「新しさとは何か」を様々な角度から模索しています
Hiroyasu Ikegoshi
DRUM TAO 和太鼓パフォーマー 生越寛康(2018年4月13日記事)


ダイナミズムの中で創作される新感覚のショーこそTAOならでは


1993年に愛知県にて結成し、2000年より大分県に練習拠点を構える和太鼓演奏グループ「DRUM TAO」。男女混合、10代後半から30代後半までと幅広いメンバー構成のもと、従来の和太鼓演奏とそのスタイルにとらわれない「最新の日本エンターテインメント」「世界で通用するエンターテインメント」を目指している。彼らの知名度は日本国外においても非常に高く、世界24か国500都市、世界観客動員800万人という数字を記録。2018年の2月から5月にかけてはカナダとアメリカを中心とした北米ツアー「Drum Heart」を開催している。2月3日に行なわれたトロント公演は、2年ぶりとのことで、多くの観客がパフォーマンスを観るべくソニーセンター・フォー・ザ・パフォーミングアーツに足を運び、会場は満席状態に。興奮冷めやらぬ同公演終了後に、メンバーの1人である生越寛康さんよりお話を伺う時間を得た。

―今回のトロント公演ですが、手ごたえはいかがでしたか。
1つ1つのパフォーマンスに対するお客さんの反応がとても素直で、僕達もとても気持ちが良かったですし、何よりも達成感があります。「DRUM TAO」(以下TAO)が繰り広げるものは、和太鼓を含めた琴、三味線などの和楽器演奏だけでなく、印象的なステージセットの中で展開する、アクロバティックな身体的動作をがっつりと取り込んだ、まさに「ショー」。お客さんの反応が良いと僕達も「全身でもっともっと伝えよう」という意識が高まり、良い意味でヒートアップしていくんです。今回もそういったTAOらしさを実現できました。

―日本人パフォーマーだからこそ表現できることはありますか。
そうですね。まずは伝統楽器である和太鼓を巧みに操るという点についてですが、和太鼓にはドラムとは違うダイナミズムがあるので、一打一打に情熱を注ぎこむことでぐんと演奏力の幅が広げられると思います。そこに奥ゆかしさや妖艶さ、粋な男性像や花魁のような女性像などの表現をプラスすると、まさに日本人ならではのオリジナリティを体現できるのではないかなと。けれど決してそれだけではなく、常に新しいアイデアを積極的に盛り込んでいることも事実です。衣装はコシノジュンコさんが手がけてくださっていますが、そのデザインもまた斬新かつ刺激的ですよね。ショー中は常に肌を見せ、筋肉を見せ、色気を醸し出すという。モダンなエッセンスを所々に散りばめることで、視覚的なアプローチも果たしていると思います。そういったバランスのとれた多様性もまた、海外のお客さんを惹き付ける理由の1つなのかもしれません。







―「常に新しいアイデアを」とのことですが、ひらめきはどう生まれるのですか。
メンバー全員がとても個性豊かで、それぞれが違う背景や得意分野を持っているんです。実際、ここまでダイナミックな動きを取り入れる和太鼓演奏グループはほかにいないと思うんですけど、そういった身体動作のアイデアは新体操出身のメンバーから出されたものなんですよ。僕達は年齢もばらばらですが、日本では共同生活を送っているため、メンバーであると同時に、家族のような存在でもあるんです。そういった関係性もまた、お互いの意見を言い、耳を向け合うという環境を自然なものにしていると思います。そして何より、演出家でもあるTAOの代表の影響は非常に大きいです。彼は和太鼓経験者ではありませんが、だからこそ僕達では考えもつかないアイデアを、全く別の視点から提案できるんだと思います。今回の公演ではセグウェイを披露していますが、普通なら和太鼓とセグウェイなんてマッチングしないですよね(笑)。けれど実際に取り入れてみて面白いなと。それならば融合させてみようとなりまして。実際に今回のお客さんの反応もとても良かったので、楽しんでいただけたかなと思います。あくまで和太鼓ありきのショーですが、そういった無限にも近いTAOの柔軟性は、これからも大切にしていきたい部分です。

―和太鼓という伝統楽器を新しいものへと創造する難しさ、葛藤はありますか。
ありますね。これは和太鼓の特性なのですが、ドラムとは違い、音色が似ているため、アイデアを出し合う段階でほかと似たような構成になってしまうことがよくあるんです。なので、まずはどういったことをすることで新しくなるのかを追及することに重点を置いています。演目によって演奏方法を変えたり、緩急をつけたり、ほかの和楽器との重なりを工夫してみたり。先にもお話したように、僕達はあくまで和太鼓演奏グループなので、和太鼓の伝統性は守りたいし、だからと言って何も開拓できないまま同じことを繰り返すのも違う。けれど、そもそも和太鼓が持たれがちなイメージそのものを覆すという意味では、TAOのショーには十分な説得力があると思います。だからこそ、TAOメンバーの1人として、和太鼓の新たな可能性を探り続けていきたいです。

―お話ありがとうございました。では最後にbits読者の皆さんに、メッセージをお願いします。
TAOのショーを観たことがない方はもちろん、すでにある方も何度も公演にきていただけると嬉しいです。常に新しいことを模索し、実現しているので、何度観てもまた違うTAOの表情、そして新感覚のショーに出会えると思います。同じパフォーマンスばかりしていると、お客さんは退屈してしまうでしょうし、それは僕達も一緒なので(笑)。世界に通じる、そして一人一人の心に響く、最高のエンターテインメントをお届けします。





Biography

いけごし ひろやす (DRUM TAO)
小学3年生から和太鼓に触れるように。高校時代、友人に誘われて観たTAOの公演に衝撃を受け、すぐにオーディションを受け合格。「TAOは自分の人生そのもの。今はまだメンバー歴7年目の中堅ですが、より存在感を放つメインパフォーマーとして成長していきたいです」