人々の日常を描いた作品をこれからも撮っていきたい
Mitsuhito Shiraha
映画監督 白羽弥仁(2017年9月8日記事)


この映画をきっかけに
日本と台湾の友好をより深めたい


白羽弥仁さんが映画化を手がけた『ママ、ごはんまだ?』は、歌手の一青窈さんの姉であり、舞台女優として知られる一青妙さんのエッセイを原作とした作品だ。台湾人の父と日本人の母の間に生まれた姉妹が、家族で暮らした家を取り壊す時に見つけた母のレシピ帳から物語は始まる。日本人監督が台湾人の家庭を映画化したとのことで、台湾現地でも大きな話題となり、実際にトロント日本映画祭で同映画が上映された際にも、会場には台湾人の姿が多く見られた。映画祭のために来加した白羽弥仁さんに、映画の見所や撮影時のエピソードなどをうかがった。


―映画の原作者である一青妙さんをはじめ、一青窈さんなど実在人物が登場する作品ですが、脚本作成や演出などで難しかった部分はありますか?
原作がエッセイだったこともあり、何か起伏のある物語が元々描かれているわけではありませんでした。日常のエピソードや料理のレシピが綴られている内容だったので、実際に脚本化するにあたっては非常に難渋しましたね。そこで、まず一青さんがお父さんのことについて書いた『私の箱子(シャンズ)』と、今回の映画の原作である『ママ、ごはんまだ?』、この2冊の本を基に家族の年表を作成し、1つ1つのエピソードの中でストーリーの核になるのはどこか、ということを考えました。その中で、一青さんのお母さんが病気になるシーンを映画の真ん中に起こして、回想形式で物語を進めていくことに決めました。また、実際に一青さんとお話をする中で、原作には描かれていないエピソードがいくつかありました。例えば、劇中にお母さんが豚足を仕入れる精肉店の店主が登場するんですが、実は原作の中では、母はどこかからか豚足を仕入れていたという一行で終わっているんです。ただ実際は、その精肉店は渋谷にあって……など、原作には描かれていないエピソードがたくさん出てきたんですね。それらを掘り起こして話を膨らませる作業は大変でもありましたが、自分の想像を付け加えて脚本にしていくのは楽しかったですね。

―料理を中心に家族の絆が描かれていますが、監督にとって「お袋の味」とはどういうものですか?
この映画を撮ってからよくこの質問をされるんですが、私は関西出身なので、各家庭には必ずといっていいほど、たこ焼き器があったんですね。子どものおやつといえば、ほぼ100%たこ焼きだったんですよ。友達と外で遊んで帰ってきて、大量のたこ焼きを母が作ってくれて、それを友達とみんなでワイワイしながら食べていた記憶がありますね。

―主演の木南晴夏さんですが、過去の彼女の出演作品を見るとハツラツとした元気な女性のイメージの役が多いかと思います。今回、一青妙さん役に抜擢された理由をお聞かせください。
映画の登場人物は、一青さんの実在するご家族の物語です。当然、今を生きている人達を描くので、それこそ顔が似ているとか口調が似ているだとか、ただのモノマネショーにしても意味がないと思ったんです。そこで何を基準にしようかと思った時に、脚本化していく作業の過程で感じた、一青さんのサッパリとした淡々とした雰囲気を醸し出せる人は誰だろうと考えました。そんな中で、木南晴夏さんが候補に出てきたんです。彼女の過去に出演した作品を観てもわかるように、物凄く変な役柄からシリアスな役柄までなんでも染まる、まさにカメレオン女優ということもあり、一青さんの雰囲気をきっとうまく演じてくれるのではと思い、今回抜擢しました。一方で、木南さん自身も今回の一青さんの家族の日常を描いたこの映画のストーリーに大変興味を持ってくれて、今回の出演が決まりました。

―台湾にて撮影を敢行したとのことですが、海外ならではのハプニングなどありましたらお聞かせください。
台湾南部の台南市で撮影をしました。この地域は本来ならば、冬でも半袖で過ごせるくらい温暖な気候で有名なんですが、なんと我々が撮影した2016年の冬に何十年ぶりの大寒波がやってきて、それはそれは寒くて。気温0度の中、スタッフ一同が夏服しか持っていなかったのですが、あまりにも寒過ぎて次の金沢市での撮影で着るはずだった冬服を着て撮影をしてました。実は劇中の市場のシーンで、豆腐を売っているおじさんの吐く息が白くなっているのが分かるので、チェックしてみてください。金沢は本来は寒いはずなのですが、大寒波の台湾でのロケを経験したおかげで、すごく暖かく感じましたね。

―台湾にて上映もされたとのことですが、現地の方々の反応はいかがでしたか?
日本人の監督が台湾の事件や歴史を描くのではなく、台湾家庭の日常風景を描くということで、現地の多くの方々に大変興味を持っていただけたと思います。また一青さんのご実家は台湾の名家「顔(がん)家」という、台湾では大変よく知られている存在ということもあり、その名家の物語として観てくださった方々もいらっしゃいました。劇中では日本と台湾の関係も少し描いていますので、この映画を通してさらに両国がより良い関係を築くきっかけになればと思っています。

―今後撮ってみたい映画や挑戦したいことはありますか?
この映画のおかげで、私自身がヨーロッパの映画祭に招待されることが増えました。海外に行くようになって感じたのが、海外にはたくさんの日本人が暮らしているということ。トロントももちろんそうですよね。そんな日本人の皆さんがその国々の歴史の中で、色んな役割を果たしたり新たな歴史を作ったりしてきました。私たちがまだまだ知らないだけで、凄い日本人は世界中にたくさんいるんですよ。今後はそんな人たちに焦点を当てた作品を撮っていけたらと思っています。






 

Toronto Japanese Film Festival
第六回トロント日本映画祭

ママ、ごはんまだ?
What’s for Dinner, Mom?
© 一青妙/ 講談社
©2016「ママ、ごはんまだ?」製作委員会






Biography

しらは みつひと
「She's Rain」で劇場映画の監督デビュー。映画だけでなく、プロモーションビデオやTVCM、短編映画などを手がける。監督業の傍ら甲南女子大学文学部メディア表現学科の講師を勤めている。