ミスをミスとしないパフォーマンスをやっていきたい
Masakazu Hashimoto
パフォーマー 橋本昌和(2017年11月10日記事)


今までのシルクにはないエネルギー溢れる公演


カナダを拠点とし、人間の能力の極限に迫る異次元のパフォーマンスを披露し続けている、世界最高峰のエンターテイメント集団「シルク・ド・ソレイユ」。そんな彼らが最新作「VOLTA」を引き下げ、この秋トロントで公演を行っている。今回の公演は、現代社会の汎用性や無機質な人間性をテーマに掲げており、社会への批判的なメッセージを表現しているが、従来のミステリアスな作風ではなく、ダンス、ダブルダッチやBMXなどのストリート系の演目が中心となったエネルギー溢れるステージである。今公演の精鋭集団の中に、6人の日本人パフォーマーが出演している。今回は2本の縄跳びを使って行われるダブルダッチと呼ばれるパフォーマンスを披露しているチームCAPLIOREの1人、橋本昌和さんに今公演の見どころや裏話などを伺った。





―橋本さん自身、シルク・ド・ソレイユのメンバーとして参加するのが、6回目とのことですが、今公演見どころをお聞かせください。
今公演は「現代社会に生きる」をテーマに、従来よりさらにダブルダッチやBMXなどのストリート系の演目を増やしたエネルギッシュな公演になってます。その中で、僕たちはエリートとという役を演じています。この役はいわゆる現代社会の闇を表現していて、常に練習の時には、舞台監督から笑ってはいけないと、無機質に演じるようにと指導を受けました。今までは、ダブルダッチのパフォーマンスをする時は、笑顔で全身からエネルギーを放つようにやっているので、今回はそういったものを一切出さずに演技するのが、最初のころはとても難しかったですね。実際に客席とステージの距離がかなり近いので、演技の精度だけでなく、表情作りや振る舞いなど細かなところもかなりつめました。



―今回の「VOLTA」では、橋本さんが所属するチームとは別のチームとタッグを組んでのパフォーマンスとのことですが、何がきっかけで結成に至ったのでしょうか。
元々、僕が所属するCAPLIOREのメンバー4人で、シルク・ド・ソレイユのメキシコの常設公演「JOYA(ホヤ)」にパフォーマーとして参加していました。その際に、今公演のキャスティングの方に「新公演でパフォーマンスをしてみないか」とお話を頂きました。しかし、当時はまだメキシコでの公演も残っていたため断ることも考えましたが、ダブルダッチを世界中に知ってもらいたいという思いから、僕らのチームは2人ずつに分かれて別々の場所で活動することに決めました。その後、日本でも交流のあった関西のチームAlttypeのメンバー3人を加えた5人で今のチームを結成しました。

―今公演の準備期間は約6か月間とのことですが、その間大変だったことはありますか?
僕らはダブルダッチ以外の演目でも、ダンサーとして公演に参加しています。言葉の壁はもちろんありましたが、それ以上に理想を合わせることが大変でした。例えばダンスでいえば、手や目線の角度など、僕らは本当に細かなところを突き詰めてやっていきたいんですが、日本人以外のパフォーマーはニュアンスでいいだろうみたいな感じの人も最初は多くて。このままではいけないと思って、まずは練習の時に隣の人に話しかけて動きを確認して合わせて、それを繰り返しやっていきました。認識を揃えることで、最終的には一体感が出てきたと思います。

―世界中のあらゆるお客さんの前でパフォーマンスをしている橋本さんから見た、トロントのお客さんの反応はいかがでしょうか。
トロント公演の前にオタワに隣接するガティーノという都市で1か間公演を行なっていたのですが、そこと比べて観客の目が肥えているように感じました。やはりトロントは、カナダの第一都市ということもあり世界中のエンターテイメントに触れる機会が多いと思うんですよね。だから、公演中も僕らが狙ったところではしっかりと反応して盛り上がってくれるけど、それ以外のところは落ち着いていて観てくれている、見どころが分かっているなという印象です。今公演は、観客の方々も一緒に盛り上がれる演出が随所にあるので、かなり一体感は生まれましたね。

―目が肥えているという点で、世界で最も観る目が厳しいと感じる国はありますか?
れは、ずばり日本ですね(笑)。観る目が厳しいというよりはシャイな方が多いので、笑い声や歓声が小さかったりと反応が見えづらい。もちろん日本の芸術文化は歌舞伎や能をはじめ、繊細な動きのものが多いので、そういった文化で私たちは育ってきたので仕方ないと思います。ただ日本人以外のパフォーマーが初めて、日本で公演を行うときは観客の反応にびっくりしてしまうみたいですけどね。逆にメキシコの盛り上がりはすごいです。観客の熱気と声援が合わさって、パフォーマーと一緒にステージを作り上げているみたいでした。

―今後のパフォーマーとして挑戦していきたいことはありますか?
ダブルダッチってミスした時のリカバリーがすごく難しくて、ミスが目立ちやすいパフォーマンスなんです。もちろんミスをしないように日々練習を重ねているのですが、人間なんで絶対はないじゃないですか。もししてしまった時に、どうやって観客にバレずにリカバリーできるか、それが今の課題ですね。実は前に、理由は分からないんですが、ミスしてしまったパフォーマンスにも関わらず、通常のパフォーマンスよりも盛り上がったことがあったんですよ。今公演中でも、他の演目内でミスしてしまったパフォーマーに対しての歓声や拍手がすごかったり、そういうことってあるんですよ。例えミスをしてしまった後でも、観客の心を掴むような一生懸命さだったり、諦めない気持ちだったり、いつでも100%のものを見せられるようにしていきたいですね。








Biography

はしもと まさかず
沖縄出身。元バスケットボールプレイヤー。世界大会で二連覇を果たした、ダブルダッチ界を牽引するトップチーム「CAPLIORE」に所属。2009年には日本人で初のダブルダッチギネス記録保持者に認定される。その後、シルク・ドゥ・ソレイユアーティストとして海外をまたに駆けて活躍中。