無尽蔵のエネルギーを発散させるカリスマバンド
The Zoobombs
オルタナティブ・ロックバンド (2015年4月17日記事)
Ⓒ Takahiro Higuchi

言語や民族を超えて共感できる音を届けたい

5月1日から10日に亘り開催される「カナディアン・ミュージック・ウィーク(CMW)」。カナダ国内そして海外のアーティストが集まり、音楽ライブやフィルムの上映などが行なわれるイベントだ。今年は、CMWに日本のバンド「ズボンズ」が登場する。1994年に結成されたズボンズは、日本国内にとどまらず、海外にも熱狂的なファンを持ち、トロントの公演は毎回ソールドアウト。一昨年前の活動休止からメンバー編成を経て、新たな飛躍を試みる新生ズボンズは、トロントでどのようなステージを見せてくれるのか。メンバーのドン・マツオさんに話を伺った。

―まず、新生ズボンズのメンバーについて紹介をお願いします

「バンドのオリジナルドラマーで、98年に初めてトロントでライブをした時も一緒に演奏をしたブッカビリーが15年振りに戻ってきました。ボクとブッカ、そしてマッタ(活動休止以前からのメンバー)の3人が”ズボンズ2015バージョン“の正式なメンバーとなります。この3人に加えて新しく、マチコがサポートとしてベースをプレイします。彼女はボクと同じく九州出身で、23歳の若い女性ミュージシャンです。トロント公演を含め、カナダツアーはこのメンバーで初めてなので、演奏にどのような魔法が起こるのか、ボクとしても楽しみです」

―これまで何度も海外公演をされていますが、新たなメンバーでのカナダ公演。意気込みは変わりますか?

「これまでは、海外の音楽ファンが驚くような演奏をやらなければと鼻息を荒くして臨んでいたのですが、今はこのままの自分とズボンズを見てもらうことが一番かなと考えています。バンドで海外に出るということは結構大変なことなので、いつまで出来るかわからない、という思いもあります。それならば、なるべく多くを見て、体験して、伝えていければ本望ですね。民族や言語を越えたところで共感できるロック、音楽に辿り着ければという思いがあります」

左からブッカビリー(Dr)、ドン・マツオ(Vo, G)、マッタ(key, Vo, G)Ⓒ Takahiro Higuchi


―2月に発売されたドン・マツオさんのソロアルバム「Arcadia Blues」は、今までの楽曲から雰囲気ががらりと変わった印象を持ちました

「ボク自身が目指すミュージシャン像は、芯をしっかりと保ちつつ、表現としてのスタイルは常に革新し、挑戦し続ける存在です。ある時は変化が受け入れられない場合もありますが、良い事であれ、悪い事であれ、起こったことから多くを学ぶことになります。ボクは根本的にはザ・ローリング・ストーンズに代表されるクラシック・ロックを好んでいますが、一方で現在進行しているヒップホップにも同時に惹かれます。若いヒップホッパーたちのクールでハチャメチャな実験や挑戦は、とても刺激になっていて、それらを含めた現時点での音楽的消化が今回のソロアルバムに集約されています」

今年2月に行なわれた東京、下北沢BASEMENT BARでのライブ Ⓒ Takahiro Higuchi


―ソロで表現したいこととバンドでやりたいこととは、目指す方向性は違いますか?

「基本的には同じですが、バンドの作品を制作している時は、常に他のメンバーが作品の仕上がりをどう思うか、ということを意識して作っています。直接あれこれ言われることはないのですが」

