四畳半を突き破って 世界で大暴れ
Guitar Wolf
ロックバンド ギターウルフ(2016年10月7日記事)

無駄だと思っていたものが本当はすごく大事


去る9月6日、3年ぶりのフルアルバム「チラノザウルス四畳半」を引っさげて、ギターウルフがトロントに帰ってきた。場所はローリングストーンズほか著名なバンドが多数演奏している伝説のライブハウス「Horseshoe Tavern」。会場は、北米で絶大な人気を誇る彼らを心待ちにしていた現地ファンで埋め尽くされた。流れていたBGMが変わり、ドラムのトオル、ベースのU.G、ギターのセイジがチラノザウルス姿でステージに登場するやオーディエンスのボルテージは一気にヒートアップ。しょっぱなからチラノザウルスがビールを一気飲みをし、手の平からは炎があがり、絶妙のタイミングでセイジがステージからダイブする。やがて、会場は一つの熱の塊と化していった。最初から最後までメーター振り切りのハイテンション。まるで嵐に身を預けたかのような怒涛の圧巻ライブだった。今回の “YOJOUHAN STRIKES BACK TOUR 2016”と題したトロントとモントリオールを含む北米ツアーでは約1か月間に20都市をまわった。ほぼ毎日移動し、どこかの街で演奏している計算だ。そんな多忙なスケジュールの合間をぬって、Horseshoe Tavernでサウンドチェックに入る前のセイジさんに直撃し、お話を伺う機会を得た。

―北米ツアーもちょうど中盤にさしかかてきましたが、これまでの手応えはいかがですか?

「そうですね、3年目だったんで、待っててくれてた感がありますね」

―トロントに来るのは何回目ですか?

「北米ツアーの時は必ず来てるんで10回以上だと思います。ローリングストーンズがやったことで有名なこの場所でやれて嬉しいです。トロントはカナダで一番ロックっぽい。だからやりがいがありますね」


―新作でも相変わらず破天荒なタイトルが並んでいます。作詞はまずタイトルありきと聞きました

「タイトルが出てこないと何のイメージもわかないですね。自分の血とか肉とか、身の中にあるものじゃないと、何かがこもった歌にはならない。たとえば、自分は島根県出身で18の時に東京に出てきたんですけど、モンスターのようなものすごいエネルギーを持った街で四畳半に一人で住んでいて、『果たしてこの街で生き残れるのか』と呻いていたんですよ。その魂の形がチラノザウルス、いつかこの屋根をぶち破ってガーッて表に出てやるみたいなね。その時の感情が『チラノザウルス四畳半』。東京と遭遇したときの衝撃や孤独感が今でもずっと自分の中にあって、それが原点ですね」

—アルバムはこだわってアナログで一発録りだとか

「ボーカルは別に録りますけど、演奏は一発録りですね。こだわっているんじゃなくて(笑)、自分たちはうまくないんで、そうでしかできないんです。いや、ほんとに。あと一発録りじゃないと気合いみたいなものが録音できない」

カセットテープ版も出されていますが、今でもカセットテープで音楽を聴いていますか?

「もちろんです。いつも練習の時にはウォークマンのカセットテープで練習を録っています。デジタルだと制御がかかって高音と低音をいらないものとして排除してしまうけど、カセットって音が全部入るんですよ。もちろんはっきり聞こえるわけじゃないんだけど、音がぎゅって締まってる。いらないと思ってそぎ落として、今のものがあるんですけれど、そぎ落とした部分がいかに大事で味があるものだったかってことですよね。だから、LPとカセット、今、結構戻ってきてるじゃないですか。たとえば、ペンで書くと紙に書いたものが残ったりするじゃない。いらないものが。こういうものがきっといいんですよ(笑)」


—確かに筆跡を見てその時のことを思い出したりしますね

「そう、何年か後に好きな人の名前をこう書きなぐったものを見て、思い出したりするんですよ、きっと(笑)。アナログだから、隠さず、制御せずに、そこにあるじゃないですか」

—そのまま表れますもんね。では詞を書くときも手書きですか?

「大学ノートにバーッと色々書きなぐりながら…だからもう何十冊もたまってるけど、それは自分の宝ですね」

—以前ベースを担当していたビリーさんが急逝し、2005年に当時20代だった新メンバーU.Gさんを起用した後もギターウルフは疾走し続けています。バンドのエネルギー源は何ですか?

「うーん、ビール、ですかね。うーん、エネルギー源…なんだろ、目の前の一つひとつのライブ、ですかね。それをビールで乗り越えていく」


—なるほど。では、尊敬するアーティストを教えてください

「リンク・レイ(Link Wray)です。自分は昔からギターのFが弾けなくて挫折を何度も味わっていたんです。ある時、彼のアルバムを偶然買って、自分の部屋のターンテーブルにポンと落とした。その瞬間、ただDからEへじゃーんじゃーんじゃーんって。『Rumble』っていう有名な曲なんですけど、『うわ~、幼稚園生でも弾けそうだぁ! これでいいんだ、ギターってこれでいいんだ!』と思った感動が、何度目かの挫折から救ってくれて、自分のスタイルが決定した瞬間でもありました。とにかく、シンプルでかっこいい。この人にあこがれた。彼も自分のことを知っていてくれていたんですけど、彼が生きているうちに直接見られなかったことがショックですね」

—初めて海外に出たのはいつですか?

「23か24歳の時に一人で、ニューヨークからロサンゼルスまで、グレイハウンドで好きなところで降りて、好きなところから乗るという旅をしました。ブルースとかロックを探しに…っていうとかっこいいですけど、いろいろありましたよ。メンフィスで黒人二人と取っ組み合いのケンカになって、もしかしたら死ぬかも! と思った瞬間があったりとか…。そのへんの話は去年リットーミュージックから出した本『昭和UFO』に書いています」

—日本人アーティストとして海外で活動する際に意識していることは何ですか?

「金髪へのウインク(笑)! いやいやいや、サングラスかけているからわからないですけどね。なんすかね、海外は。やっぱ現地の飯食って飲む! それと、金髪へのウインク!」

—日本人アーティストとして海外で活動する際に意識していることは何ですか?

「うーん、なんだろ…何するかな、俺。あ、緊張しますね。緊張しない時には緊張させるようにしています。緊張した時の爆発感がないと。あと、ビール!」


Biography

ギターウルフ
ギターのセイジ、ベースのU.G、ドラムのトオルの3人で構成されるロックバンド。1994年、アメリカにてアルバム『WOLF ROCK』でCDデビュー。1997年、アルバム『狼惑星』で日本国内でメジャーデビュー。2005年3月にビリーが心不全により急逝。ベスト・アルバムをリリースした後、同年9月、U.Gが加入。2016年5月に通算12枚目のアルバム『チラノザウルス四畳半』をリリースし、世界規模で活動中。同年、セイジの人気ブログ『フジヤマシャウト』を書籍化した本『昭和UFO』を出版。

サイト:www.guitarwolf.net