最高レベルのバレエが出来る喜び
Haruka Kyoguchi
バレエダンサー 京口晴香(2018年6月8日記事)



チャイコフスキーの傑作バレエのひとつ「くるみ割り人形」。ここトロントでも、ホリデーシーズンに毎年上演されている。その舞台で、堂々としたパフォーマンスを披露する京口晴香さん。小柄な彼女から溢れ出すエネルギーはどこからやってくるのか。
「母の影響で物心つく前からバレエを始めていました」と語る京口さん。小学生時代、同級生たちがアイドルや芸能人に憧れる中、彼女は海外のプリンシパルたちの演技DVDをずっと観ていたという。「小学生の時から、漠然と海外に行きたかった」と語るのは、そんな環境で育った所以であろう。
「高校生の夏休みにカルガリーにバレエ留学をしたのがきっかけで、より海外への思いが強くなりました」
その翌年、彼女は単身カナダへ渡り、バレエ学校へ入学する。
「カナダでのレッスンは、日本以上に基礎を徹底的に教え込まれました。当時は、またこんなことをやらされるのかと抵抗感はありましたが、高校生で体もまだ出来上がっていない頃だったので、体の変化に合わせてレッスン出来たことが、結果として今に凄く生かされていますね」 その後、更なるステップアップのために別のバレエ学校に入学。基礎をみっちりとカナダで習得した京口さんは、最上級のクラスに入れたが、そのクラスメイトたちは現在、世界最高峰のバレエ団体に所属するダンサーばかり。技術力・表現力共に圧倒された。しかし「1回も日本に帰りたいと思ったことはありませんでした」と彼女は言い切った。辛いこと以上に、最高レベルでバレエをできる喜びの方が大きかったのだ。
「背が低いからこそ、オーディションで高身長の人と並んだ時は余計に燃えますね」と声を強くする。確かに舞台上の彼女のエネルギー溢れるパフォーマンスは、他との身長差を一切感じさせない。
「技術や表現力は劣る部分もあるかもしれないけど、観客の記憶に残るパフォーマンスを常に心がけてます」
一見とてもたくましく見える彼女だが、舞台に上がる前にする意外なルーティーンを教えてくれた。
「実は、いつも吐き気が出るほどに緊張してしまうんです。だから心を落ち着かせるために、手の平に人という字を書いて飲み込んでいます。その後に、心の中で自分は出来ると20回唱えてから舞台に上がります」
パフォーマンス中は、あまり記憶はなく、音楽と自分の身体がカチッと合う感覚以外は、だいたい覚えていないという。圧倒的な集中力が、彼女のエネルギーを引き出しているのであろう。
海外で単身夢を追い続けてる京口さんに、今後の目標を聞くと「小さい時から憧れているドン・キホーテにいつか出てみたい」と答える。古典バレエの中でも随一の陽気でその作品は、まさにエネルギッシュな京口さんを具現化したようで、まさにピッタリだと感じた。いつか、舞台の中心で彼女が踊るのを心待ちにするばかりである。







Biography

きょうぐち はるか
トロントをはじめ、北米を中心に活躍するフリーランスのバレエダンサー。高校3年生より単身カナダに渡る。カナダ・アメリカ国内のバレエ学校を卒業後は「くるみ割り人形」「シンデレラ」などの数々の人気作品に出演。