無心で作品に向かう喜び
Hiroshi Yamamoto
日本画家 山本 博(2016年3月4日記事)
優れた墨絵アーティストに贈られるルース・ヤマダ賞。昨年11月に日系文化会館にて行なわれた受賞者発表会で、2015年度は山本博さんが受賞した。山本さんはトロントを活動拠点にし、トロントのほかモントリオール、ニューヨーク、日本などで活躍している日本画家だ。


幼い頃から絵を描くことが大好きだった山本さんは、1900年代初頭にアメリカの画壇で認められた日本人画家の国吉康雄氏に憧れて、画家として身を立てる夢を持つようになった。

「1974年に親戚を頼り、トロントに移住しました。到着して1年くらいしてから、生前、国吉康雄氏が教えていたニューヨークの学校に見学に行ったのですが、当時の荒れたニューヨークに失望し、トロントに戻りました。トロントではグラフィックデザインの会社で働きながら、デッサンや西洋画、銅版画、中国画、風刺画などを6年間、夜間と週末のレッスンで学びました。絵描きになりたい、という思いで勉強を続けながら展覧会に顔を出し、夢を叶えるために模索する毎日を送っていました」

その後、日本画を学ぶため日本に帰国。日本で3年間学んだのち、今後の生活を考えながら禅寺にて生活していたある日、比叡山の向こうから“カナダに戻るといいことが起こる”という声が聞こえてきたという。これを機に、山本さんは再びカナダに戻ることを決心した。

「トロントに戻ってから、日系の新聞社で編集記者として働きながら絵を描くという2重生活を、13年続けました。独立して1年半経った頃に開いた個展が大好評で、それを機に画家として生きていく覚悟が決まりました」

芸術家として今があるのはトロントという場所のおかげでもあったという。

「トロントは修行の場所としては、最適な場所だと思います。マルチカルチュラルな土地の性質から、多くの文化や人間を受け入れてくれる。毎日がときめきの連続で、誰にでもチャンスがやってくるような気がします。
これまで、本当にやりたいと思ったことを無条件の気持ちで取り組む、芸術というのはそういうものだと信じてやってきました。そして命をかける分だけ面白くなっていくのが芸術だと思っています」

そして、最後に墨絵の魅力について伺った。

「墨絵は、墨が紙ににじむので1本の線を引いた後、その線のにじみ具合や墨の濃さをとっさに判断して2本目の線を引きます。考えて判断していては間に合いません。そこに反射神経を超えた本能が表れます。これをある程度思いのままに表現するには技術が必要で、普段の修練が大切です。その時の感覚を忘れないように練習を繰り返すことで、無心のうちに技がでてくるものだと思います。無心になって描けた時の爽快感はほかでは得られない感動があります」

自身の作風については、「解説がいらない、ノスタルジーの世界を描いています」という山本さん。作品に反映される心のバランスと共に作品作りの信条にしていることは『カナダの風と光』だ。

「カナダの自然の風や光を身体で感じながら、大らかな気持ちでカナダのスピリットを表現していきたいと思っています」。

現在、日系文化会館ウィンフォードルーム横の壁面で、山本博さんの作品を含む18点を展示した共同展『幽玄』を3月30日(水)まで開催中。


山本博さんの個展のお知らせ「Colour of Toronto」
期 間:4月19日(火)〜5月29日(日)8時〜17時
    *月曜日は休み
場 所:Patisserie Sebastien(3306 Yong St.)
入場料:無料

 
 


Biography

やまもと ひろし

雅号は白歩。京都産業デザイン研究所卒業。山本六郎氏に師事。1974年、トロントに渡り、西洋画、中国画などを学ぶ。92年にトロント大学ビクトリアカレッジで初の個展を開催。以降、トロント、モントリオール、ニューヨーク、日本などで個展やグループ展を開催。
オフィシャルサイト:www.hiroshiyamamoto.com