究極のエンターテナー
The Art of Drumming TAO
和太鼓集団 タオ(2012年4月6日記事)

人を幸せにしてくれる和太鼓の波動

Yoshinori Suitoこれまでの和太鼓の概念を覆すようなエンターテインメント集団がトロントで公演を行なった。3月30日、ソニーセンターに集った満員の観客は舞台に釘付けとなる。そして、総立ちでそのパフォーマンスに拍手を贈った。舞台上で、熱い視線を集めるグループの名前はTAO。九州を拠点とする音楽エンターテインメント集団だ。

「現在、僕達の本拠地は大分県です。高原の中で、みんなで一緒に住んでるんですよ。コンビニやスーパーなども周りにはなくて、そこで寝てるか、飯食ってるか、太鼓叩いてるか、っていう感じで(笑)、共同生活をしています」

インタビューに答えてくれたのは、TAOメンバーの水藤義徳さん。

「大自然に囲まれているので、何時まで練習してもいいんです… 夜中までドンドンやっても、牛ぐらいしかいない(笑)。集中できる環境ですね。でも、あまりストイックにはしたくない、と思っているので、自分達で楽しむようなバーなども作っています。そういう共同生活の中では、太鼓を叩くだけでは足りないんですよね。太鼓って不思議なんです。例えば、ご飯を作るのが上手だったりとか、”掃除はお前、きっちりやるね“ というところをどんどん伸ばしていくと、それがそのまま舞台で生きるようになってくるんです。『生活、即、舞台』。太鼓は叩けば誰でも音が出る非常に単純な楽器なので、自分の持っているものが現れてくるんです」

太鼓三昧の毎日を、水藤さんは”舞台をすることが目的で集まっている僕達にはこれしかない“と語る。そこから出来上がってきた楽曲を持って、世界を股に掛けて活躍している。

「今回の北米ツアーは2回目で、朝移動して本番、そこから片づけしたら深夜で、寝て起きたら早朝にまた移動… というスケジュールですね。バス1台で移動するんですけど、僕達は舞台を設営したりする準備も全て自分達でやっているんです。照明と音響さんも一緒に日本から来ています。ただ、”演奏をする“というだけじゃなく、総合的にエンターテインメントとしての舞台の全てにこだわりを持って自分達でセッティングしています。だから、いかにやり易い環境を作って、安心して演奏をし、自分達の魅力を引き出せるか、っていうことを大切にしています」

こだわる理由は、演奏に掛ける思い。今回、トロントで披露されたステージも、深い思い入れがある。

「1年前、日本で大きな震災があったじゃないですか。その震災への復興の願いを込めて作った作品です。深刻な状況にいる日本人を励まし、勇気付け、笑わせることに視点を置いて作りました。
また、北米ツアーにあたり、『オペレーション・トモダチ』として支援をしてくださったアメリカ軍をはじめ、海外の皆さんへのお礼をするつもりでやろうよ、と言っています。”皆さんありがとうございました。日本は元気ですよ“ ということを伝えられたらいいな、と思っています」

水藤さんがそう語るTAOの楽曲は、今回のステージだけでなく、新しい息吹を感じさせるものばかりだ。

「そうですね。太鼓って言うと、どうしても伝統芸能だ、ということになりますが、僕たちは、そのにおいを一切取り除いて、和太鼓を一つの表現手段として、より現代的でモダンなステージになるよう心がけています。もちろん伝統を無視しているわけではないですが、きっちり太鼓を叩けるようになったら全く新しい視点から考える。そして、その中から出来た総合的な作品を、例えば、ミュージカルを観に行くような、そんな感覚で楽しんで欲しいと思います。太鼓を知っている人も、知らない人も楽しめる、幅の広い層に分かりやすいように、というステージを目指しています」

もともとロック音楽をやっていたという水藤さん。彼自身も、伝統的な和太鼓の舞台よりも、太鼓が持つ、別の魅力に惹かれたのだという。

「ロックはまあ、若い頃ですね(笑)。僕、エレキギターをやっていました。ドラムではないですよ(笑)。
若い頃に衝動に駆られてやったんですけど、ロックって輸入された文化ですよね。でも、和太鼓に出会ったときに、日本人だったらこれを使って、もっと面白いことをやったらいいんじゃないかと思ったんです。
それまで、太鼓に特別な興味があったわけではないです。でも、TAOの原型となるチームがありまして、その舞台を観たんです。お祭りの太鼓ではなく、みんなで演奏する太鼓を見たときに、”これ、面白いな“ と思ったんですよ。和風のバンドみたいな感覚で…。太鼓って言葉がないから、ひょっとしたらこれで簡単に人種も超えられるんじゃないか、それに、一番シンプルなところで何でも出来るんじゃないか、と感じたんです。なにより、日本人の血が騒ぎましたね」

現在、その言葉通り、人種・言葉の違いを飛び越えて世界から高く評価されるTAO。彼らの『エンターテインメント』へ掛ける情熱はとどまる所を知らない。

「TAO は、研修としてラスベガスのショーを観て回ったりしているんですよ。同じ太鼓だけじゃなくて、どうやったら人を楽しませることが出来るのか、エンターテインメントとは何ぞや、ということを考えるために…。井の中の蛙、になるのではなく、地球規模のクオリティで自分達を見ていきたいと思っています。そして、出来るだけ多くの人に、楽しんでもらいたいですね。
太鼓には人を幸せにする力があるんですよね。僕、これまで18年くらいやってますが、不思議なことに病気にならないんです。太鼓から発せられる波動が、気の流れを良くするというか…。病気も治っちゃうんじゃないか、と思うほどです。不思議な楽器なんです、太鼓って。言葉を超えて、皆さん同じように感動してくれるし、涙も流す。だから、この楽器をもっともっと聴いてもらいたい。世界中に広めていきたい、そう思っています」。

  
Biography

タオ

九州を拠点とする音楽エンターテインメント集団。和太鼓をひとつの表現手段とし、独自のスタイルを確立、従来の和太鼓の概念を覆す。結成17年。これまでに世界17か国・400都市以上にて公演。観客動員数は500万人以上。英国の音楽祭「エディンバラ・フェスティバル・フリンジ」出演やバンクーバーオリンピックへの招聘をはじめ、世界的に高い評価を受けている。現在北米ツアー中。米各メディアは「かつてない日本の新しいエンターテインメントショー」と称している。
www.drum-tao.com