笑いのツボは世界共通
Katsura Sunshine
落語家 桂 三輝(2013年9月20日記事)

北米に広めたい日本の古典話芸

映画、ファッション、芸術、食べ物…と、北米における日本文化に対する関心度はますます高まるばかり。そんな中で、カナダ人落語家の桂三輝(サンシャイン)さんは、日本の古典芸能を広める活動に貢献している。今回は、10月5日にトロントで最終日を迎える「KATSURA SUNSHINE Japanese Rakugo Comedy in English」と題した高座で北米20都市を公演中の彼に話を伺う機会を得た。

― トロントのご出身とのことですが、落語家になる前は何をされていたんでか?

「日本に行く前はトロント大学で古典演劇を学び、古典ギリシャの喜劇を翻訳したミュージカルを制作していました。その頃から日本には興味があったのですが、日本に行ったのは1999年です。落語を始めたのは、日本に住み始めて5年目の時でした。焼き鳥屋に食事に来ていた人たちの前で披露したのが最初です。
トロントでミュージカルの演出家として成功していたので、『なぜ今までのキャリアを捨てて、全く違う世界に入ったのか?』とよく聞かれるんですが、私にとっては大学で学んだ古典、喜劇など、すべてが落語につながっています」

Pizza e Pazzi ― 日本滞在が14年になるんですね。到着当初の頃と比べて大きく変わった点はありますか?

「日本人の美意識が理解できるようになったことですかね。渋さ、粋、侘び、これらの考え方言葉の意味が分かるようになったと思います。
 言葉はもちろんですが、このような概念は私が育った西洋の文化にはありません。例えば、ヨーロッパ製のお皿は、丸い形なら完璧に丸。色も白なら真っ白。模様が描いてあるなら詳細まで描いてある。ところが日本の陶磁器などは、お皿の形は丸くてもちょっと欠けていたり。色もピカピカした色ではなく抑え目の色だったり、絵柄もちょこっとだけしか描かれていなかったり…。実は、初めてそれらを目にした時、『あれ? 途中で製作をあきらめてしまったのかな?』と思ったんですよ。完璧ではなかったから。でも、日本に住んでいる間に、だんだん日本の美しいと思う感覚が分かるようになって、日本人の美意識を素晴らしいと感じるようになりました」

― 桂文枝師匠にはどのように弟子入りしたんですか?

「08年のことになるのですが、師匠(当時は桂三枝)に会うために3時間楽屋の外で師匠を待っていました。弟子入りを申し出たところ、『来週も来なさい』と言われ、それを続けて8か月が経った頃、やっとお許しを頂きました。その時のうれしさは今でも忘れられません!三輝という名前は、日本だけではなく海外でも活動することを想定して、日本でも海外でも通用する名前をと、師匠に付けていただきました」

― 今回の北米ツアーは何がきっかけとなって実現したんですか?

「一昨年、在カナダ日本国大使館主催で、オタワにあるカナダの国立劇場で公演を行なったんです。その際に、来年は他の都市も周ってみたい、と思い大使館の方に相談させていただいたのが縁です。在カナダ日本国大使館の文化コミュニケーション部、そして、大使の多大なる援助も加わり、今回のような大規模なツアーが決まりました。師匠にもとても喜んでいただいたので、恥をかかせないように一生懸命頑張らせていただこうと思っています。
また、今回の北米ツアーの発表と時を同じくして、8月7日にカナダ文化大使に就任しました。大使としても、400年前から続いている日本が誇る伝統話芸をカナダやアメリカに紹介していこうと思っています」

8月に行なわれた「北米巡回公演及びカナダ文化大使就任発表会見」にて。桂文枝師匠とともに

― 日本人以外の観客の前で落語を披露する際に工夫している点はありますか?

「はじめは西洋人に合わせて落語をアレンジする必要があると思っていましたが、だんだんやっていくうちに、出来るだけ日本の落語のまま(直訳)の方がカナダでもアメリカでウケることがわかってきました。ですので、観客に合わせて落語を変える必要はないように感じています。
 長く続いている日本の話芸と、師匠の創作落語の魅力を信じていれば、英語でやっても、カナダでも、アメリカであっても、世界中どこでやっても通用すると私は思っています」

― 日本と北米で笑いのツボは異なりますか?

「落語を英語でやり始めてから、日本人の笑いのツボとカナダやアメリカの観客の笑いのツボがどれほど似ているかということに気づきました。なるべく直訳を心がけていますが、落語には現代の日本人でも使わない、難しい古い言葉がありますよね? そういう言葉は省略していますね」


― トロント公演を楽しみにしているファンへメッセージをお願いします

「師匠にトロント公演の会場であるザ・エルギン・ウィンター・ガーデン・シターの写真を見せたところ、『こんなに豪華な劇場で落語が演じられたことは今までにないんじゃないか』と言ってくださいました。この劇場は20年前から私の憧れの舞台であり、いつか立ってみたいと思っていた場所でもあります。私の大きな夢の1つが実現することになりました! みなさんにとってもこのような劇場で落語が見られることは滅多にない機会だと思います。また、大きな劇場なので、収容人数は1000人と言われています。読者の方は友達を10人、20人と誘って来てください。師匠にも、『1000人の劇場か。お前大丈夫か? 絶対爆笑とれ!』と言われてきました。海外での活躍を期待して"サンシャイン"と名づけてくれた師匠のためにも、日本に帰った時に『大成功でした!』と報告したいと思っています。ご協力よろしくお願いします」 。





 
 


Biography

かつら サンシャイン

Pizza e Pazzi

トロント出身の上方落語家。99年より日本に滞在し、2008年、桂文枝師匠に弟子入り。各地で公演、テレビ出演などで活躍中。地域活性化を指針とする吉本興業による「あなたの街に" 住みます" プロジェクト」で、2011年11月より三重県伊勢市の古民家に居住している。地域のイベントなどにも多数出演。2013年8月、カナダ文化大使就任。

【トロント公演のチケット】
www.heritagetrust.on.ca/ewg
【オフィシャルブログ】
katsurasunshine.wordpress.com