"買いたい!"と思わせる
作品を作りたい
Moyoko Anno
漫画家 安野モヨコ(2014年4月18日記事)

読者層の心理を追求して生み出す ヒット作の数々

世界各地から人気漫画家が集まるイベント「Toronto Comic Arts Festival」。5月10日と11日に行なわれる同フェスティバルの特別ゲストとして、日本から漫画家の安野モヨコさんが招待されている。『ハッピー・マニア』、『働きマン』、『さくらん』など、前向きな女性を描いた作品は、TVドラマ化や実写映画化され、原作の読者以外にもファン層を広げた。また、自身の結婚生活をモチーフにした大ヒットコミック『監督不行届』のアニメ版の放映がテレビ東京系にて4月3日からスタート。さらに作品の英語版の発売も開始されるなど、活躍の場をますます広げる安野さんに、作品作りにおけるこだわりや今回のイベント出演についてお話を伺った。


― 安野さんの作品というと、エネルギッシュでファッショナブルな女性が主人公という印象がありますがモデルと なった人はいらっしゃるのですか? また、キャラクター作りでこだわっている点を教えてください

「モデルはその時の友達だったり編集者など、自分の身近にいる人たちです。少なからず作品には自分を投影していると思いますが、キャラクターたちと私は別物だと感じています。ただ、どこか一つは自分と共感できる部分を持たせるように意識していますね。キャラクターの中に、私や周りの人間が実際に感じたこと、また本当にあった事実が入っていると、リアリティが増すのでそれを大切にしています」


― 現さまざまな作品が実写化されていますよね。ドラマ化、映画化される際には原作者としてどれくらい携わりましたか?  
また、原作との相違などにはこだわりますか?


「監督の選定や配役についてはほとんど携わらないです。もちろんキャストについて意見を尋ねられたりすることはありますが、基本的に原作者に決定権はないので。映像というマンガと違う形式になった時点で、自分の作品とは違うものになると思っています。なので原作との相違点についても、あまりこだわりがありません」


― 朝日新聞で連載をしていた『オチビサン』はこれまでの作風とは異なる作風ですが、独特の色合いは、どのように出されているんですか?

「ポショワールという版画技法を使っています。まず、普通のマンガと同じように鉛筆で下書きをして、その上に黒のペンで絵の主線を入れます。次に、ペンを入れた原画のコピーに完成をイメージしながらカラーペンで色を入れて、配色を決めて色見本を作ります。その後、その色見本にトレーシングペーパーを重ねて、色彩ごとに版のアウトラインを取っていきます。そしてそのアウトラインに沿って、カッターでトレーシングペーパーを切って版を抜きます。これが大変な作業で、細かい所まで一つ一つ丁寧に形を切り抜いてきます。さらに、先ほど作った色見本を参考に、どのスタンプで色をのせるかを選びます。何十色もあるスタンプからイメージに合ったスタンプを探して、最後に墨入れした原稿の上に切り抜いた版を重ね、スタンプで色をのせていきます。何回も色を重ねて、グラデーションや色の深みを出して完成していきます。かなり工程の多い面倒な作業なのですが、普通だと絶対に出せない色味が出せた時は"やった!"と思いますね」


― 「新世紀エヴァンゲリオン」シリーズなどで知られる映画・アニメ監督の庵野秀明さんとの結婚生活をアニメにした『監督不行届』のアニメ版の放映が始まりましたね。監督を庵野さんにお願いしなかったのはなぜですか?

「今回のアニメ化は『秘密結社鷹の爪』で有名なアニメ制作会社DLEからのお誘いで始まったんです。その際に、直接ラブコールがあったDLEの谷東(たに・あずま)さんに監督をお願いすることにしました。庵野を主人公にしたアニメを彼が監督をするという発想はなかったですね(笑)」

― 「カントクくん」役を山寺宏一さん、その妻「ロンパース」役を林原めぐみさんという「新世紀エヴァンゲリオン」シリーズでもお馴染みのお2人が声優を務められていますが、こちらは安野さんのご希望ですか?

「私ではなく庵野の指名です。初めて谷監督とハイパーメディアエグゼクティブディレクターのFROGMAN さんにお会いした時に『カントクくんの声は庵野さん御本人でどうでしょう?』と提案されました。それを受けて、庵野監督が山寺林原さんにぜひに、と指名してトントン拍子に話が進んだんです」


― 女性向け漫画雑誌、青年漫画雑誌、また、少女漫画雑誌など、これまで読者層の異なる雑誌で連載経験をお持ちですが、読者のニーズはどのように捉えているのですか?

「読んだ人が自分で色とか音とか匂いを補ってイメージすることが出来るものだと思っています。つまりゼロから作り上げるクリエイティブな要素と、提供されたモノをただ楽しむだけのエンターテイメントとの間にあるものだと思うんです。マンガ読みがマンガ家になることが多いのは、その証拠だと思っています」

― 英語版の作品がアメリカの動画配信サイトを通じて全世界に配信、また『監督不行届』の英語版『Insufficient Direction』の販売も開始されましたが、海外からの反響はいかがですか?  
また、原作との相違などにはこだわりますか?


「facebook上のファンの中には、日本語を勉強している外国人が多いことを感じますね。インターネットを通じて直接、 海外のファンの方とつながれるのは、とても嬉しいことだと思っています」


― 海外で行なわれるアニメ、マンガのイベントには、これまで参加されたことはありますか?

「3年前にニューヨークで開催された『Comic-Con International』に参加したことがあります。海外の人たちがコスプレすると、すごく似合うのにビックリしました(笑)。エルフ(妖精)のコスプレなどには本物感がありますよね」

― 「最後に、今回のToronto Comic Arts Festival で安野さんに会えるのを楽しみにしている読者にメッセージをお願いします

「いつも応援ありがとうございます。カナダに滞在するのは今回が初めてです。イベントでは、パネルディスカッション への参加に加えてサイン会もやらせていただきます。私もトロントの皆様にお会いできるのを楽しみにしています。ぜひ会場に遊びにきてください」。




※安野モヨコさんの最新情報は公式Facebook、公式Twitter、公式アプリで更新中。詳細は左記URLより

 
 


Biography

あんの もよこ

高校在学中「別冊少女フレンドDX ジュリエット」に『まったくイカしたやつらだぜ』が掲載されデビュー。『ハッピー・マニア』(祥伝社『FEEL YOUNG』連載)、『さくらん』(講談社『イブニング』連載)『働きマン』(講談社『モーニング』連載)、などヒット作多数。2005年、『シュガシュガルーン』(講談社『なかよし』連載)で第29回講談社漫画賞児童部門受賞。2013年11月から『FEEL YOUNG』にて『鼻下長紳士回顧録』連載中。2014年3月、『監督不行届』(FEEL COMICS)の英語版『Insuffi cient Direction』(Vertical)が販売開始。 5月10 日・11日に行なわれるToronto Comic ArtsFestivalの詳細はサイトにて

【サイト】http://annomoyoco.com