―ソロとバンド、それぞれの活動の醍醐味を教えてください

「ライブに関して言うと、ソロの場合は全てのライブをその日限りの寄せ集めメンバーでやるので、大勢のミュージシャンと直接交流を結ぶことが出来ます。ソロでのライブは、共演するミュージシャンたちに先に音源を聴いてもらっておいて、当日のサウンドチェック時に、1時間ほどの音合わせをするだけで本番に臨みます。ですので、演奏の70%くらいはミュージシャンの直感に頼ったインプロビゼーション(即興演奏)です。これは相当高い集中力を伴うコミュニケーションとなりますが、それぞれが力の限りを尽くす事で、結果的に、非常に大きな音楽的達成を得られる場合が多いです。一方、バンドの場合は同じ試みを同じメンバーで続けていくという”継続から生まれる深さ“への探求です。ワインや味噌と同じように、長い年月を経ることで得られる成果を見ることができるということでしょうか。ロックは常に新鮮なものが求められるので、長くバンドを継続しながらも、”新鮮さ“を保つ努力を強いられます。その中で、”どのような音楽を実現出来るのだろうか“ということがボク自身、一番興味のあるところです。時間だけは、延べででしか重ねていくことが出来ません。その一朝一夕では到達できない、かけがえのない経験値を思うと、バンドを長く続けていて良かったと思いますね」

今年2月に行なわれた東京、下北沢BASEMENT BARでのライブ Ⓒ Takahiro Higuchi


―20年以上も音楽活動を続けている、ご自身の音楽活動のエネルギーの源は何ですか?

「自分の人生を顧みて、ボクは音楽に余りに沢山の恩恵を与えてもらってきたと感じています。音楽の無い人生を想像するのが怖いくらいです。音楽がボク自身にも見えなかったドアを開け、エネルギーを引き出し、今に至るシチュエーションを結果的に作ってくれました。音楽が自分に与えてくれた恩恵を他の人に与えることが音楽を作り、演奏をするモチベーションになっていると思います。そのようなサイクルの上にある時、エネルギーは無限に与えられるものなのかも知れません」

―トロントには何度も来られていますが、トロントのファンの印象を聞かせてください

「トロントのファンは、ボクらを深く愛してくれていて、そのことにとても感謝しています。かれこれ付き合いも16年以上になりますが、その間ずっとボクらの心の拠り所でもありました。とりわけ、ボクらを最初から愛してくれた今回の公演の会場ともなるザ・シルバー・ダラー・ルームのプロモーターであるDan Burkeさんの力添え無しではここまで来れなかっただろうと、感謝の気持ちでいっぱいです」

―そのシルバー・ダラー・ルームでの公演では、どのようなセットリストになる予定ですか? ソロアルバムの楽曲などは含まれますか?

「新しいメンバーになるので、ここ数年の演奏とは違うものになるだろうと思います。ソロアルバムからも新しいマテリアルを投入して、新旧織り交ぜたものをエイッと”今“の新鮮な商品としてお店に並べる、そのような心持ちです。気に入ってもらえるとうれしいです」

―最後に、今年のズボンズの活動予定を教えてください

「このカナダツアーの間にバンドとして、よりタフに、結束も強くなると思います。そこから次への可能性とヒントを持ち帰りたいですね。新しいズボンズは、カナダで産声を上げることになります。その後は帰国して新しいアルバムを作り、また、カナダに戻って来たいです」。


ライブ情報


【The Zoobombs】
■ 日 時:5月1日(金)、2日(土)24時~
■ 場 所:The Silver Dollar Room(486 Spadina Ave.)
■ 入場料:$10
■ サイト: thezoobombs.com

【CMW】
■ 日 時:5月1日(金)~10日(日)
■ 場 所:トロント市内各所
■ 入場料:各アーティストによって異なる。10日間通しのリストバンドは$100 ※税別
■ サイト:cmw.net/music


 
 


Biography

The Zoobombs


1994年9月に結成。現在のメインメンバーはドン・マツオ(Vo, G)、マッタ(Key, Vo, G)、ブッカビリー(Dr)。 2009年、結成15周年記念として自主レーベルDonuts Wormを設立。12年夏に10作目に当たるアメリカで録音したアルバム「Sweet Passion」を日米同時にリリース。14年2月、ドン・マツオのソロアルバム「Arcadia Blues」を発売。

【サイト】オフィシャルサイト thezoobombs.com