極彩色アートで
原宿文化を世界に発信
Sebastian Masuda
アートディレクター/アーティスト 増田セバスチャン(2014年2月21日記事)

未来の子どもたちに見せたい 楽しくてキラキラした風景

原宿ファッションの発信源と言われるブランド「6%DOKIDOKI」を立ち上げ、現在の「kawaii 文化」を海外に広めた第一人者と言われている増田セバスチャンさん。きゃりーぱみゅぱみゅさんの曲「PONPONPON」「つけまつける」などのプロモーションビデオの美術を担当し、アートディレクターとしてその存在が注目され、活動の幅を拡大。昨年は六本木ヒルズ展望台・東京シティビューのクリスマス特別企画にて、「Melty go-round  TREE (メルティゴーラウンド ツリー)」を発表。「夢を乗せて走るメリーゴーランド」をコンセプトにしたツリーは、幅広い年齢層の人々を魅了した。
独特のアート感覚をさまざまなメディアを通して発信し、活躍の場を広げている彼は、今月27日(木)から3月 29日(土)までニューヨークで初の個展を開催する。個展の準備を控え、多忙を極める増田セバスチャンさんに、海外におけるkawaii 文化の発展や、真近に迫る個展「"Colorful Rebellion" -Seventh nightmare-」についてのお話を伺った。

6%DOKIDOKI

カラフルな色彩が印象的な増田セバスチャンさんのアート作品。まずはご自身の世界観がいつ頃培われたのか伺った。「小さい頃、僕は難聴で、音のない世界で生きていました。それで、人より目に見える色の数が多かったのかなと思います。その経験が今の作風に影響しているのではないでしょうか。僕にとってカラフルな色彩の原風景は、生まれた町の商店街です。昭和のおもちゃやお菓子の色とりどりのパッケージが、今でも華やかな色彩として脳裏に焼きついています。あの頃抱いていた未来に対する大きな期待、楽しそうでキラキラしている風景を、未来の子どもたちにも見せてあげたいという気持ちがあるんです」

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影響を受けた人物は、作家の寺山修司氏だという増田セバスチャンさんは、高校卒業後、彼と関連のある劇団に入団。20代前半は舞台や現代美術の世界で表現活動に取り組んでいたが、自身の作品について、評論家らから否定さ れることが少なくなかったと話す。そのジレンマの解決策として1995年に始めたのが、ファッションブランド「6%DOKIDOKI」だった。「表現する場として演劇だったら公演、アートだったら展覧会がありますが、いずれも開催期間は限られていて長くても1か月。見る人が限定されてしまう。もっとたくさんの人に見てもらって、わかりやすく評価してもらえる場所は無いのかな、と考え始めたんです。それで辿り着いた答えが『店』。評価するなら買う、しないなら買わない、ってすごくわかりやすいじゃないですか。言うならば無期限の展覧会を開く感覚でしたね」 店の場所は、自身が好きで、何でも受け入れてくれる自由な空気のある原宿以外は考えられなかったという。

Pizza e Pazzi 「当時の原宿には、ホコ天(歩行者天国)という場所があって、若者が自由に表現活動ができた時代でした。若い世代が開いた小さいお店やインディーズブランドもたくさんあって、色々な所で新しい文化が芽吹いていました」

「センセーショナル・ラブリー」をコンセプトにセレクト、製作された原宿ファッションブランド「6%DOKIDOKI」 のアイテムは日本の若者を中心に広まり、海外でも波及していった。05・06年頃にそんな海外での広まりを実感し、海外で原宿文化に興味を持つ女の子たちに、実際の原宿のkawaii文化を伝えようという主旨で09年にスタートした のが世界各都市を巡るワールドツアー「Harafuku "Kawaii" Experience」だ。
「10年には『6%DOKIDOKI』のショップガールたちを連れて、原宿を起点にロンドン、パリ、ロサンゼルス、サンフランシスコへ行って、各地の女の子とショーやトークイベントを開催しました。イベントはどこの会場でも大盛況でしたね。海外のkawaii文化のファンについての印象は、カラフルな服を着て髪を染めて、たくさんピアスを開けて、スイーツやキャラクターのタトゥーを彫って…と、日本よりちょっと過激なスタイルを愛する人が多いこと。それぞれの土地のカルチャーとミックスされて、各国独自の進化を遂げているのも特徴です。

