毎回大きな目標を設定してクリアするようにしています
Takashi Yamazaki
映画監督 山崎貴(2017年8月11日記事)


小説や漫画は映画とは異なるメディアなので
やはり翻訳作業が必要になるんです


トロント日本映画祭の開会式のゲストとして登場した山崎貴さんは、VFXを駆使した作品を得意とし、数々の話題作を世に放ってきた映画監督だ。
特撮を得意とすることで知られる制作会社、白組にてキャリアを積み2000年に『ジュブナイル』で監督デビューして以来、日本アカデミー賞で多部門を制覇した『ALWAYS 三丁目の夕日』や実写版宇宙戦艦ヤマトの『SPACE BATTLESHIP ヤマト』、人気コミックが原作の『寄生獣』など、人々の心に残る作品を作り上げてきた。
本年度における同映画祭の記念すべき第1本目として上映されたのが、百田尚樹さん原作の『海賊と呼ばれた男』だった。出光興産創業者である出光佐三をモデルとした国岡鐡造の一生を描く物語は、戦後に日本の復興を賭けて奮闘する男の姿を描いた、今の日本に元気を与えるような作品となっている。2013年に同じく百田尚樹さん原作の『永遠の0』を国民的大ヒットに導いた山崎貴さんに、映画作りやVFXのこと、現在手がけている最新作についてまで話を聞いた。


―『永遠の0』と同じく、百田尚樹さん原作の『海賊と呼ばれた男』ですが、映画化実現のきっかけから教えていただけますか?
百田さんから本を渡されたことが、最初のきっかけでした。長い物語で、さらに石油を扱うという作品なので、果たして映画になるのか疑問に思いつつ。しかしながら、日本テレビの方をはじめ、映画にしたいと言ってくださる方がいて。『永遠の0』も自分がやったので、ほかの人にやられるのは悔しいなと思っていました。最終的に、本をいただいてから2年後くらいに実現しましたね。

―主人公を演じた岡田准一さんは『永遠の0』からの同じチームメイトですね。配役を決めた理由は?
『永遠の0』と『海賊と呼ばれた男』は、百田さんの作品の中でも特徴的な2作であり、姉妹作と言えるんです。その両方を岡田君が演じるのは、なかなか面白いなと。それから、物語では主人公の若い頃から年老いた頃までを描いているのですが、どの年代も1人の役者さんに演じて欲しかったんです。そうすると、若い頃はともかく、歳をとった頃も魅力的に演じられるキャストじゃないといけない。それをできるのが、岡田君なのかなと思いました。

―原作があるものを実写化する際、どのような工夫をされているのですか?
小説や漫画は映画とは異なるメディアなので、やはり翻訳作業が必要になるんです。思いとしては、できるだけ原作の印象を変えないようにしたいなと。ただ、単に移し替えるだけではメディアが違うので、うまくいかないと思うんです。ですから、映画的な翻訳をすることを意識しますね。

―白組でキャリアをスタートされた山崎さんですが、当時と現在で大きく変化したことはありますか?
僕が仕事を始めたころ、VFXを表立って使うような映画はなかなかありませんでした。いわゆる、特撮モノと言われている『ゴジラ』などはありましたが、VFXを軸にした映画はあまり無くて。ですから、どうしてもCMや映像の仕事がメインになっていたんですよ。いつかVFXが大きな役割を果たす映画作りに関わりたいと思っていたのですが、機会を得られずいました。どうすればいいのか考えた結果、自分で作るしかないという結論に達しました。最終的にやりたい企画を遂行する人、すなわち監督になるしかなくて、覚悟を決めた感じでしたね。当時に比べると、VFXを使った映画はかなり作りやすくなっていると思います。

―やはり、テクノロジーの発達が理由でしょうか。
そうですね。一番大きいのは、今までできないと思っていたことがやれるようになってきたこと。それから、映画とテレビの差別化も考えるようになってきていると思います。通常の人間ドラマでは見られないものを提供するのにVFXは有効な手段になりますし、VFXの登板回数も増えていることを感じますね。

―テクノロジーが発達する一方、アナログ回帰の動きもあらゆる分野で散見されます。映画の撮影技術に関しても、同じことは言えますか?
自分のポリシーとして、撮影できるものは実物で撮影しています。すべてVFXで撮ってしまうと、薄っぺらいものになってしまうというか。何でもVFXで処理していると思われがちなのですが、実はかなりのところで粘って実物で撮り、どうしようもない部分はVFXを使うんです。実在のものが持っている力は、やはり大きいですからね。さらに、最新の技術に対してもアンテナを張っていて、新しく可能になった技術を積極的に取り入れながら挑んでいます。VFX技術は、どんどん進化させていかないと、陳腐になってしまいますし、毎回大きな目標を設定してクリアするようにしています。

―現在は『DESTINY 鎌倉ものがたり』の製作中でしょうか?
CG処理を行っているところです。巨大な滝が出てくる場面があるのですが、今回ナイアガラの滝に行って素材を撮ってきましたよ。

―見どころを教えていただけますか?
日本人らしいファンタジー映画だと言えますね。妖怪や黄泉の国が出てくるという。あまり日本では作られてこなかったタイプの映画でもあるので、どうなるのか未知数の部分が多いんですよ。自分でも楽しみであり、怖くもあります。前半はかわいらしい夫婦の話なのに、後半ではかなりVFXを駆使するので、今のところ編集チームがキョトンとしている状態ですね(笑)。

―最後に、映画監督として幸せを感じる瞬間をお聞かせください。
自分以外の人が、いい仕事をしてくれたときでしょうかね。共同作業なので、自分で何かを成し遂げるよりも、自分以外の人が力を発揮してくれた時に作品がぐっと高まるんです。その瞬間が嬉しいですね。




Toronto Japanese Film Festival
第六回トロント日本映画祭

海賊と呼ばれた男
A Man Called Pirate
© 2016 Fueled: The Man They Called “Pirate” Film Partners ©Naoki Hyakuta/KODANSHA LTD.


監督:山崎貴
上映時間:140分
出演:岡田准一、吉岡秀隆、染谷将太、綾瀬はるか ほか





Biography

やまざき たかし
『未知との遭遇』に影響を受けVFXの道を目指し、1986年にCGやVFXを得意とする制作会社、白組に入社し2000年に『ジュブナイル』で監督デビュー。2005年の『ALWAYS三丁目の夕日』で多くの賞を獲得しVFXディレクターとしての名を確立した。