日本の文化財を作品に
Mark Yungblut
切り絵・鉛筆画作家 マーク・ヤングブラット(2013年2月1日記事)

4月1日から5月28日まで日系文化会館にて切り絵作品を披露するマーク・ヤングブラットさん。オンタリオ州各地や日本で個展を開くなど、約10年にわたり、精力的に製作活動を続けている。切り絵との出会いは運命だったと思うと話す彼に、作品作りについて、また、2か月後に控えている展覧会について話を聞いた。

― 切り絵を始めたきっかけを教えてください

「10年程前に妻の里帰りで日本に行った時、彼女の友達のお父さんを紹介されて、その人が切り絵を教えている先生だったんです。(彼に教わりながら)初めて切り絵を作った時はうまく出来ませんでしたが、続けていくうちにどんどん夢中になっていきました。
アート製作に関しては、高校時代から鉛筆画をしていました。切り絵に出会う前からずっと、自分のクリエイティブな部分をアピールできる何かを探していました。そんな中、切り絵に出会ったんです。今思うとこれは運命だったんだなと思います。日本では、切り絵はリタイヤをしたような年配の人たちがするというイメージがあるみたいですね。僕みたいに若くて、しかも、アジアのバックグラウンドを持たない外国人が切り絵をするというのは珍しがられますね」

― その後、どのようにして勉強を続けられたんですか?

「カナダには切り絵を学ぶ講座はないので、毎年妻の里帰りで日本に行く度に2、3週間滞在して先生の講座を受けています。サマーキャンプみたいですね(笑)。(持参してくれた製作道具を指差しながら)ここにある切り絵に使う道具も、日本に行った時に買っています。鋭角な刃先のデザインカター、カッティングマット、糊、あとはカラーの作品に使用する上質な和紙も。カナダでは手に入らないので」

― 製作のプロセスを教えてください

「まず、デザインにする対象物の写真を取り、その後、切り絵用に鉛筆で下書きをします。切り絵の作品は、切れ目のない1枚の紙として完成させることが大前提。そこを考慮しながら、切り絵にした時にリアル感が出るよう、出来上がりの作品を想像しながら描いていきます。この工程が作品の良し悪しを決めるポイントになりますね。
最初の頃は、全てのディテールを描いて切り絵にしていましたが、写真で影になっている部分は黒い部分として残しておいた方が、遠近感や立体感が出ることがあり、忠実に細部を描くより写実感が出るんです。先生は、白と黒で表現する技法にこだわっている人なので、彼からも黒を効果的に残して影を表現するテクニックを学んでいるところです。下書きができたら、後は切り取っていく作業ですね。作品の大きさや、カラーなのか、モノクロかにもよりますが、だいたい25時間くらいかかるでしょうか。もちろん通しで作業はしないですけど」

Mark Yungblut

― 作品のテーマはどのようにして決めていますか?

「日本の古い建物、お寺とか神社をテーマにすることが多いです。長い歴史を経て今に存在する建造物を見ると、すごいなぁと、強い感銘を受けますね。日本人にとっては身近にありすぎて気づかないかもしれませんが、外国人の僕から見ると、素直に感動するっていうんですかね。インスパイアされます。
カナダの建造物を取り上げたこともありましたが、切り絵は日本生まれの芸術ですし、やはり日本をテーマにしたものが喜ばれますね。伝統的なものとは かけ離れてしまいますが、カナダ人には、カラーの作品が好まれる傾向があります。浮世絵の影響もあるんじゃないでしょうか」

― 日本の街ではどこが好きですか?

「埼玉県の川越市が好きです。江戸時代の古い町並みがそのままに残っていて、デザインにしたい景色を探そうとしなくても、ふと足元を見ると、その道が石畳だったりする。作品にしたい風景に頻繁にぶつかりますね」

― 作品の緻密さから切り絵製作には、かなりの集中力が必要なのかなと思われますが…

「切り取る作業には相当の集中力が必要になりますね。哲学的、禅の境地というんでしょうか。作業中は周りの音が聞こえなくなって…ただ没頭。たまに妻が僕の名前を呼んでも、つつかれるまで気づかない時もあったりします。人によってはそういう集中力がストレスになるみたいですが、僕の場合は、それが逆にストレス解消になっていると思います」

Mark Yungblut

―一番エキサイティングなプロセスはどこですか?

「はじめと終わりです。作品を作り始める時は、これからどんなジャーニーが始まるのかな? とワクワクしますね。作品が完成して、フレームをつけていく瞬間も達成感を感じます」

― 製作時間はどれくらいですか?

「なるべく毎日製作するようにしています。子どもが小さかった頃は子育てに時間を取られて、あまり作品を作れない時期がありました。それで先生をがっかりさせたこともありましたね。今は、子どもも少し大きくなったので、できるだけ多くの作品を作ろうと努力しています。いい作品を作ることが、僕に切り絵を教えてくれている先生への感謝の気持ちを示すことだと思っていますから」

― お気に入りの作品を教えてください

「難しいですね…。どの作品についても、パーフェクトではないと思ってしまうので。まだまだ僕には改善する余地がありますので、そこを埋めていかないといけないなと思います。それが次の作品へのモチベーションになっていますね」

― マークさんご自身にとって切り絵とは何ですか?

「自分自身を表現する一番いい手段だと思っています。集中して、細かい作業を少しずつ積み重ねて作り上げていく…。僕のパーソナリティをよく表わしていると思います」

― 最後に展覧会に向けて一言お願いします

「昨年開催したジャパンファウンデーション・トロントでの展覧会の時より、作品点数同様、カラーの作品も増えると思います。巳年にちなんで蛇の作品も出展する予定です。カナダで切り絵の展示会って珍しいですよね。無料だし、気楽に観に来てください」 。

 
 


Biography

マーク・ヤングブラット

オンタリオ州ウォータールー在住。鉛筆画を含め、約15 年間にわたり芸術製作に携わる。10年前、日本滞在中に切り絵作家として活動している岡村靖之氏に出会い、彼が教師を務める教室で切り絵を学び始める。昨年2 月に行なわれたジャパンファウンデーション・トロントでの個展のほか、キッチナー市など、オンタリオ州各地で展覧会を開催、日本では埼玉県の川越市や熊谷市での個展、また、東京、中国の青島でのグループ展への作品を出展する。
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