モントリオールで海外初公開
『ぼくたちの家族』
Satoshi Tsumabuki
俳優 妻夫木 聡 (2014年8月15日記事)


作品を通して感じて欲しい
それぞれの家族のあり方

母親の突然の病気をきっかけに、それまでバラバラだった家族に隠されていたさまざまな問題が噴出。その後、関係を見つめ直し、家族が再生していくさまを描いた『ぼくたちの家族』。
妻夫木聡さんと池松壮亮(いけまつ そうすけ)さんが、責任感の強い長男と家族に対して素直になれない弟という正反対の兄弟役で初共演。そして彼らの両親を、ベテラン俳優の原田美枝子さんと長塚京三さんが演じた。現在日本で大ヒット中の同作品が、8月21日から開催されるモントリオール世界映画祭で上映される。登場人物の細かな心情を映した日本の家族の絆が描かれた作品が、海外でどう評価されるかに期待がかかる。同映画祭が海外初公開となる本作品について主演を務めた妻夫木聡さんに話を伺った。


― 作品は早見和真(はやみ かずまさ)氏の実体験に基く小説が原作となっていますが、脚本を最初に読んだ時の感想を教えてください

「はっきりとは覚えてないんですけど…。今まで映画とかドラマで家族愛とか、言葉で表すことができるものを見てきた気がするんですけど、この映画はその先をいこうとしてるんだろうなっていうのを感じました。言葉に表せない、絆以上のものを描こうとしてるんだろうなというのが最初に脚本を見たときの印象でしたね。大変な現場になるんだろうとは感じました」

― 石井裕也監督の現場は、本作品が初めてだったとのことですが、現場はどんな感じでしたか?

「何より役者の芝居、生きてる姿を撮りたいという姿勢が感じられる監督ですね。そのために一緒に苦しんでくれる。とても信頼できる監督でした。現場では、毎日一緒に悩んで苦しみながら、それでも前に進んでいったという感じで。それが作品の味となって出ているという気がします」

― 長男、浩介を演じる上で、苦労した点はありましたか?

「僕自身が実際は次男だし、兄貴を見て育ってきてますからね。僕はうまい具合にひょろひょろっと壁をかわして進んできたので、兄貴がどういう風に長男としての責任みたいなものを背負い込んできたのかとかは今いちよく分かっていないんです。でも今回自分がそれを演じるということになって、ただ苦しみを苦しんだ顔で表現するってことじゃないんだろうなとは理解していました。かといって全部背負い込むっていうのも違う気がして。浩介自身もたぶんそういうつもりではないと思うんですよ。なので、ゆっくりとでも前に進んでる感じが見せられたらいいな、と思って演じていました」

― 妻夫木さんの受け身の芝居が強く印象に残りました

「まぁそうですね。耐えるシーンが多かったし、感情をあまり表に出さないことも多かったから。すべてにおいて耐える芝居が多かった気がしますね」


― 共演者については今回、池松壮亮さんとの初共演を楽しみにされていたと伺っておりますが、共演してみて、印象は変わりましたか?

「もともと抱いていたイメージ通りの人でしたね。一緒にいてすごく居心地がいいというか。ホッとする存在ではありますよね。役の目線で感じちゃってるから、兄貴的な目線になるのかもしれないですけど」


― また、母親役の原田美枝子さん、父親役の長塚京三さんの演技についてはどういう感想を持たれましたか?

「原田さんに関しては、リアルに病的に病んでるように演じてしまったら、その時点でかわいそうっていう風に見えるし。そこを飄々と演じてもらえたからこそ、どんどん痛々しくなるし、現実ってものを見せられて僕らもそういう演じ方になりました。こんな言い方は失礼かもしれないんですけど、想像以上に可愛いお母さんだったんですよ。ただ優しいお母さんなだけよりも、あのキュートさっていうのは原田さんだから出るんだろうなと思います。長塚さんもこの役はダメ親父なんだけど、ダメに演じると、胡散臭くなる役でもあると思うんですよ。そこをさらっと演じてくれたおかげで、説得力があるというか、本当に僕たちはイライラしたし(笑)」

― 作品を通して改めて家族観について考えたりはされましたか?

「演じている時は考えなかったけれど、見終わってからですね。家族が成り立つって、簡単なことじゃないよなって。誰かが悲しみました、慰めました。それで傷が癒えるってことじゃないんだなというのは思いましたね。仲が良いとか仲が悪いとか… どっちにしろ家族なんですよね。家族というものは一緒に前に進んでいかなきゃいけないっていうことを感じた作品でした。
家族のために何かしてあげようとかじゃなくて、せざるを得ない時はきっと誰にでも訪れる。その時に自分に何ができるかっていうことが大事になってくるのかなって。家族の形や色というのは人それぞれ違うものだし、作品を見て、改めて自分の家族の色って何だろう? と思い直せるんじゃないですかね。僕自身も僕にしかない色っていうのを見たので。そういうことを考えさせてくれる映画なんだなと思います」

― 最後に作品をまだ見ていない読者に メッセージをお願いします

「人それぞれいろんな人生があると思うし、いろんな家族の形ってあると思うんですよ。この映画を見て自分にとって家族とは何だろうなって考えて欲しいし、それ以上に自分自身が家族に対して何ができるんだろうなというのをちょっとでも考えてもらえたら嬉しいですね。もしかしたら、全く答えは出ないと思うけど、その答えをずっと探していくのがたぶん家族としての在り方だと思うから。見てくれたら絶対に届くと思うので、とにかく見て感じて欲しいです」。

るんだって思えてうれしい。それがステージに立つエネルギーになっているのは確かね」






 
 


Biography

つまぶき さとし


1980生まれ。福岡県出身。97年、全国でオーディション史上最多の300万人が参加した「超ビッグオーディション」の第1回グランプリに選ばれる。98年、テレビドラマ『すばらしい日々』で俳優デビュー。その後、テレビドラマ、映画など出演多数。石井裕也監督作品には『ぼくたちの家族』に続き、日本で12 月公開予定の『バンクー バーの朝日』でも主演を務めている。9月4日から始まるトロント国際映画祭にて上映される中島哲也監督作品『渇き。』にも出演。
【『ぼくたちの家族』オフィシャルサイト】bokutachi-kazoku.com