時代や国境を越えて日本の伝統芸能を伝えたい
Geimaruza
舞踊家集団 藝〇座(2017年4月21日記事)

日本舞踊は実は幅が広くて実験的な芸術


日本の古典芸能である日本舞踊を、現代に分かりやすく伝えるために立ち上がった若手舞踊家集団の藝〇座(げいまるざ)がトロントで公演を行なった。東京藝術大学の音楽学部邦楽科 ・日本舞踊専攻の卒業生が2006年に結成し、今では総勢30名以上のメンバーから成る藝〇座は、2010年にメキシコ、2013年にはスペインで公演を行なうなど、海外においても活動の幅を広げている。

そんな藝〇座がトロントにやってきたのは、春の気配が近づいてきた3月のこと。開演後の舞台では、舞踊家たちが色彩豊かな着物をまとい、「操り三番叟」や「鶯宿梅」、「春夏秋冬」などの演目を披露。三味線や笛、太鼓と歌に合わせながら、ダイナミックに美しく舞い踊るステージは、最後にお客さんから盛大なスタンディングオベーションが送られ幕を閉じた。公演当日にリハーサルを終えた藝〇座の花柳源九郎さんにお会いし、これまでの活動や日本舞踊の魅了について話をうかがった。


―まずは、2006年に藝〇座を立ち上げた背景からお聞かせください

「1993年に舞踊家の四世花柳壽輔先生が、東京藝術大学の日本舞踊専攻を設立されました。それから10年以上が経ち、私たち卒業生の数が増えてきたので、何か団体を作って活動してみては? という先生からの提案がありました。それで、代表の花柳達真さんと僕で皆に声をかけたことがきっかけです」

―日本舞踊をわかりやすく伝えるというコンセプトは、立ち上げ当初からお変わりありませんか?

「そうですね。当時は25歳前後だったのですが、やはり20~30代の舞踊家なりの価値観で、日本舞踊を現代に伝えたいというのが総意だったんですね。古典芸能というのはなかなか敷居が高く見られがちですが、もっと若い人たちに見てもらいたいという思いで当時から活動して参りました」


© Katsuhiro Kojima

―立ち上げの当時から海外で公演することも視野に入れておりましたか?

「正直に言うと、最初は海外までは視野に入れていなかったんです。東京を中心に活動をして、さらに日本の地方都市へ広げることを目指しておりました。というのも、メンバーのほとんどが地方出身者なので、自分たちの地元でも公演を行ないたいと考えていました。そのように国内で活動をしているうちに、たまたまメキシコのセルバンティーノ国際芸術祭にお声かけいただいたことをきっかけに、海外にも目を向けるようになったんです」

―日本舞踊をわかりやすく伝えるために、どのような工夫をしているのでしょうか?

「我々舞踊家は、わかりやすく言うとパントマイムを行なうように、体で喜怒哀楽を表現します。さらに、喜怒哀楽の表現は世界共通なので、それをできる限り豊かに演じ、お客さんに伝わりやすい表現方法を取り入れております。海外での公演の際にも特にアレンジは加えておらず、基本的には日本で上演したものをそのまま持ってきていますね」


© Katsuhiro Kojima


© Katsuhiro Kojima

―では、日本舞踊とはどんな踊りなのかを説明するとしたら、どのように述べるのが適していると思いますか?

「日本舞踊にはさまざまな側面がありますが、分かりやすく説明するならば『言葉を表現する踊り』だと言えます。基本的に日本舞踊は、歌詞に合わせて動くんです。ですから、日本舞踊は言葉ありきの踊りだというのが大きな特徴になりますね」

―日本由来のもの以外に、シェイクスピアといった外国文学なども題材に演じていますよね

「あまり知られていないのですが、洋楽やオーケストラで踊ったり、洋服を着て踊るということは、戦後から先輩方が繰り返し試みています。日本舞踊とは、実は幅が広くて実験的な芸術だと言えますね。あらゆる手法を先輩方が実践してきましたし、我々もそれを経験した上で実践させていただいています」


© Katsuhiro Kojima


© Katsuhiro Kojima

―実際に演じる題材は、どのように決めていくのでしょうか?

「藝〇座を立ち上げた時に、改めて日本舞踊とは何かを考えたんです。その結果として、日本舞踊というメッセージを伝える際に、3つの条件を付けております。着物を着ること、和楽器での演奏、そして歌詞があるものを演じることです。当たり前のように聞こえますが、これらの条件を崩さないようにしながら、色々な分野から題材を引っ張ってきています。例えば、『オズの魔法使い』を日本舞踊に仕立ててみたり、日本神話の『八岐大蛇』を女性だけで演じるなどですね。あらゆる題材を日本舞踊として提供することを心がけております」

―舞踊家として一番幸せを感じるのはどんな瞬間ですか?

「作品が生まれる瞬間ですね。まずはリハーサルの段階で、音楽や大道具を含めたすべての要素がステージにそろい、初めて作品が立ち上がる。お客さんよりも先に僕たちがリハーサルでそれを経験するのですが、個人的にはその瞬間に大きな快感を覚えますね。さらに、本番でお客さんからさまざまな反応とともに拍手をいただいたときに、やはり幸せを感じます」

―今回の公演を通して、トロントの方たちに伝えたいことはありますか?

「私たちは、伝統の世界を保ちながら時代や国境を越えて感動できるものを作っていくことを一番の使命にしています。しかしながら、古典芸能という伝統の世界と現代には厚い壁があります。現代とは遠くかけ離れた昔のことを、現代において表現をしているわけですからね。それは、日本の方たちがトロントに来て、文化が違う中で戦っていらっしゃることと、ある意味共通しているのかなとも思っています。ですから、私たちの舞台を見ていただくことが、異国の地で生きている皆さんの活力になれば幸いですね」。


Biography

げいまるざ
2006年に東京藝術大学の日本舞踊科の卒業生によって結成された、若手の日本舞踊家集団。日本の伝統芸能を幅広い世代に伝えるために、エンターテイメント性あふれるスタイリッシュな日本舞踊を提供している。

サイト:www.geimaruza.com