ディズニーのショーは一瞬が全て
Isao Matsuura
プロ・フィギュアスケーター/振付師 松浦 功(2016年3月4日記事)

17年間で5,000回公演 情熱と偶然の奇跡

世界中で人々に夢と希望と笑顔をふりまき続けている、ディズニーのアイススケートショー「ディズニー・オン・アイス」。大人も子どもも楽しめるプログラムは不動の人気を誇っている。トロントでは、3月17日から4日間に亘りロジャース・センターで「100 Years of Magic」と題したショーが公演される予定だ。主役キャストの中で唯一日本人の松浦功さんは、1999年に主役ピノキオに抜擢されて以来、氷上でパフォーマンスを続け、今年で17年目を迎える。そんな彼にお話を伺った。


―「ディズニー・オン・アイス」で長いキャリアをお持ちですが、まずはフィギュアスケートとの出会いを教えてください
「氷に初めて乗ったのは10歳の時でした。それまでは野球少年だったのですが、ある日、父にスケートに連れて行ってもらい、氷上に乗った途端、あのスピード感に魅了されて、『絶対にやらせてほしい』と親に頼み込んだんです」

―松浦さんは岡山県のご出身だそうですね
「今でこそ岡山県は、高橋大輔選手などを輩出していて男子フィギュア大国みたいになっていますけど、当時、選手は一人もいなかったんですよ。フィギュア教室で教えておられた粟井幸子コーチが、『真剣にやるならコーチしましょう』と覚悟を決めてくださいました」

—その当時に学んだことで、今でも生きていることはありますか?
「粟井コーチから常に言われていたことは、『周りへの感謝を忘れない』ということでした。その言葉は僕の中に浸み込んでいて、滑る上でのベースになっています」

—全日本ジュニア選手権など、さまざまな大会に挑戦されていますよね
「ええ、でも、僕は心に波風が立ちやすい方で、常に心の葛藤がありました。成績の低迷が続いていた大学4年の時、思い切って世界のトップの先生に習おうと、カリフォルニアにスケート留学することにしたんです。幸運にも、メダリストのミッシェル・クワン選手などを育てたフランク・キャロルコーチに学ぶ機会を得ました」

—そこからディズニーとの出会いへとつながるのですか?
「いいえ、実はその成績が低迷していた時期に、隠れてディズニーのオーディションを受けに行っていたんです。ちょうど『ディズニー・オン・アイス』が日本公演に来ていたのですが、コネもないし、どうしたら良いのか分からなかったので、会場に直接電話をかけて『オーディションを受けさせてください!』(笑)と頼み込みました」



—当たって砕けろ、ですね
「まだ英語もしゃべれませんでした。でも、相当思いつめていたんですね。オーディションの後、採用の場合は翌年4月以降からと言われたので、その時に現役を続けるかどうか決めようと思いました。その前にカリフォルニアでキャロルコーチに教えを請うことにしたんです」

—なるほど。留学の成果はありましたか?
「技術的には見違えるくらい変化がありました。それで、もう1年続けようと思ったその矢先にディズニーから採用の連絡が来たんです。留学先でかつて世界トップクラスの選手だった方と知り合ったのですが、ちょうどその採用の連絡が来た時と、その選手の方が岡山に来てくださった時と偶然重なりました。そこで彼にどうすべきかを相談したんです。そうしたら彼はこう言いました。『たとえ君が一年がんばって全日本チャンピオンになったからといって、君の人生は何も変わらないだろう。ショーの世界に行けば勉強できることがまだまだたくさんあると思う』。その言葉で、ディズニーへ行く決心をしました」

—ディズニーに入ってすぐに主役のピノキオに抜擢されましたね
「それはもう、いろいろな偶然が重なって主役をいただけることになったんです。どんなに素晴らしい選手でも1年目に主役になることはないと聞いていたので、勉強しながら上へ行けたらいいなと思っていました。当時はスター選手がたくさんいましたから、舞台経験もない僕が主役に選ばれたことには、僕が一番驚きました」

—長期間にわたるワールドツアーで一番大変なことは何ですか?
「ショーは一瞬が全てで、お客様は毎日違います。ですから、大きなことも小さなことも毎日同じクオリティで続けていくことが大変といえば大変ですね。人間ですから、モチベーションが揺らぐこともあります。全力疾走するので、毎日続けるのは体力的にもつらい。そんな時は、今ここに立てるということがどんなに奇跡的なことかを自分に言い聞かせます。“今”というのは、情熱を持って挑戦し続けてきたことと偶然が重なって生まれた“奇跡”だと思うんです。それに感謝しています」

—素敵な発想ですね。ところで、今年からショーが新しくなったと聞きました
「『Frozen(邦題:アナと雪の女王)』のフルストーリーが楽しめる構成になりました。もちろん、人気キャラクターも総出演します。僕のピノキオは三回転ジャンプ2回、スピン2種類、その他トリックも入れて技術的な部分も楽しんでもらえる内容です。セットや照明も一新しましたので期待してください。個人的には、今年で公演数5,000回を迎えます」

—公演数5,000回! これからも頑張ってください。最後に読者へのメッセージをお願いします
「やってできないことはありません。情熱とやる気さえあれば、なんでも叶うんだということを僕はディズニーに入って実感しました。僕の家はサラリーマン家庭で特別裕福なわけではありません。挑戦していくうちに、多くの方々がさまざまな形でサポートしてくださいました。夢があるなら、できるできないを最初に考えるのではなく、それに向かって行動していくことが大切だと思います」。


Disney on Ice celebrates 100 years of Magic 公演スケジュール
日 時:3月17日(木)15時~、19時~
       18日(金)11時~、19時~
       19日(土)11時~、15時~、19時~
       20日(日)11時~、15時~
場 所:Rogers Centre( 1 Blue Jays Way)
入場料:$28~
※詳細はDisneyOnIce.caまたは1-855-985-5000

 
 


Biography

まつうら いさお

岡山県出身。10歳でスケートを始める。1993年第61回全日本ジュニア選手権5位。95年西日本大会優勝。96年国体2位。99年にカリフォルニアへスケート留学した後、同年に行なわれたディズニー・オン・アイスの"75 Years of Disney Magic"で日本人として初めて主役(ピノキオ)に抜擢される。現在も世界各国で公演活動を行なう傍ら、振付師としても活動中。