トロント国際映画祭に高畑勲監督が登場!
Isao Takahata
映画監督 高畑勲 (2014年10月3日記事)

トロント国際映画祭にて高畑勲監督が『かぐや姫の物語』の一般上映会に登場し、舞台挨拶とQ&Aを行なった。ここでは、10月17日に行なわれる特別上映会と合わせてQ&Aを紹介する。

日本に古来から伝わる「竹取物語」を題材にしたスタジオジブリ制作の映画『かぐや姫の物語』。高畑勲監督の新作は、『ホーホケキョ となりの山田くん』から実に14年ぶりで、この日は大勢のファンがエルギン&ウィンター・ガーデン・シアターに駆けつけた。上映後にもほとんどの観客が席を立つことはなく、ステージに登場した高畑監督を拍手で賛賞。熱気溢れる会場で、高畑監督は観客からの質問に答えた。

―この作品を作ろうと思ったきっかけ、そして今後、日本の古典的な物語を映画化する予定があるのか教えてください

「この話は日本人なら誰でも知っている昔話。しかし、読んでおもしろいと思っている人は半分くらいだと思うんです。実際に”かぐや姫って一体どんな人なの?“という疑問にはっきりと答えられる人は少ないんじゃないかと思ったんです。”竹取物話をこんな風にすればおもしろくなるんじゃないかな?“と思いついたのは50年くらい前のことでした。その時から今回の作品までの間には、やりたいこともたくさんあって…。今回の作品は”かぐや姫というのは実はこういう人だったんだよ“という自分のアイデアを伝えるいい機会だと思って作りました。古代の物語の映画化については、この作品の前に、日本の歴史的な物語『平家物語』を題材にした作品を作ろうという企画がありました。ですが、途中で作ることは不可能だと判断しました」


▲9月5日、エルギン&ウィンター・ガーデン・シアターにて
観客からの質問に答える高畑勲監督


―古代から伝わる物語を題材にすることに躊躇(ちゅうちょ)はありませんでしたか?

「いえ、全くなかったです(笑:会場一同)。原作者の気持ちを汲み取ろうということは自分の中にはなかったからです。ですので、この作品には現代人である自分の解釈を付け加えています。そういう意味で、平安時代を舞台にした数多くの物語とはずいぶん雰囲気が違っていると思います」

―今回の作品で一番チャレンジだったところはどこでしたか?

「一番難しかったのはいろいろな人と手を組んで仕事をすることでした。映画製作は1人ではできないので。素晴らしい才能の持ち主、そういうたくさんの人たちと協力し合って作っていくところでしたね」

―日本のテレビ番組で見たのですが、高畑監督は、画が出来てからそれに声を当てていく”アフレコ(=アフター・レコーディング)“ではなく、声を録音してからそこに画を合わせていく”プレスコ(=プレ・レコーディング)“という方法をとられていると知りました。声に合わせて描いていくのは難しいことなのではないですか?

「アメリカで作られているアニメーションは、このプレスコの手法で作られています。特別難しいことではありません。僕はプレスコの利点(声優の自然な演技)を生かしたいと思って採用しています」

―製作過程でコンピュータはどれくらい使いましたか?

「たくさん使いました(笑:会場一同)。画用紙にさっと絵の具で描いた感を最大限に生かすために使いました。描いた勢いなどを効果的に出すためという理由からです」

―日本人ではない人たちにとって理解が難しいと思われるような文化的な要素はこの物語の中に入っていましたか?

「(うつむき加減で)うーん…。確かに日本にいるお客さんとここにいるお客さんとでは感覚の違いはあるかと思います…が、文化の違いでストーリーの重要なポイントが抜けているとかそういうことはないと思います。劇中にたけのこが生えている竹やぶが出てきますが、あれは昔の竹やぶを描いています。現在、我々が食べているたけのこは、近年中国から入ってきたたけのこ。ですから、日本人の方の中には”あれ? この竹の描き方はちょっと違うのでは?“など疑問を持った人もあるかと思いますが、(違和感を感じているとすれば)、それは私の作品はその時代に忠実に描いているからです。日本人でもたくさん知らないことがあるんです(笑:会場一同)。あと、もう一点。かぐや姫が座っているところに掛かっている簾ですが、ほとんどの日本の映画では、外から見て中が透けて見えるように作っています。本来の簾の役割は、自分の姿は外に見えないけれど、中からは外の様子が見えるという理由で掛けられているもの。日本の映画では透けるようにして現しているのは、それは視覚的な美しさという理由からそうなっているだけで、この映画の方が正しいんです。ほとんどの日本人は気づかなかったかもしれませんが」

Ⓒ2013 Hatake Jimusho – GNDHDDTK

―宮崎駿監督の引退後、スタジオジブリの今後はどうなっていくと思いますか? また、高畑監督の今後のプロジェクトについて聞かせてください

「前作を作ったのは14年ほど前。それからの間、いろんなことをしていまして その間、スタジオジブリの運営には、直接関わっていませんでした。僕の今後としては、製作する資金、自分の描く力、体力、頭がしっかりしているという条件が揃えれば、作れるかもしれないけど、作れない可能性も大きいと思う。それは避けられない事実であるので…。アイデアはたくさんあります。すごくラッキーであれば、作れる可能性はあると思います」


『The Tale of The Princess Kaguya(かぐや姫の物語)』
@TIFF Bell Light Box


Ⓒ2013 Hatake Jimusho – GNDHDDTK

今は昔、竹取の翁といふ者ありけり。野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり…で始まる「竹取物語」を題材にした高畑勲監督の最新作。地球で生まれたかぐや姫は、なぜ、月へ帰っていったのか、知られざるかぐや姫の心情とミステリアスな運命の物語を水彩画のような優しいタッチで描いた感動作。

■上映時間:137分
■声の出演:朝倉あき、高倉健吾、地井武男、宮本信子 ほか

【日 時】10月17日(金)
【場 所】TIFF Bell Light Box(350 King St. W.)
【チケット】10月8日(水)に発売開始
【連絡先】416-599-8433、1-888-599-8433
【サイト】www.tiff.net
※チケットの情報は変更される場合があります。


 
 


Biography

たかはた いさお


1935年生まれ。59年に東京大学仏文科卒業後、東映動画(現:東映アニメーション)入社。テレビ「狼少年ケン」で初演出。劇場用映画「太陽の王子ホルスの大冒険」で初監督。以後、 テレビ番組「アルプスの少女ハイジ」、「母をたずねて三千里」、「赤毛のアン」の演出、映画監督作品としては「セロ弾きのゴーシュ」、「火垂るの墓」、「おもひでぽろぽろ」、「平成狸合戦ぽんぽこ」、「ホーホケキョとなりの山田くん」など。98年秋には紫綬褒章を受章。
【『かぐや姫の物語』オフィシャルサイト】kaguyahime-monogatari.jp