待望の新作『R100』
好感触のワールドプレミア公開
Hitoshi Matsumoto
映画監督/お笑い芸人 松本人志(2013年10月4日記事)

"みんなが喜んでくれるならまた映画を作りたい"

平凡なサラリーマン片山貴文には人には言えない秘密があった。それは1年間途中退会禁止の秘密クラブ「ボンテージ」に入会していること。はじめは日常生活に突如現れる女王様たちからの責めを喜んで受けていた片山だったがやがて、彼女たちが職場や家庭にまで現れるようになり…。
9月5日から11日間にわたり行なわれたトロント国際映画祭で、12日にワールドプレミア公開された松本人志監督の新作『R100』。同映画祭にはこれまで第一作目の監督作品となる『大日本人』(07年)、そして『しんぼる』(09年)が招待されているが、3度目の招待作品となる本作で松本監督の初来場が実現した。

レッドカーペットで報道陣に囲まれる松本監督

今回はミッドナイトマッドネス部門での公開で上映開始時刻は23時59分。にも関わらず、上映会場のライアソン・シアター前には、舞台挨拶に訪れる松本監督、俳優の大森南明さんと渡部篤郎さんをひと目見ようと、地元ファンらによる長蛇の列が出来ていた。

Pizza e Pazzi 松本監督らが会場に到着したのは上映予定時間の30分ほど前。"松っちゃ〜ん"という大歓声の中、共演者2人と共に、ゆっくりとレッドカーペットを歩く松本監督。現地報道陣が「トロント国際映画祭へようこそ!ユニークなストーリーでしたね」と彼らを取り囲んだ。「こちらこそ、お招きいただいてありがとうございます。今回は(既存の概念である)映画をぶっ壊すようなというそんなパワーのある作品が作れたと思っています」と話した松本監督は、「映画は人それぞれいろいろ楽しみ方があるので、それぞれの人に印象に残るような作品になってくれたらそれで十分ですね」と公開前の心境を伝えて報道陣を後にした。
続いて「トロント映画祭についてどういう感想をお持ちですか?」と、マイクを向けられたのは主演の大森さん。「非常に盛り上がっていてびっくりしています」とコメントをし、松本監督の演出について問われると、「僕にとっても憧れの人だったので声をかけていただいて感謝しています。監督からすごく丁寧にシーンごとに説明をいただき、現場は和気合いあいながら、粛々と進んでいきましたね」と語った。それぞれ報道陣の質問に答えた後、3人はファンらの掛け声に応じ、上映時間ぎりぎりまでサインや写真の求めに応じていた。

「R100」の松本人志監督(中央)、渡部篤郎さん(左)、大森南朋さん(右)

レッドカーペットの興奮冷めやらぬ満席の会場。突如、沸き起こる喚声にスクリーンに目を向けると、「グッドミッドナイト〜!」と、ボンデージ姿の"女王様"と一緒にステージに現れた松本監督と出演者の2人。舞台挨拶の進行役により、監督の誕生日が9月8日であったことを知らされると、"松っちゃんおめでとう"の言葉に続き、ハッピーバースデーの大合唱が始まった。照れながらも終始笑顔の松本監督。カナダ英語の表現「EH?」を連発して会場からのお祝いに応える松本監督に、客席はさらに大爆 笑。ワールドプレミア上映へのボルテージは最高潮に達した。 

上映前の舞台挨拶で女王様から押し置きを受ける松本監督(中央)

大森南朋さんと共演する松本監督(右)。本作では1シーンにのみ警察役で出演

「何も考えず、単純にこの映画を体験してもらいたい」と松本監督が語る『R100』の構想は、前作『さや侍』が招待されたフランスのシネマティーク・フランシーズで行なわれた映画祭に遡る。次回作について問われた監督が、「次回はもっとハチャメチャなもの、例えば80歳以下は観賞が許されないような映画を撮りたいね」という発言したことが発端。

80という数字は中途半端だという理由からタイトルを『R100』(100歳以上対象)とし、監督がテレビやラジオ番組で度々口にする独自のSM哲学を軸にしたストーリーを作り上げた。劇中には松本監督がバラエティ番組で見せる"笑い"が散りばめれており、上映途中に何度も笑いが起こる。英語字幕で先に台詞を理解したカナダ人たちの笑い声で日本語の音声が聞こえないほども度々。エンドロールの後、松本監督、大森南朋さん、渡部篤郎さんがステージに再び登場した。松本監督は、「すごく楽しん でもらえたみたいでうれしいです」。続けて「ここに来られている人はみなさん100歳以上なんですかね。そんなことを思ってしまうくらい楽しんでいただいて…。ちょっと笑いすぎじゃないかと思うくらいね。

日本では映画を見る時、笑いなんて起きないほど静かですので、それを思うと、こういうリアクションっていうのは、作り手としてすごくありがたいですよね」とワールドプレミア上映での好感触に満足気な様子を見せた。そして、主演の大森南朋さんは、「監督とお仕事をさせていだだくことに喜びを感じてやらせていただきました。最後、ああいうことになるとは予想していませんでしたけど」と、驚きの結末についてコメント。その後マイクが渡部篤郎さんに向けられると、松本監督が、「(渡部さんが)一番普通の役かと思っていたんですけど、今日見てみたら一番クレイジーやったね」と割り込み、渡部さんはそれに笑顔で返すと、「本当に監督の作品が大好きでして、こういう形で参加できて光栄に思っています」と、念願叶っての出演であったことをほのめかした。松本監督と出演者らの挨拶の後はQ&Aの時間が設けられた。待ってました! とばかりに挙手する観客。

「ボンデージクラブに入りたいですか?」
「実際の人物を参考にしてキャラクター作りをしたのですか?」
などの率直な質問から 「現在4歳になるお子さんが作品を見ることに関してどう思いますか?」
など、プライベートに関する質問までが投げかけられる。プライベートな質問にも「日本ではこの映画はR15指定なので、あと12年間は見られないので大丈夫です(笑)」と答えた松本監督。長年のコンビである相方の浜田雅功さんはまだ作品を見ていないことにも触れ、「彼の頭では理解不可能なんじゃないですかね〜」とダウンタウンの松っちゃんらしい発言も。そして、「機会があれば…。みんなが喜んでくれるならまた映画を作りたいかなという感じです。僕は今50歳なんですが、あと50年経った時に、みんなを困らせるような映画を作りたいと思いますね」と、今後も映画作りを続ける意欲を見せる言葉も飛び出した。松本監督自身、「作った僕もまだ完全に分かりきれていない。まだ僕、100歳になっていないので」と解釈を濁している『R100』の北米公開は2014年に決定。100歳以下の私たちに理解はできなくとも、楽しめる映画であることは間違いない



 
 


Biography

まつもと ひとし

兵庫県尼崎市出身。1982年、吉本総合芸能学院(NSC)1 期生として入学。共に入学した友人の浜田雅功さんと漫才コンビを結成。1987年、毎日放送「4時ですよーだ」 で人気を獲得し、88年、「夢で遭えたら」で東京進出。その後、数々のバラエティ番組に出演する。今回の「R100」は、第一回監督作品「大日本人」(2007)、「しんぼる」(2009)、「さや侍」(2011)に続き、4作品目となる。