初出演作で主役を射止めた
ラッキーガール
Akari Endo
女優 アカリ・エンドウ(2013年11月15日記事)

運命は自分で切り開くもの
進みたい道があれば突進するのみ

ドミニカ共和国の首都サントドミンゴのスラム街。ハイチ人のジャンヴィエとドミニカ人のルディは、半分血のつながった兄弟であるものの、互いに憎み合っている。1つの島に2つの国家が隣り合って存在する場所で、異なるバックグラウンドを持つ兄弟は、同じ女性を愛して争うことになる…。

Pizza e Pazzi 9月に行なわれたトロント国際映画祭でワールドプレミア公開された『Cristo Rey』。ドミニカ共和国で制作され、スペイン語が使用されている同作品のメインキャストに名を連ねていたのがアカリ・エンドウさんだ。日本人の父親とドミニカ人の母親との間に生まれ、ドミニカ共和国で育った彼女はこの作品で映画デビューを果たした。初出演の作品で主役を務めるというチャンスを射止めたアカリ・エンドウさんに映画出演に至る経緯や作品についてお話を伺った。

― 『Cristo Rey』の出演のいきさつを教えてください

「エージェンシーから、ある映画で若い女優を探しているという話を聞いたんです。映画に出演することは私の夢だったから、オーディションではすごく緊張してしまって…。だから合格の知らせが入った時は、"オー・マイ・ゴッド!"って、飛び上がって喜んだの。初めての映画で主演だなんて、そんなラッキーが自分に起こることが信じられなくて。
監督はドミニカ共和国で活躍するラティシア・トノス・パニアグア監督。私の最初の映画が、国が誇る名監督の作品だなんて本当に恵まれていたと思う。彼女には多くのことを教えてもらって、いい勉強をさせてもらいました」

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― カリビアンバーションの『ロミオとジュリエット』と評される作品ですが、役柄のキャラクターとご自身との接点などはありましたか?

「台本を読んだ時、瞬時に自分と近いキャラクターだと感じました。(劇中で、お兄さんが亡くなることを意味して)私自身、2年前に兄を亡くしたので。それと、物語の主題は、ファーストラブ。初恋って全ての危険を犯してでも、気持ちのままに突き進みたいっていう勢いがあってすごくいいわよね。そこにも共感したわ。
実は今日(ワールドプレミア公開が行なわれた9月10日)は亡くなった兄の誕生日なの。私の初出演映画のワールドプレミア公開の日が兄の誕生日だなんて、すごい奇遇よね。兄もきっと喜んでくれていると思うわ」
写真左 映画『Cristo Rey』

― 女優を目指したのはいつからだったんですか?

「13歳くらいだったかな。8歳から競泳のナショナルチームに入っていたんだけど、だんだん歌やダンスに興味がわいてきて、水泳から歌とダンスに転向したの。でも、女優になる兆しはずっと前からあったみたい。これは母から聞いた話なんだけど、5、6歳の頃、ビデオでディズニー映画の英語版『ライオン・キング』を繰り返し見て、全ての台詞を覚えて鏡に向かって演じていたんですって。それまで全く英語を話せなかった私が、英語の台詞を完璧に話していたのを見て、母は驚いたって言っていたわ」

― キャリアのスタートはいつだったんですか?

「2008年にドミニカ共和国で『High School Musical On Stage』というミュージカルで舞台に初めて立ったの。メインキャストの男優と女優は2人ずつというダブルキャストだったんだけど、私と私の兄もそのメインキャストの1人だったの。彼は才能のあるシンガーだったのよ。私が舞台に立つ日と兄の日とが交代だったので、母は連日劇場に通っていたわ。その後、『Annie』や『CATS』、『West Side Story』といったミュージカル作品に出演したわ。1番最近の作品は『Legally Blonde』。主役のエル・ウッズを演じました。私は黒髪なので、ウィッグを付けてね。歌もダンスも大好きだからミュージカルはすごく楽しいんだけれど、ずっと映画に挑戦したいと願っていたわ。劇場には来る人が限られているけれど、映画はもっと多くの人に見てもらえる。メッセージがより広範囲に、世界的にも伝わるところが、映画の一番の魅力だと思うのよね」

Akari Endo さん(中央)と共演者のYasser Michelén さん(左)とJames Saintil さん(右

― 現在の活動拠点はドミニカ共和国ですか?

「今のところはそうです。私は生まれも育ちもドミニカ共和国の首都サントドミンゴ。作品に取り上げられているようなドミニカ共和国と隣国ハイチとの衝突については、敵視し合っていることを残念なことだと思っているわ。政治的というよりは、社会的な要素が強いと感じているけれど…。悲しいことだけれど、人種差別もあるわね。2010年に起こったハイチ地震を覚えてる? あの時、一番最初に救助に行ったのはドミニカ人。それなのに、それ以降も、2国間の社会的な溝の深さはあまり変わっていないわね。2つの違う文化がぶつかり合って、譲り合わないというのかしら。この作品はそこの部分にも強いメッ セージを発していると思うの。"人種とか出身だとかは関係ない。大事なのはLOVE"なんだって」

― お父さんは日本人とのことですが、日本語は話せますか?

「小さい頃、私と兄は日本語学校に通っていたんだけれど、5歳の時に辞めてしまったので日本語は話せないの。でも、いつも日本のことは身近に感じているわ。だって私のルーツだものね。好きな食べ物はお寿司だし、子どもができたら絶対に日本語の名前を付けようとも決めているの。ドミニカ共和国では私の家族だけが『エンドウ』。そして私は唯一の『アカリ』。みんな私の名前を呼ぶ時、間違った発音で呼ぶけれど(笑)、ユニークな名前だって褒めてくれるの。どんな意味なのか、 ともよく聞かれるので、会話のきっかけになったりもするわ。名前の意味はライト(明かり)でしょ?家族の半分は日本にいるから、近いうちに必ず行きたいと思っているわ」

― 最後になりましたが、今後、出演が 決まっているプロジェクトを教えてくだ さい

「この『Cristo Rey』の撮影の後、ドミニカ共和国で制作された映画4作品に出演しました。今後もオーディションが控えているので、それにベストを尽くすわ。まだ全く決まってないけれど、日本でのキャリアも視野に入れているの。英語を話す役でのミュージカル出演が、今のところ1番可能性が高そうね。
 今回の映画出演は、長年の夢が叶って本当にうれしい! 今夜のワールドプレミアでの会場の反応もすごく楽しみにしているの。やりたいことが決まっているなら、それに突き進むのみよね。運命は自分自身で切り開いていかないと!」



 
 


Biography

えんどう あかり

1989年生まれ。ドミニカ共和国サントドミンゴ出身。日本人の父親とドミニカ共和国出身の母親との間に生まれる。2008 年、『High School Musical On Stage』でデビュー。以降、『Annie』、『CATS』などドミニカ共和国の劇場にてミュージカル女優として活躍。『Cristo Rey』のドミニカ共和国での公開は12月25日。北米での公開は未定。
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