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例えば、ロンドンは音楽と共に育ったオリジナルのファッションであるパンクやサイバーなどとミックスされていたり」今、海外で広まっている"kawaii" は、日本語の"可愛い"の意味だけではなく"クールでカッコいい"という意味を含む。そして、"kawaii" は"cute" よりも感情的で、日本人のアイデンティティにも関わる繊細な感覚があり、完璧に訳せる言葉はないという増田セバスチャンさん。kawaii文化が広まった背景については、時代性によるものだと独自の解釈を加えてくれた。

「僕は、サンフランシスコで発生した『フラワームーブメント』が今のkawaii人気に近い現象だと思っているんです。60年代のベトナム戦争で若いエネルギーが犠牲になり、軍需産業で経済が活性化していく。そんな、戦争やテロからイメージされる白や黒、迷彩といった色の無い世界に対して若者が立ち上がった時代がありました。『ラブ&ピース』と自由を主張して、絞り染めのレインボーカラーやサイケ柄といったカラフルなファッションで大人の作り上げた政治や社会に反抗を示したんです。それと同様に、戦争やテロが繰り返されている現在の世の中において、若い世代は矛盾を感じているような気がします。言葉を持てないために抵抗出来ない若者たちは、無意識にカラフルな色使いや子どもっぽいモチーフのファッションを身につけて『こんな世の中には染まらないぞ』、『そんなオトナにはならないぞ』っていう主張をしているんだと思います。現代社会から生まれたkawaiiは若者のエネルギーの象徴。広まりにはそんな背景があり、若者の存在自体をアピールする意味を持っているのだと思っています。

2011年12月ロサンゼルスで開催したカルチャーイベント「The Roots of Kawaii」での現地スタッフとの集合写真。スタッフは6%DOKIDOKI の大ファンばかり

横浜市の「BankART Studio NYK」にて2013年7月に行なわれた公開制作展での作品

原宿の街の風景画、その街に集まる女の子の心象画として製作した代表作
「 Colorful Rebellion」

僕個人としての『kawaii』の定義は、自分だけの小宇宙を創って、その中に自分の世界観を閉じ込めて愛でること。 これは日本人が古来から持つ繊細な感覚で、『侘び寂び』にも近い。極論で言えば、その感覚の大元は『母性』だと思っています」
今回の個展では、ニューヨークという最先端アートが溢れる街で、彼の作品の原点である「原宿kawaii文化」を紹介 することに挑戦する。「近年は、20年近く活動している原宿から外に出て、自分の作品が他ジャンル、そして世界基準で通用するのか常にチャレンジしてきました。形式がどうであれ、僕の作品の根源にあるのは『原宿kawaii文化』。昨今では表面上の派手さや奇抜さばかりが注目されていますが、誰にも邪魔されずに個人が自由に表現できる自由な場所だということが、この原宿の特異性。それが、世界にも類をみないオリジナルのカルチャーを生み出している理由だと思うんですよね。

今回の個展では、今現在も拡張を続ける『原宿kawaii文化』を、今までの作品のように『外側』から見つめるのではなく、『内側』から見つめる作品…自分自身に焦点をあてた『自画像』として『"Colorful Rebellion" ‒ Seventh nightmare ‒』を製作します。モチーフとなるのは、現在過去未来が交差していく意識の中でもがいている自分自身。3月6日(木)から3月9日(日)の期間は、僕の分身が空間の中に現れて、『七つの大罪』を完成させます。トロントのみなさんもぜひ、観に来てください」。

今後はハリウッド映画やブロードウェイミュージカルの美術や演出など、自分の表現力を試せる大きな舞台に挑戦し ていきたいという増田セバスチャンさん。活躍の舞台を広げて躍進する彼から目が離せない。

〈インタビュー/青木 りえ〉

 
 


Biography

ますだ セバスチャン

1970年生まれ。演劇・現代美術の世界で活動した後、1995年に"Sensational Kawaii" がコンセプトのショップ「6%DOKIDOKI」を原宿にオープン。2009 年より原宿文化を世界に発信するワールドツアー「Harajuku "Kawaii" Experience」を開催。きゃりーぱみゅぱみゅのPVやツアーの美術・舞台演出で注目されるほか、展覧会「もうひとつの内籐ルネ展」、ミュージカル「ウィズ~オズの魔法使い~」などのアートディレクションも手がける。
2014年2月には初の個展をニューヨークにて開催するなど、「原宿kawaii文化」を根源とした表現活動を続けている。個展「"Colorful Rebellion"-Seventh nightmare-」は2 月27日(木)~ 3 月28 日(土)までKianga Ellis Projects(516 West 25th St., Studio 306B, NY)にて開催。

【ギャラリーのサイト】
www.kiangaellisprojects.com

【 オフィシャルサイト】
m-sebas.com