンジャを見た事がある!』、そんな楽しい思い出を提供できれば光栄です」

―ところで、Ace-Kさんはシルク・ドゥ・ソレイユの登録アーティストでもありますよね。もしショーに出演することになったら、どんなパフォーマンスをしてみたいですか 「シルク・ドゥ・ソレイユのポテンシャルアーティストとして登録されていますが、実際に公演でパフォーマンスをするようになるまでには、想像もできないくらい狭く厳しい道のりがあります。もし、舞台をやらせていただける機会が訪れたら、いつも通り明るく元気にショーができればいい、と思っています」

—Ace-Kさんの目指すゴールは何ですか?

「自分なりに目標だと思っていたり、高いハードルだと思っていたことも、クリアできたら次の目標ができて…の繰り返し。なのでゴールがない! と思っています。ただ、何事も悔いを残さず終えられるようにしたいですね」

—次にチャレンジしたいことを教えてください

もっともっとたくさんの国や町でショーをしたいです。フェスティバルに限らず、お店や施設など、大小を問わずいろいろな場所でショーをやってみたいです。呼んでいただければどこへでも行くので、ご連絡お持ちしております!」



Biography

さいとう えいすけ
兵庫県淡路島出身。中学卒業後に日本唯一のサーカス学校に入学し、サーカス技術を学ぶ。卒業後はプロパフォーマーとして活動開始、日本全国、世界各国のイベントに出演。賞を受賞するなど高い評価を獲得し、2015年には世界的なサーカスであるシルク・ドゥ・ソレイユの登録アーティストとなる。日本のモザイク大道芸人コンテストで審査員特別賞、 アメリカのSpring Busker Festival で優勝するなど受賞多数。

サイト:eisukesaito.com