映画監督は贅沢な仕事
Kazuhiro Teranishi
映画監督 寺西 一浩 (2015年10月2日記事)
▲左からKEIGO さん、久保田秀敏さん、寺西一浩監督、西村一輝さん、矢吹春奈さん
今年は8月27日から9月7日まで開催されていた第39回モントリオール世界映画祭。同映画祭で上映された日本人監督作品21本の中に寺西一浩監督の最新作『新宿ミッドナイトベイビー』が選ばれた。映画祭初日には昨年に続き2年連続で招待された寺西監督はじめ出演者の久保田秀敏さん、矢吹春奈さん、KEIGOさん、西村一輝さんらがレッドカーペットを歩き、開幕に華を添えた。


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『新宿ミッドナイトベイビー』は、寺西監督が執筆したベストセラー小説で、これまでに2度、舞台化されている。原作ではホストを中心にした物語だが、時代性を捉え、同性婚を中心にしたストーリーに変更して映画化に臨んだ。今回は、監督と出演者4人に話を伺う機会を得た。

寺西さん(以下敬称略)「時代に沿った社会問題を作品に取り入れようと思い、アメリカが全州で同性婚が認められたあおりを受け、日本も徐々に動きだしているという状況を踏まえて、同性婚に焦点を当てました」

そして、人を愛するとは?また、人の命の尊さを考えてもらいたかったということから、同性婚を軸に子どもの売買というショッキングな要素が絡められている。

同性婚が認められていない現代の日本で、愛する男性と結婚したいと願う主人公アキラを務めたのは久保田秀俊さん。監督からは「役に対して構えることなく、アキラが彼の中にすっと憑依したような感じでした」とその演技力はお墨付きだ。

久保田「主演というのは責任が重いですが、その重責を負ってでもやってみたいと思い、この役を受けさせていただきました。撮影期間は全体で5日間。そのうち僕の撮影日数は3日間。その短い中で集中してやりきりました。濡れ場のシーンは今回が初めてだったのですが、役に入り込めていたので全く抵抗がなかったです」

そしてその同性愛者のアキラを兄に持つ妹を演じたのが矢吹春奈さんだ。

矢吹「同性愛者の兄を持つ身としてはどういう気持ちなのか、私自身だったらどう思うか?を考えながら、彼が愛する人と幸せそうにしていれば、それでOKかな、と役に同意しながら演じました。日本では現在、異性同士でなければ結婚ができないので、いつ頃になったら同性婚が認められるようになるんだろう、と作品を通して考えさせられました。この作品は今の時代だから作ることが出来た作品。同性婚が認められた後では、それが普通になるわけですから。この作品は、未来の人たちにとって、“同性婚が認められていなかった時代の映画”として、語り継がれる作品になるのではないか、とも思いますね」

そしてストーリーテラーとしての役割を果たすミステリアスな男性、ルイ役には脚本を読んだ時からこの役に1番興味が惹かれたというKEIGOさんが挑んだ。


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KEIGO「僕の想像を超えるほど、ミステリアスな役。愛情に屈折しているような面もあったり…。全然僕とは違うと思いながらも、僕にも同じ面がわずかながらあるような、そういう気持ちがして、一番興味があるのはこの役です、と監督に伝えてこの役をもらいました。今回の映画によって、今の日本の文化や常識、価値観が変わるきっかけになれば…という思いがあります」

そして元オセロの中島知子さん扮する少子化担当大臣のスキャンダルを暴く記者役で出演していたのが西村一輝さん。映画出演は初めてという彼は、自身の演技をスクリーンで見ての感想に、「まだまだ改善点があります」と、厳しい自己評価をしていたが、声の良さ、現場での対応力を見込まれ、寺西監督の次回作には主演が決まっている。

活躍が期待される4人の若手俳優を起用して制作された『新宿ミッドナイトベイビー』。モントリオール世界映画祭への招待に際して監督は、喜びとともに安堵も感じていると打ち明けた。

寺西「監督として預かった以上、出てもらった俳優の方々をどこかのステージにあげないといけない、というプレッシャーはあります。今回、モントリオール世界映画祭の正式招待に選ばれて、それぞれ俳優としてステップアップができたのではないか、と思っています」

そして最後に映画監督になって良かったと思うことを続けた。

寺西「監督という仕事は、この一瞬、今、目の前にいる好きな人、気になる人を、自分の感性で自分の画として撮れる、すごく贅沢な仕事だな、って思います。自分が80歳になった時に、35歳の時のことを振り返って、こういう人が周りにいて、こういう映画を撮っていたな…と思い返せたら素敵ですよね。僕は1年に1本映画を撮っていこうと思っています。そして1年に1回映画祭に行って、海外で国際交流をして…。これを続ければ10年後にもっといろんなことができるとも思います。監督という仕事に感謝しています」

そんな寺西監督の次回作の原作は少女漫画。新境地の作品にも期待したい。



 
 


Biography

てらにし かずひろ

1979年生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。慶應義塾大学在学中に出版したエッセイ『ありがとう眞紀子さん』で文壇デビュー。2012年、『女優』で映画監督デビュー。モントリオール世界映画祭には、前作『東京~ここは、硝子の街~』に続く2年連続の招待 。『新宿ミッドナイトベイビー』は、東京・中野で開催される第2回新人監督映画祭(10/31〜11/3)の特別招待作品に選ばれる。なお、2016年1月9日から、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー。

寺西一浩オフィシャルサイト:www.tbcmovies.com