ジブリ映画最新作の主題歌に大抜擢
Priscilla Ahn
シンガー・ソングライター プリシラ・アーン (2014年8月1日記事)


歌詞に込めた自身の経験が共感を呼ぶ

毎回、その主題歌も大きな話題となるスタジオジブリ制作の作品。7月19日から日本で劇場公開されている映画「思い出のマーニー」で主題歌『Fine On The Outside』を歌っているのが米国出身のシンガー・ソングライター、プリシラ・アーンさんだ。アコースティックギターとピュアな歌声で歌い上げる孤独な思いが、主人公、杏奈の思いと重なり心に切なく響く。主題歌決定の報告を聞いた瞬間は、「嬉しい驚きでいっぱいで、しばらくメールを見つめていた」というプリシラ・アーンさん。今春行なわれた北米ツアーでトロントを訪れた彼女に話を伺う機会を得た。


― 『Fine On The Outside』が主題歌に起用されたいきさつを教えてください

「それには2、3のことが関わっているわね。まずは、2012年にリリースした日本と欧米のヒットソングのカバー曲を集めたアルバム『ナチュラル・カラーズ』で、大好きなジブリ映画『風の谷のナウシカ』の主題歌を収録したの。それがきっかけで東京でライブをした時にジブリ映画の制作スタッフがライブを観に来てくれたことがあって…。
その縁で、昨年のクリスマスイブにはジブリ美術館での公演が実現したの。実質的な主題歌の選考については、制 作側から曲を提供して欲しいとオファーがあって、原作を読み始めたの。読み始めたら、すぐに、自分と物語の主人公、杏奈との強いつながりを感じたわ。『Fine On The Outside』を書いたのは9年ほど前のことになるんだけど、その当時の私は、ロサンゼルスに移ったばかりで孤独を感じていた時期。杏奈の状況そのものという感じだったからイメージとぴったりだったんだと思う。大好きなジブリ映画の主題歌に選ばれたことには、誇らしさを感じているわ」

― 『ナチュラル・カラーズ』には日本語で歌っている楽曲が収録されていますよね。日本語は話せますか?

「ちょっとだけです。挨拶くらい。お疲れさまですとか(笑)。私の父は米国生まれのアメリカ人で母は韓国人。韓国語は理解はできるけど、話すのは難しくて…。日本語の発音の方が私にとっては簡単に思えるわ。発音がいいって? それはありがとう! 日本語は教材で勉強しているの。初めて日本語の歌を歌いたいって思い始めたのは 10年前のこと。 映画『耳をすませば』の挿入歌『カントリーロード』を聞いて、いいなって思ったの。それで何度も何度も聞いて歌ってみたら、周りの人から発音がすごくいい! って褒められて。そんな風に言われたのもあって、もっと日本語を学びたくなったの」


― 日本が大好きだと伺っていますが、どんなところに魅力を感じていますか?

「初めて行ったのは07年のことだったんだけど、もう着いた途端に恋に落ちちゃったって感じ。特に日本人の親切なところに心打たれたわ。日本に戻りたいなという気持ちは常にあるの。実はハネムーン先も日本だったのよ。主人はニューヨーク出身のアメリカ人なんだけど、彼も日本の文化や日本人の大ファンよ」

― 東日本大震災後直後には日本のファンへ向けた曲「Song for Japan」をYoutubeにアップロードしていましたよね。どのような気持ちで曲を作ったのですか?

「震災の映像にはとっても恐怖を感じたわ。そして私をいつも支えてくれている友達やファンのみんなが恐ろしい目にあっているのを見るのが悲しかった。それで、思っているだけじゃなく、実際の行動として何かをしたいって思ったの。自分が作った曲を気持ちを込めて歌ったわ」


― 歌手活動を始めたのはいつ頃ですか?

「小さい頃から、母の影響もあって教会で歌を歌っていたの。ゴスペルではなく、もうちょっとメローな感じの歌を歌っていたわ。曲を書き始めたのは14歳でギターを始めた時。ギターの練習のために弾きながら曲を書いていたら、どんどん曲ができていったのよ。大手レコード会社と契約が決まったのは08年のことになるわね」

― 曲作りのインスピレーションはどこから得ていますか?

「メロディーはギターを弾いている時に浮かぶことが多いかな。詩や物語を書くことが好きなので、歌詞を書く ことはとても自然なことなの。『Fine On The Outside』もそうだけど、歌詞にはパーソナルなことを書いてい るわね」

― 個人的な経験を歌詞にするのに躊躇することはないですか?

「歌詞を書くことは、私にとって、内にある感情や考えをアウトプットするセラピーみたいなもの。逆に自分に 関連のないストーリーを歌詞にする方が難しい。作品には、恋愛にまつわる出会いや別れ、それと自分のアイデンティティについての悩みを書いていることが多いかな。これは夫と結婚する前の話なんだけど、彼の本をめくっていたら、他の女の子が書いたラブレターがそこに挟まれていたなんていうことがあっ て、そのエピソードを歌詞にした曲もあるの。
彼は嫌がっているかも(笑)。でも、昨年出したアルバム『ここにいること』に収録されている楽曲は、ほとん どがハッピーな曲。私自身が現在ハッピーな状況であることが影響していると思う。もう1人ぼっちだなんて 思わなくなったもの。4年前に結婚したことも関係あるかもしれないわね」

― お気に入りのミュージシャンを教えてください

「インディーズ・テイストの音楽が好きなの。リッキー・リーとか、リトル・ドラゴンとか。2組ともそうなんだけど、スウェーデン出身のミュージシャンが今のお気に入りかな。ちょっとメローでエレクトロニック。トップ 40とかよりアーティスティックな感じが好き。私自身もそういうアーティストを目指しているわ」

― 音楽活動の最も大きなモチベーションは何ですか

「パフォーマンスをするのが大好きなの。今回のツアーでも感じていることなんだけど、ファンからインスパイアを受けることがとっても大きいわ。コンサートが終わった後に、ステージから降りて、ファンと話す時間を持つようにしているんだけど、その時にファンの人たちがパーソナルなことを私に話してくれるの。私の音楽によって孤独が癒されたとか、落ち込んでいた時に、曲を聞いて勇気づけられたとか。そういうことを聞くと、自分がしていることに意味があるんだって思えてうれしい。それがステージに立つエネルギーになっているのは確かね」




インタビュー後のステージでは、曲が生まれたエピソードを交えながら楽曲を披露するなど、ファンとの距離の近 さが感じられるパフォーマンスで会場を湧かせたプリシラさん。公演後には写真やサインを求めるファンに丁寧に対応し、また、最後尾のファンにまで笑顔を絶やすことなく、会話を交わす姿が印象的だった。7月16日には映画「思い出のマーニー」の世界感が伝わる歌集アルバム『あなたのことが大すき。』が発売された。さらに初のベストアルバムの発売も続くなど、日本での知名度をますます高めるプリシラ・アーンさん。その優しい歌声に魅了されるファンが急増することは間違いない。





 
 
Biography

プリシラ・アーン


1984年生まれ。米国ジョージア州出身。現在はロサンゼルスを拠点に活動。2008にアルバム「グッド・デイ」でメジャー・デビュー。自作曲は米国の映画やテレビドラマに多数起用される。また、日本でもドラマの主題歌やCMに書き下ろし楽曲を提供。最新アルバムは7月23日に発売された初のフル・ベストアルバム「プリシア・アーン・ベスト」。8月2日~10日に茨城県ひたちなか市で行なわれる「ROCK IN JAPAN FESTIVAL2014」の9日の公演に出演予定。
【サイト】www.universal-music.co.jp/priscilla-ahn