鹿児島から世界を目指す脳震盪系ギターロックバンド
Suichu Blanco
ロックバンド 水中ブランコ (2015年7月3日記事)
▲ 左からリュージさん、井上雄太さん、ヒダカユイさん

日本語をのせても世界で伝わる音楽を

6月17日から21日まで行なわれていた音楽を中心にしたイベント「North By Northeast(NXNE)」。今年で21回目を迎えたNXNEでは、カナダ国内やアメリカで活躍するミュージシャンに加え、北米以外のバンドも多数出演。ダウンタウンのライブハウスなどでそれぞれライブが披露された。日本からは、ギター&ボーカルの井上雄太さん、ベースのヒダカユイさん、ドラムのリュージさんの3ピースバンド、 鹿児島を拠点にライブ活動を展開している水中ブランコが参加。イベント開催初日に The Silver Dollar Roomにてライブを行なった彼らに、井上さんを中心に話を伺った。

▲6月17日、NXNEでの公演


―まず、バンド結成のいきさつを教えてください

井上さん「水中ブランコの前にもバンド活動をしていたのですが、そのバンドのメンバー2人が医者になったので、解散してしまったんです。それで、大学のサークルの後輩のユイ、高等専門学校の後輩のリュージの2人に声をかけました。当時、2人ともバンド活動はしていなかったのですが、ライブを見に行った先で2人を見かけることが多かったので、そういう(ライブを見るのが好きな)人と一緒にやれたら楽しいだろうな、と声をかけて以来、今に至っています。今年の7月で結成してから6年になります」

―鹿児島の音楽シーンはどんな感じですか?

井上さん「音楽シーンから鹿児島を盛り上げようとしているイベンターの方々がいらしたり、鹿児島のミュージックシーンを熱くしようという空気はあります。意外と海外に行ったことのあるバンドが多かったりもするんですよね。不思議な地域性があります」

▲2013年、台湾のロックフェスBeastie Rock Festival 4.0にて © Spacerocker Photography


―海外公演は、これまでニューヨークと台湾で経験されていますよね。それぞれどういうきっかけで実現したのですか?

井上さん「ニューヨークの公演は、日本で公演をしていた日本人とアメリカ人のツーピースバンドに話しかけたのがきっかけで、そのバンドの日本ツアーの時に九州を一緒に回りました。そうしたら、”今度はアメリカでやろうよ“と言われたんですね。そういう個人的なつながりで実現し、ニューヨークのマンハッタンとブルックリンで計8回ライブをしました。台湾のライブはそのニューヨーク公演の時に宿泊先で知り合った人の縁で、台湾のロックフェス『Beastie Rock Festival 4.0』に参加しました。台湾はアメリカに行った3か月後のことで12日間ほど滞在し、フェス以外にもライブをしました。台湾の同じフェスには去年も呼ばれて、2年連続で参加したのですが、ヨーロッパやアメリカ、韓国、中国、日本など、100バンド以上が参加しているフェスで、ファンの人がめちゃめちゃフレンドリーでしたね。音を気に入ってくれたら、国籍関係なく盛り上がってくれて、終わった後に声をかけてくれたり…」

―今回カナダのイベントのNXNEに興味を持ったのは、どういう理由からですか?

井上さん「そもそもカナダに興味を持つきっかけになったのは、水中ブランコのアルバム『vero』のプロデュースをしてくれたズボンズのドン・マツオさんの影響です。ドンさんがすごくカナダで人気があるのもあって、それでエントリーしました。まさか選ばれるとは思っていなかったのでびっくりしました」



―プロデューサーとしてのドン・マツオさんはどのような方でしたか?

