北米で武者修行を続ける第45代無差別級王者
Shigehiro Irie
プロレスラー 入江 茂弘(2017年3月3日記事)

立ち向かえば道はどんどん開いていくんです


大阪出身のプロレスラー入江茂弘さんは、アメリカのプロレスをテレビで見たことをきっかけにその世界に魅せられ、中学2年生でプロレス学校の門を叩いた。20歳でプロデビューを果たした後、24歳の頃にはカナダのケニー・オメガ選手を破り、無差別級王座を獲得する。そんな確固たる実力を持つ入江さんが、無期限のアメリカ武者修行を発表したのが2016年の7月だった。鍛え上げた強靭な肉体と精神で、相手の技に耐えながらも立ち向かう姿には、本場アメリカのリング上でも大きな評価を得ており、去る1月には初のカナダへの遠征を実現。サスカチュワン州から、アルバータ州、マニトバ州、オンタリオ州までを駆けめぐった。日本を飛び出して世界のリングに挑み続ける入江さんは、どのような心意気で日々を過ごしているのか、話をうかがった。

―まずは、プロレスをはじめたきっかけからお話いただけますか?

「小学生の頃に、アメリカのプロレスに夢中になりました。僕が中学生の時に、地元の大阪にプロレス教室ができたのですが、その頃にはプロレスラーになりたいと思っていたので、練習をしに通い始めました」

―当初から海外で活動したいと思っていましたか?

「プロレスを始めた当初は、自分が海外で活動するとは思っていませんでした。そのときの状況でやっていくのが精一杯だったので。今は、もっと上を目指したいと思うようになりました。やはりアメリカのプロレスが好きですし、今の状況だけにとどまりたくないという思いもあって」

―12日間12都市という日程でカナダツアーを行ないましたが、その感想をお聞かせください

「とにかく、ハードでしたね。観光はほとんどできなかったのですが、一番驚いたのはマイナス30度の世界です。寒さで顔が痛いという経験は初めてでしたし、息をするのも苦しいんですね。大雪の中でトラックからリングを降ろすときには、選手同士で滑りながら支え合っていました(笑)」


―海外で活動して半年くらいになりますが、どのような手応えを感じていますか?

「やはり、日本とアメリカのプロレスは違いますね。アメリカとカナダですら異なります。違う環境でいろんなものを吸収できるので、自分にとってスキルアップになるんじゃないかなと。特に魅せ方が勉強になりますね。お客さんをどうやって惹きつけるのかが、アメリカでは重要になってくるんです。というのも、レスラーの人数が日本よりも多いので、いかに自分を印象付けるのかが大事なんです」

―ちなみに、アメリカとカナダの違いは?

「アメリカはマニアックな技が好まれる傾向があります。カナダでは、もっとわかりやすくてシンプルなほうが受けると感じましたね」

―現在の武者修行の日々は、どのように過ごしているのでしょうか?

「試合があると、どうしても帰りが遅くなります。試合後にご飯を食べに行くと夜中になるのですが、さらにみんなでプロレスのビデオを見たりするんですよね。そうなると、寝るのが朝方になってしまうので、起きるのはお昼過ぎ。その後はジムでトレーニングをして、また夜になると試合に向かいます」


―本当に、プロレス漬けの毎日なんですね。では、海外に出てきて良かったと思うことは何でしょうか?

「人の温かさを感じられることです。今は英語がしゃべれないので、伝えたいことが伝えられないし、コミュニケーションも上手に取れない。それでも、プロレスの世界でみんなから声援をいただけて、それが自信にも繋がっています」

―入江選手と同じような状況で、異国の地で頑張っている人たちに励ましの言葉をかけるとしたら、どんなことを言いたいですか?

「僕が試合に挑むときのモットーとして『タチムカウ』という言葉を使っています。これは、僕が入場曲に使っている筋肉少女帯の曲のタイトルで、その言葉の通りになんでも”立ち向かう”ことが重要だと思っています。立ち向かえば、道はどんどん開いていくんです。周りも助けてくれますし、やらなくてはいけないことが、できるようになっていく。自分で自分を追い込んで立ち向かっていることを、人生を通して感じているところです」


―ところで、筋肉少女帯の大槻ケンヂさんに、曲を作ってもらえることになったそうですね。その経緯を詳しくお聞かせいただけますか?

「もともと、僕がずっと大槻さんの曲を勝手に使っていたのですが、2013年の興行の際に、大槻さんによる生演奏で入場させてもらえたんですよ。それ以来、仲良くして頂いていまして。昨年の11月に一時帰国をした際、試合の前に大槻さんにお会いしたのですが、もしも僕が勝ったらオリジナルテーマ曲を作ってくださいとお願いしたんです。すると“会社はちゃんとお金を払ってくれるのか?”と。それで、もしも会社が払ってくれなくても、自分が払います! と言いました(笑)。今年中にできる予定なので楽しみですね」

―ということは、見事に成績を残されたんですね。やはり海外での修行の成果は感じられましたか?

「自分としては、いつも通り戦っていたのですが、お客さんからの反応が違いました。みなさんが“おかえり”と迎えてくれたことが、何よりも嬉しかったですね」

―最後に、海外で活動していく上での目標があれば教えていただけますか?

「何かしらのチャンピオンベルトを持って、日本のみんなに見せたい。それが今の目標です。自分が納得いくまでで思いっきりプロレスをやって、どこまでやれるか挑戦し続けたいと思っています」。


Biography

いりえ しげひろ
大阪出身のプロレスラー。中学2年生でプロレスの世界に入り、2010年よりDDTプロレスリングを中心に活動する。2016年7月より無期限のアメリカ武者修行へ。同年9月には海外初となるヘビー級ベルトを獲得した。

CWE公式サイト:www.cwecanada.net