ルールを設けるのではなく相手を信じて賭けてみる
Sana Takeda
イラストレーター タケダサナ(2017年5月5日記事)

コミック・ライターを信用して自由にデザイン作業に取り組む


『Monstress, Vol.1 TP』より

スパイダーマンやアイアンマン、ハルクやキャプテン・アメリカといった名キャラクターを生み出してきたアメリカン・コミックスの名門であるマーベル・コミック。そんな世界中で愛される出版物で作画を行なっている日本人イラストレーターが、タケダサナさんだ。美しくも力強い絵を描くタケダさんは、マーベル・コミック以外でもあらゆる作品や表紙のデザインを手がけており、最近ではコミックライターのマージョリー・リューさんとともに、イメージ・コミックにて「Monstress」を連載するなど、日本在住でありながらアメリカン・コミックスのシーンで人気を博している。

そんなタケダさんが、5月13日と14日にトロント・リファレンス図書館ほか市内各所で行なわれるToronto Comic Arts Festival(TCAF)へ参加するためにトロントを初めて訪れることになった。日本人のイラストレーターとして、いかにしてアメリカン・コミックスの世界で活動するに至ったのだろうか? これまでのキャリアや仕事の流儀をうかがうべく、トロント訪問に先がけてインタビューを行なった。


―まずは、絵を描き始めた時期ときっかけを教えて下さい

「小学校のころ、病気で学校に通えなくなった時期が2年ほどありまして、暇つぶしのために落書きをしていました。それ以来、絵を描くようになったと思います」

―本格的にイラストレーターを志したのはいつでしたか?

「私の場合『志した』というような格好良いものではありません。もともと勤めていたゲーム会社を退職したときは、子ども向けの絵本やグッズを作っていくつもりでした。しかし、そのプロジェクトに頓挫してしまい、明日のご飯代にも困る状態になってしまったのです。そこで、急遽知人にネットゲームのイラストを描く仕事を紹介してもらいました。とはいえ、その仕事は一番描くのが苦手なメカと美少女が中心の作品で、とても大変だったことを覚えています。そうやって、その場しのぎで始めたこの仕事が13年以上続いています。本当にありがたいことですね」

―ゲーム会社ではどのようなお仕事を行なっていたのでしょうか?

「主にキャラクターデザインです。3Dでキャラクターの形を作り、骨を入れるモデリングの作業と、そのモデルに皮膚や服の質感を付けるためのテクスチャの作製で、今のような2Dのイラストを描く機会はありませんでした。担当したのは主にスポーツゲームとレースゲームでした。実は入社の面接の時に何をやってみたいかと聞かれて『スポーツとレースがあまり好きではないので、それ以外なら何でもいいです』と答えたはずだったのですが…。ただ、興味が無い分野について調べて学ぶうちに、だんだん興味を持って好きになっていく、という面白さが味わえました。最終的にスポーツ観戦をしに行くほど好きになっていましたから」

―では、マーベル・コミックでの作画を行なうようになったきっかけをお聞かせください

「マーベル・コミックの副社長C.B.セブルスキー氏に作品のファイルを送って、拾ってもらったのがきっかけです。とは言え、それは鉛筆で描いただけの落書きで、今思えば作品とは言えない代物でした。私は本当に運とタイミングが良かったのだと思います」


『Monstress』より

―現在はコミックライターのマージョリー・リューさんとともに「Monstress」を製作をしてますね。どのような手順や日程で、お仕事をこなしているのでしょうか?

「まずは、マージョリーが作った脚本を読んで大まかなレイアウトを決め、彼女のチェックを1~2回受けながら少しずつ完成させていきます。すべてメールでやり取りをしているので、実際に会うのは年に2~3回程度です。彼女は非常に頭のいい人ですし、感性も鋭いので、脚本を読めばほとんどのことは伝わります。ですから、私も安心して快適に仕事ができていますね」

―コミックライターさんとともに作品を作る上で、両者で決めている特別なルールなどはありますか?

「特にルールというのはありません。『Monstress』の場合は、ライターのマージョリーのセンスや感覚を絶対的に信用していますので、私は自由にキャラクターや背景のデザイン作業に取り組めていると思います。ほかの仕事においても、ルールを設けるのではなく、まずは相手を信じて『賭けて』みる。その上で、自分は何が出来るのかを常に意識しているつもりです」


『Marvel vs. Capcom』より

―臨床美術士としての一面もお持ちですが、具体的にどのような場面で、どのような活動を行なうのでしょうか?

「現在はほとんど活動していないのですが、基本的に絵を描いたり工作をする工程を通して、物事の見方や意識の方向を広げたり変えたりするお手伝いをします。認知症の方や心に問題を抱えている方などに有効であるとされていますが、そうではない方も、自分では気づいていない長所を発見するきっかけになるものだと思っています」

―もしも、イラストレーターにならなければ、何になっていたと思いますか?

「難しい質問ですね。強いて言えば、話を聴くことや聴き取りが好きなので、何らかの相談員か、カウンセリングのような仕事をしていたかもしれません」

―今年のTCAFに関わるクリエイターの中で、個人的に気になるアーティストがいれば教えて下さい

「素晴らしい方ばかりで、お会いするのがとても楽しみです。特に、今回は『Monstress』を出版しているイメージ・コミックの25周年を記念する企画もあるので、イメージ・コミックスに関わっているクリエイターさんたちと一緒に参加できるのが心強いなと思っています」

―TCAFに来場する予定の、トロント在住の日本人の方々に伝えたいことはありますか?

「会場で見かけましたら、ぜひお気軽にお声かけください。私自身、初めてトロントを訪れるので、トロントのおすすめの場所などを教えてもらえたら嬉しいです。みなさんにお会いできるのを楽しみにしております」。


Biography

たけだ さな
イラストレーター/コミックアーティスト。ゲーム会社でデザイナーとして勤めた後にフリーランスのアーティストとして独立。アメリカン・コミックスを中心に作画を手がけており、TCAF 2017のポスターデザインにも参加している。

サイト:www.sanatakeda.com