写真で伝える東北の地域性
Kotaro Iizawa
Masaru Tatsuki
写真評論家 飯沢耕太郎 & 写真家 田附勝(2013年10月4日記事)
▲写真評論家の飯沢耕太郎さん(左)と写真家の田附勝さん

現在、ジャパンファウンデーション・トロントで開催中の「TOHOKU Through the Eyes of Japanese Photographers」展。東北をテーマにしたこの展覧会にはその 地域性と歴史、文化的背景を伝える趣旨の下、10人(9人+1組)の写真家による作品が集められている。 9月18日、展覧会の指揮を執った写真評論家の飯沢耕太郎さんと写真家の田附勝さんを招いたトークショーが行なわれ、2人にお会いする機会を得てお話を伺った。


― 今回の写真展の準備はいつ頃から始めたのですか? 

飯沢さん「2011年11月頃です。日本写真協会から連絡が入り、国際交流基金が海外に震災を伝えるという目的で東北展を企画していることを聞きました。僕が東北出身で、写真評論家をしていた経歴から話が来たんだと思います。通常、展示会の準備というのは、2年くらいかけてするものなんですけど、この企画展の準備期間は3か 月。タイトなスケジュールで、最初の1か月は毎週のように写真家の方たちと会っていました」

Pizza e Pazzi ― この写真展の特徴と写真家の選択基準を教えてください

飯沢さん「一番の特徴は、震災を機に出来た企画ではあるけれど、震災前に撮影した作品だけで構成されていることです。写真家については、色々な表情の東北を見せたいという思いから、東北地方の成り立ち、また、その歴史が伝わる写真を撮っていること。1950年代から現在活躍している写真家までと年代的にも幅をもたせました。さらに、記録的な写真から田附さんのように表現者として活動されている方までジャンルにも偏らないようにしました。
 田附さんを選んだのは、写真界の芥川賞と言われる木村伊兵衛写真受賞作品『東北』という写真集がきっかけだったんですが、彼の写真は僕が思う東北のイメージに直球に近かったんです。田附さんが加わることで、僕がこの写真展で表現したい東北のイメージがより伝わりやすくなりました」

田附さん「飯沢さんから連絡が入った時は、『やります!』と即答しました。海外ではTOHOKUとアルファベットで記されて、東北がどういう地域なのかは、あまり知られていないですよね。報道で映される"被災地"というイメージ以外の東北をもっと知ってもらいたいという気持ちは大きいです。この写真展は、東北で撮られた写真だけが集まっていること自体に意義があると思っています」

― 田附さんが東北を撮ろうと思ったきっかけを教えてください

「まず、東北の地に立った時、ゾワゾワしたんです。言葉にするとダサくなるけれど、"生きてる"感じかな。何か見えないもの、恐ろしさというか、偉大さというか、そんな言葉にできないものを感じたんですよ。田附(たつき)という姓は東北にある名前らしいのですが、もしかしたそういうルーツ的なことも影響しているのかもしれないですね。東北を撮ろうと思ったことに理由はなくて、直感的でした。
 でも、今後、東北だけを撮っていこうとは思ってはいません。そこに固執すると違うものになってしまう気がするんですよね。作品の強さで何かを感じて欲しいとは思っていますが、社会的にメッセージ性を打ち出すものにしたくないんです。対象物に対して客観的でありたいので」

― 写真家選びの後の作品選択に際して、飯沢さんの観点はどこにありましたか?

「田附さんを含め、展示作品は物故者を除き写真家自身に選んでもらいました。その方が写真家が撮影時に感じた皮膚感覚など、思い入れが伝わる作品が出て来るかなという理由からです。僕が思ういい写真とは、物象としては写っていないけれど、その背景にあるものを想像させてくれる写真。錯覚かもしれないけれど、見えないものを見えるかのように思わせてくれる作品を見せたいんです」

― 今月6日に展覧会は終了しますが、まだ来場していない読者に一言お願いします

飯沢さん「震災後の写真は海外でもさまざまなメディアに流出していますが、その衝撃的な映像に目が奪われて、東北という地域性については注目されていないですよね。(でも)この企画展では東北のさまざまな表情が表せたと自負しています」。



 
 


Biography

いいざわ こうたろう

写真評論家。宮城県生まれ。1984年、筑波大学大学院芸術学研究博士課程修了。1990年から94年まで季刊写真誌「deja-vu」の編集長を務める。主な著書に「戦後写真史ノート」、「アフターマス震災後の写真」などがある。




たつき まさる

写真家。富山県生まれ。2007年、全国で派手な装飾を施したトラックおよびドライバーを撮影した写真集「DECOTORA」を刊行。東北地方の人々、習慣、文化を写した写真集「東北」で2011年、木村伊兵衛写真賞を受賞。