井上さん「ライブで見る印象と同じく情熱的な部分、また、厳しい部分はある方でしたが、すごく頭がいい方というか…。1つの音に対して明確に答えが出ている方だなと思いました。オリジナルアルバムはそれまで2枚出していたんですけれど、”この音にしたい“ということを考えることなく、感覚でやっていたので、何を狙ってこの音にしたのか、こういうアレンジにしたのか、ということがあまり明確ではなかったんですよね。ドンさんと一緒にやってから、そこに辿り着くまでの道筋が明確になった感じがあります。レコーディング中も夜は焼酎を飲みながら、ドンさんのブルース講座、ロック講座など音楽講座を聞かせてもらったりして、すごく良い勉強をさせてもらいました。作品自体良いものができたのですが、それ以外にも、得るものがすごく大きかったです。今年秋に発売予定のアルバムは、自分たちでレコーディングをしたんですが、はっきりと自分たちの音が出ていて、しっかり焦点が合わせられたなと思っています。新作はドンさんがプロデュースされた作品と全く違うものができたんですが、自分たちの音がちゃんと出せた作品に仕上がりました」

―「鹿児島発脳震盪系ギターロックバンド」という異名を持ち、ステージではすごくエネルギッシュですが、お話していると、すごくほんわかしたイメージですよね。切り替えは意識的にしているんですか?

井上さん「普段はすごくゆるい、ふわっとしたイメージがあるみたいですけど、ライブはもう別の何かが乗り移ったようになっているとよく言われます。日本でのライブではMCの時にまた、ゆるい感じになるみたいですけど、海外だとMCもないので、そのまま激しい感じですね。どこかでスイッチを入れているわけではないんですけど、ステージに立つと勝手にスイッチが入る感じです。入れようとして、入れているわけではなく、自然にその瞬間に変わるというか」



―最後に、カナダでの初ライブの感想と今後の展望を教えてください

リュージさん「初めての場所なので、いつもより緊張しました。今後の目標としては、英語がしゃべれるようになりたいです」

ユイさん「初めてのカナダ公演でしたので、ここで得た手応えを、次につなげていきたいです。今後も、いろんな場所で友達を増やしていきたいと思っています。人生を振り返った時にいろんなところに友達がいるのはいいなぁと思うので」

井上さん「ライブで披露した曲はほとんど日本語ですが、海外で日本語の歌を歌うことは昔に比べて受け入れられやすくなっていると思うので、音楽を通して、日本人としてカナダ人と仲良くなりたいと思っています。MCとかの英語はタドタドしかったと思うのですが、音楽に日本語をのせて、”日本から、鹿児島からきました“というのがしっかり伝わっていたら嬉しいです。カナダだからカナダの人たちに合わせていこうというのではなく、どこに行っても変わらない自分たちをそのまま表現して、それがカナダ人の友達ともリンクしていけばいいな…と。9月に発売される新しいアルバムもすごく良いものができました。今の段階で今年の海外公演について、台湾以外ははっきりしていませんが、アメリカもツアーでいろんな都市を回ってみたいなとは思っています。同じアメリカであっても、地域によって音楽に対する考え方やライブのやり方などが違うとドンさんから聞いたので、ぜひ経験してみたいと思っています。 新しいアルバムはこれまでで一番、自分たちの音楽を表現することができたアルバムなので、世界のいろんな人に伝えられたらと思っています」

The Silver Dollar Roomでは6バンドが公演し、ステージ上で花火の発射やセクシーダンサーなど、派手な演出で沸かせたバンドの後に登場した水中ブランコ。ステージに立った彼らは、それが持ち味の熱く激しいパフォーマンスで、前バンド以上に会場を巻き込み、最高の盛り上がりでNXNEの幕開けを飾った。


 
 


Biography

水中ブランコ


2009年7月に結成。同年8月に初ライブを行なう。10年1月南九州ロックフェスvolcano10にてオープニングアクトを務め、その後、鹿児島を拠点に九州各地でライブ活動を展開。10年、ファーストフルアルバム『SOLE』をリリース。13年、ニューヨークにて海外初公演。13年、14年に台湾のロックフェス Beastie Rock に出演。最新アルバム『南へ行け‼‼!』は9月に発売予定。


オフィシャルサイト :ryujiblanco.wix.com/suichublanco