制御性T細胞の発見により未来のがん治療が変わる!
Shimon Sakaguchi
大阪大学教授 坂口 志文(2016年2月5日記事)
カナダのガードナー財団により、医学に対して顕著な発見や貢献を行なった研究者に与えられるガードナー国際賞。同賞の受賞者の中には、後にノーベル賞を受賞する確率が高いことでも知られている権威ある賞だ。2015年度の5人の受賞者の中には2人の日本人が含まれ、そのうちの1人が大阪大学の坂口志文教授だ。昨年10月には、トロント大学にて受賞理由となった、「制御性T細胞の発見と免疫における役割の解明、ならびに自己免疫疾患とがん治療への応用 」についてのプレゼンテーションを行なった。

—坂口教授が発見された制御性T細胞とは、どういう役割をする細胞なのでしょうか?

「免疫反応を上げて病気を免れるようにするものとしては、予防接種のワクチンが知られていますが、私は、免疫反応をいかに抑えるか、という研究をしております。たとえば、我々の腸内には1kgほどの腸内細菌がいるのですが、それらの反応が活発だったら毎日お腹が痛くなってしまいます。そのような免疫反応を抑えるメカニズムはなんだろうか? というのが私の研究テーマです。そして、その中で“抑える”という機能に特化したリンパ球、制御性T細胞というものを見つけました。この制御性T細胞が異常になると、いろんな病気になってしまうし、それを増やすと病気を抑えられることがわかっています」

—制御性T細胞の発見により、今後、がん治療はどのように変わるのでしょうか?
「がん細胞に対して免疫反応を起こすにはどうしたらいいか? 制御性T細胞により免疫力が抑えられているわけですから、免疫反応を起こすにはその抑えを外してやればいいわけです。制御性T細胞という細胞が、どのように作られて、どのような機能を発揮するか、どのようにコントロールできるのかということを研究した結果、制御性T細胞を減らすと、免疫反応が高まることがわかりました。これまでがんの治療法としては、抗がん剤や放射線療法など、がん細胞自体を縮小、消滅させようとする治療法でした。そうではなく、がんを攻撃するリンパ球をいかに強くするか、というのが我々のやっていることです」



— 冬の時期には、免疫力の向上が風邪の予防になる、ということを耳にしますが、免疫力というのは簡単に上がるものなでしょうか?
「理屈としては可能だけれども、実際はそれほど簡単ではないです。少し上げるくらいであれば、薬を飲めば可能になります。花粉体質の人だと、花粉が飛ぶ季節になる前に薬を飲んでおいて、アレルギー反応を抑えたりしているのがいい例です」

—ご自身のことについてお訊ねします。研究者になろうと思ったきっかけを教えてください

「医学部を卒業して医者になるという道もありましたが、病気のメカニズムを研究していくうちに、わからなかったことが、わかるようになっていき、それがどんどん面白くなってきて、ここまできたというところです」

—研究者を目指す若者にアドバイスをするとしたらどんなことでしょうか?

「1つのことに邁進することだと思います。何が評価されるのかという、未来のことは予測できないわけですから。自分にとって興味があるもの、そしてそれが重要だと思ったら、固執すること。それはサイエンスに限らず、どんな場合でも大事だと思いますね」。


 
 


Biography

さかぐち しもん

医学博士。京都大学医学部卒業。米国ジョンズ・ホプキンス大学客員研究員、米国スタンフォード大学客員研究員、米国スクリプス研究所免疫学部助教授などを経て、 2013年大阪大学特別教授。自己免疫を抑制する特異なT細胞である「制御性T細胞」の発見で、ウィリアム・コーリー賞、武田医学賞、慶應医学賞、紫綬褒章、朝日賞、日本学士院賞、ガードナー国際賞など多数の賞を受賞。