日本とユダヤ文化のMix   旅するストリートミュージック
Jinta-la-Mvta
アコースティックバンド ジンタらムータ(2016年9月16日記事)
8月18日から21日にかけてマーカムのユニオンビルで開催された「Markham Jazz Festival」。このイベントの最終日に、軽快なテンポとひときわ華やかな衣装で観客の目を引くバンドがいた。それが、日本から参加したチンドン屋スタイルのアコースティックバンド「ジンタらムータ」だ。チンドンのみならず、東欧系ユダヤ人の音楽であるクレズマーやロックなど多彩な音楽を演奏する彼ら。リズミカルでありながらも、どこか哀愁漂い、聴く人の心の奥底まで染みいるメロディを奏でて、観客から大きな喝采を浴びていた。9月上旬までケベック州ランティエ、米ハートフォードやボストンを廻り、さらにトロントではクレズマーの祭典「Ashkenaz Festival」に参加するなど北米ツアーを行なった「ジンタらムータ」。ツアー中の忙しい中で、クラリネット奏者でバンドリーダーでもある大熊ワタル氏にお話を伺った。


▲左から菱沼尚生氏、こぐれみわぞう氏、大熊ワタル氏、阿部万里江氏

―「ジンタらムータ」結成の経緯を教えてください

「1994年から『シカラムータ』という、チンドン音楽をバックボーンにしながらジャズやロックをミックスしたコンセプトのバンドで活動を行なっていましたが、段々人数が増えて大きなバンドになってきて…。それで、もう少し機動力のあるものをやりたくなったので、出前チームのような感じで『ジンタらムータ』を作りました。それが2004年頃です」

―「ジンタらムータ」のコンサートは、大熊さんのクラリネットの軽快な音色が特に耳に残りますが、クラリネットを始めたのはいつ頃ですか?


「僕がクラリネットを始めたのが80年代です。その前からパンクの影響を受けて電気楽器をやっていたのですが、日本でチンドン屋さんに出会いました。ほぼ同じ頃に、色々な世界の音楽が紹介されるようになっていて、クレズマーの録音物が初めて日本に入ってきて、もう一目ぼれでした。チンドンもそうですが、クレズマーも哀愁があり、クラリネットが大活躍する音楽なので、本当に自然に親しみを感じて始めました。 当時、日本ではクレズマーという言葉すら誰も知りませんでした。でも次第にLPやCDも輸入されるようになって、ユダヤ系の移民の人たちの音楽なんだという背景が分かってくるようになり、レパートリーが増えていきました」

―「ジンタらムータ」はクレズマーだけでなく、さまざまなジャンルの楽曲を演奏されていますね

「もともと世界中のストリートミュージックが好きだったので。また、僕自身がロックとジャズで育ったので、色々な良い所をミックスしたという感じです」

—今回の北米ツアーを行なうことになったきっかけは何ですか?

「Ashkenaz Festivalのプロデューサーからオファーを頂いたのがきっかけです。去年、ニューヨークにある現存最古のイディッシュ劇場の100周年を祝うクレズマーフェスティバル『KulturfestNYC』に参加して、それで今回呼ばれることになりました。KulturfestNYCには、劇場のアートディレクターに声を掛けてもらいました。2013年がワルシャワ・ゲットー蜂起70周年だったのですが、その関係で彼がレクチャーとコンサートのために日本に来られたんです。その時に一緒に即席のセッションをして、とても喜んで頂きました」


—海外公演での観客の反応は、日本でのものとは違いますか?

「ヨーロッパではこれまでに何回かコンサートを行なってきたのですが、アメリカは去年初めて行きました。人間性がとてもフランクですね。やはりクレズマーを聴きに来る人たちは、自分たちのルーツというか、ユダヤの人たちが沢山いるので、大好評でした。”あ、ここに一番来るべきだったな”と思いましたね。
クレズマーは、リバイバルまでの数十年は親戚の行事だけで演奏されるようなある種過去のダサい音楽だったんですが、80年代にクレズマー・リバイバルが本格化して、しばらくはとても新鮮だったんです。それから20年、30年経って、今はわりとシリアスに”由緒正しく演奏する”という雰囲気になってきているんですが、僕らはチンドン太鼓があって、誰も聞いたことのないスタイルなのですごく喜んでもらっています」

—今回初めてカナダに来られた印象はどうですか?

「色々なルーツの人たちが混ざって住んでいる所だという印象を受けました。クレズマー自体が移動する、旅をする音楽なんですよね。僕らもずっと旅を続けていければと思います」

—「ジンタらムータ」の今後の活動の展望を教えてください

「作品を作って、もっと色々なアピールをしていきたいです。長年『シカラムータ』を中心にやってきて、『ジンタらムータ』では作品を作るというモチベーションはあまりなかったのですが、最近はクレズマーを本格的にやるバンドとしても知られてきました。まだ発表していないレパートリーがたくさんあるので、 それらを形にして広がっていきたいです」。



Biography

Jinta-la-Mvta
2004年、「シカラムータ」のメンバーが機動的な活動を行なうために結成されたアコースティックバンド。クラリネット奏者の大熊ワタル氏と、ちんどん奏者・歌手のこぐれみわぞう氏を中心としたメンバーで、チンドン、ジャズ、クレズマー、ロックなど多彩なジャンルの曲を演奏する。2014年に、初のCD『怒りの日 DIES IRAE』をリリース。

サイト:www.cicala-mvta.com