飾らない心地よさ
山木 将平
アコースティックギタープレイヤー(2011年07月15日記事)

自然、そして人との出会いから生まれる音

カラリと晴れ上がった空に、涼やかな風。そんな軽やかなトロントの夏には、沢山のイベントが開催される。6月24日から10日間に渡って開催された『トロント・ジャズ・フェスティバル』も夏の人気イベントの1つ。このフェスティバルを皮切りに、『スカボロー・ジャズ&ワールドビート・フェスティバル』、『ビーチーズ国際ジャズ・フェスティバル』と盛りあがりを見せていくジャズシーン。そんなトロントのジャズシーンはもちろん、『The REX』に集まった音楽ファンを唸らせた日本からのアーティスト2組を2回に分けて紹介したい。

まず今回は、アコースティックギターを奏でるソロアーティストの山木将平さん。柔軟で繊細だけど大らか、そしてなんとなく大地の匂いのする彼の音楽は、21歳という若さだけが注目の理由ではない。彼は、日本国内でも特にジャズ愛好者が多いとされる北海道での一大ジャズイベント、サッポロシティジャズの一環であるパークジャズ・ライブ・コンテストで優勝を飾る、という折り紙つきの先鋭アーティストなのだ。
同コンサートで審査員特別賞に輝いたフラリーパッドのお2人とともにトロント・ジャズ・フェスティバルへの出演を勝ち取り、今回、初の海外公演となった。

「カナダは自然が沢山あっていいですよね」
ステージ上よりも、ややリラックスした雰囲気で山木さんはフラリーパッドの2人に話しかける。「本当にそうですね。カナダは広いですしね」と応えるフラリーパッドに、
「ちょっとトロントの(ダウンタウンから離れて)田舎に行くと、本当に広いなって思いますよね。車で走ると、北海道に近い(似てる)なって…。あぁ、このへんは ”千歳“の辺りみたいだな、って思ったところもありますよ(笑)」
と、北海道出身の山木さんは笑う。

山木さんとフラリーパッドは、昨年、札幌のフェスティバルで知り合い、今回トロントのイベントでは観客サービスとしてセッションも行なった。トロントの音楽ファンは、北海道と京都の実力派若手アーティストが同じステージに立つ、稀有なチャンスに恵まれたのだ。

注目を集めるアーティストながら今でも道内を拠点に活動をしている山木さん。
「フラリーパッドのお2人は、京都出身なので、なんとなく“はんなり”した感じがしませんか?(山木さんの問いかけに笑うフラリーパッド)
育った環境って音楽に出ますよね、やっぱり。僕は、北海道出身だから『自然』の影響が出てると思います。自然の美しさみたいなものを音で伝えるというようなことが1つのテーマというんでしょうか。ファーストアルバム(North Wind)は、そういう感じになっています。もう1つ(のテーマ)は『人』です」
山木さんの音楽から大らかさが漂うのは、彼の後ろに北海道の大自然が広がっているのを感じるからだろうか。彼に、曲作りについて聞いてみた。
「海外では、日本的なものが聴きたいっていう人も結構いますよね。日本を感じさせるものは海外(のオーディエンス)にはいいかも知れませんね。でも、日本を特に意識して作った曲はありませんね。すこしだけ日本を感じさせるかもしれないな、という曲はありますが、曲を作るときに“こういう感じのを作るんだ”と思って曲ができる、ということはあんまりないんです。
インスト(インストルメンタル・ミュージック)っていうのは、歌詞がないじゃないですか? だから、固定した概念を提示させないもの、その分、自由な広がりを持っていると思います。だから僕も、自分が感じたものを自由に作っています。逆に、だからこそ、自分自身が音楽以外の部分で、色んな経験をしないといけないな、とは思っています」

山木さんは笑って続ける。
「そのために、わざわざ変な体験をしたりね(笑)。(例えば? という質問に少し考えて、)豪雨の時に雷が鳴る中、半そで短パンでわざわざ橋の下までタバコを吸いに行ったり…(笑)」
山木さんのお話を聞いていたフラリーパッドのお2人と、思わず笑ってしまう。「まあ、これは極端に変なことですけど、日常生活でそういう刺激が途切れないようにしてます」

そんな刺激を求めてだろうか、日本から同行のサッポロシティジャズの方からの情報によると、来加早々、あるバーで飛び入りパフォーマンスを行なったという。
「ゲリラ的に、何かやりたいな、と思って…。お客さんたちは、“この日本人、何だろう?”って思ったかも知れないですけど、僕の事を全く知らない人ばかりの中での演奏でしたし、自分の音楽がどう聞こえてるかな、っていうのがお客さんの反応で直接分かるから、すごく楽しかったですよ。
今回のイベントでは、日本の方じゃないかな? というお客さんが結構来てくださっているのが見えて、うれしかったですね。温かく支えてもらえました。
ここ(The Rex)はジャズバーですけど、いいものだったら、ジャズが好きで、ジャズしか聞かないという人にも届くと思います。『どんな音楽やるの?』って聞かれた時には、『こういう音楽をやります』という事はあるけど、結局、音楽のジャンル分けっていうのは、カテゴライズしないと、その音楽について言及し難いからするだけだっていう気がしています」

どこまでも自由でレイドバック、遊び心に溢れる山木さん。イベントでのMCも、初めての海外公演だとは思えないほど英語を器用に操り、そのユーモアで観衆を沸かせた。
「初めての海外公演は、すごい刺激をもらうことが出来ました。今まで日本の中でいろいろやってましたけど、世界って広いなって改めて感じましたし…。
またカナダに来て、生で演奏を届けることができる、そんな機会があればいいなと思います。カナダとか、日本を離れたところで日本人に会うと、やけに絆を感じるじゃないですか(笑)。だから、見かけたら話しかけてください」

ブルースから音楽の世界に入ったという山木さん。ブルース、ジャズ、イージーリスニング…そんなカテゴリーの枠を飛び越えたところで人の心に共感を求めるのが彼の音だ。ゆっくりと柔らかい音色を紡ぎだしたかと思えば、ボディを叩き、弦を細かく指ではじく…。そして、限りなく心地よい。
ギター一本から様々な色で空間を染めるミュージシャン・山木将平。カナダ・トロントで、彼の音楽をまた聞きたいと思う。きっと今年よりもひと周りもふた周りも大きく、深くなった音で観衆を驚かせてくれるだろう。

 
 


Biography

やまき しょうへい 1989年10月3日札幌生まれ。13歳よりギターを弾きはじめる。昨年、ギターコンテスト『FINGER PICKING DAY 2010』に参加し、「アコースティック・ギター・マガジン賞」を受賞。同誌の相川編集長に“今後期待の逸材”と評価される。また、『Sapporo City Jazz パークジャズコンテスト』にて優勝を飾り、11年のトロント国際ジャズフェスティバルに出演。今年1月には、デビューアルバム『NORTH WIND』をリリース。
yamakishohei.web.fc2.com

NORTH WIND 「NORTH WIND」
今年1月にリリースした待望のデビューアルバム。
生まれ育った北海道をイメージしたという。