ダンスカンパニー
New York Dance Creators
ニューヨーク・ダンス・クリエイターズ (2015年9月4日記事)
▲写真左からアンドロニキ・プロコピウさん、カセイ・イノウエさん、ジュランジ・シルバさん、ワカコ・イシダさん

いい作品を作るために常にもがいています

演劇やダンスなどコンテンポラリーアートのパフォーマンスがダウンタウン各所で行なわれる恒例のイベント「トロント・フリンジ・フェスティバル」。7月に行なわれたこのイベントに、今年は日本を拠点に活動しているニューヨーク・ダンス・クリエイターズが参加した。このダンス・カンパニーはワカコ・イシダさんとカセイ・イノウエさんにより1999年に設立されたカンパニー。フリンジ・フェスティバルでは、ニューヨークで活躍しているダンサーのアンドロニキ・プロコピウさんとジュランジ・シルバさんとの共演で、『King’s Castle』を7回に亘り披露した。机、椅子を配置し、球体が浮かぶステージで、さまざまなシーンを流れるような美しい動きでつないだ作品は、拍手喝采で幕を閉じた。

まずは、演目『King’s Castle』についてインスピレーションの源を伺った。

ワカコさん(以下敬称略)「新しい作品を作る際は、ストーリーを決めるのではなく、何かをきっかけにして、そこからイメージを膨らませていくというスタイルを取っています。『King’s Castle』を作った時は、たまたま上野のアメ横にある“王城”という少し前時代的な感じの喫茶店をミーティングに使用していて、王城っておもしろいんじゃない? と、作品のタイトルを先に決めました」
カセイ「音の響きもいいなと。 それで、King’s Castleってどういうイメージだろう?…と」 ワカコ「古代から歴史上にいろいろ王様っていますよね。そういう歴代の王様のお話とか物語をいろいろ読んだり、絵画を見たりして、自分たちで王様の世界をいろいろ考えて、そこにいくつかのエピソードを盛り込みました」

現在は、日本を活動拠点に置いているニューヨーク・ダンス・クリエイターズだが、2人が出会ったのはニューヨーク。5歳の時からクラシックバレエを習っていたワカコさんは、大学の途中で「とにかくダンスがやりたい」と、ニューヨークへ向かった。そしてカセイさんは、その頃、アーティストを目指し、パーソンズ美術大学で学生生活を送っていた。

カセイ「美術大学の学生をしていた時に、ダンスを見る機会があって、衝撃を受けました。それでダンススタジオに通うようになって、ダンスの世界に飛び込んで…。ダンスのレッスンに通いながら、大学の課題もやらないといけなかったので当時の睡眠時間は3時間くらいでしたね」
▲「King’s Caslte」より ©Shinya Ochida



▲「Sky, fine & clear 」より©Shinya Ochida


ニューヨークでダンスに出会ったカセイさんと、「うまく踊りたい」という気持ちと同時に「ダンスを作りたい」とも思っていたワカコさんは、通っていたダンススタジオで出会い、意気投合。一緒にダンスカンパニーを設立することになった。カンパニー名の“ニューヨーク”は、その出会いの場に由来しているのかと思いきや、コンセプチュアルな意味のものだと説明してくれた。

ワカコ「ニューヨークにはすごい数の人種が集まっています。モダンやクラシックのダンスの勉強をしていても、ダンスにその人の個人のバックグラウンドというものがすごく出るんですよ。そのそれぞれ異なる個性が集まって1つの世界を作っているという感じで」
カセイ「ニューヨークと名前に付けていますが、それはアメリカの都市ニューヨークということではなく、人種がいろいろ集まっている…というコンセプチュアルな意味合いでカンパニーの名前にしました。場所としてのこだわりではなく、人が交差してその中で切磋琢磨して、何か新しいものが生まれるということを意味しています」

ビジュアルアートに精通するカセイさんと、大学で英米文学を専攻していたこともあり、ダンスにおいても文学的なアプローチをする傾向があるというワカコさん。ダンスを作り出す上で、衝突することは多々あるといいうがそれがお互いの刺激になっているとうなずきあう。最後に、それぞれのダンスにかける熱い思いを伺った。

ワカコ「バレエを始める5歳より前に、テレビでロシアのバレエを見たんです。その時に、“これがやりたい!”と思ってからこれまで気持ちが全然変わっていません。ピアノを習ったり、大学では英米文学を勉強したりもしたんですけれど、一番やりたいのは、いつも踊りでした。私にとってダンスとは、言葉や人種、人の肩書きなどを越えて心の交流ができるコミュニケーションツールです。
今回の『King’s Castle』もそうなんですけれど、私たちのダンスは、こういうストーリーだからわかってくださいと、理解を促すというよりも、見に来てくださった方が舞台を見て、普段あまり考えたことのないことを考えるきっかけになればいいかな、と思っています。みんながみんな、“キレイだったわね”という感想だったら面白くない。自分たちのステージを観客全員が好きである必要はなくて、好きじゃない人がいてもいい。パフォーマンスをすることによってある一定の時間と空間をお客さんと一緒に共有できることが最高にうれしいことだと思っています」
カセイ「僕は元々アートにすごく興味があって、絵画やイラストまた音楽などとダンスのコラボレーションにも刺激を受けてきました。現在も、イラストの仕事をダンスと並行してやっています。どちらがメインとかではなく、自分にとっては両方やるのが自然なんです。せっかくこの世に生を受けてきたからには、いいものを作りたいです。ダンスもイラストも、どちらもいい作品を作るにはどうしたらいいのか、ということを常に考えてもがいています」。



 
 


Biography

ニューヨーク・ダンス・クリエイターズ

ニューヨークでダンサーとして活躍していたワカコ・イシダさんとカセイ・イノウエさんにより1999年に設立。クラシックバレエ、モダンダンス、コンテンポラリーダンスの手法を駆使し、さまざまなアーティストと共演。カセイ・イノウエさんはイラストレーターとして絵本「ダンススケッチ ヒトダンゴ」を出版、また個展の開催などイラストレーターとしても活躍。

サイト:www.nydcreators.org