奄美の島唄、津軽三味線、和太鼓の競演トロント特別公演
「紡-Tsumugu-」
Anna Sato Keita Kanazashi Chie Hanawa
奄美の島唄の唄者 里 アンナ & 和太鼓/篠笛奏者 金刺 敬大 & 津軽三味線奏者 はなわ ちえ(2016年2月19日記事)

音色から感じて欲しい日本文化の魅力

今年で3回目となる日系文化会館での和楽器奏者の特別公演。「紡-Tsumugu-」と題し4月7日(木)に行なわれる第3回目は、奄美の島唄の歌手、里アンナさん、津軽三味線奏者のはなわちえさん、和太鼓奏者の金刺敬大さんがこの日のために新ユニットを結成してステージを披露する。それぞれ個々に国内外で活躍されている3人に話を伺った。

―この企画のコーディネイターをしている沖朋奈さんにより、まず金刺さんに依頼があったと伺いましたが、どういう経緯でこの3人で、と思われたのでしょうか?


金刺さん(以下敬称略)「過去2回は男性和楽器奏者での公演で、今回は違うイメージにしたいというリクエストがあり、それだったら今回は女性の奏者を前面に出したらどうかと提案しました。お話をいただいた当時、自分自身が奄美の島唄にちょうど興味を持っていた時でもあり、まず、里さんに声を掛けました。そして沖さんから、三味線奏者を入れて欲しいとのリクエストがあり、女性の三味線奏者なら是非、はなわさんにと思い、お忙しい中お願いしました」

―それぞれ、島唄、三味線、和太鼓との出会いを教えてください

「島唄は、3歳の頃から祖父に教えてもらっていて、物心つく頃から自然に歌っているという状態でした。でも、 歌う時はおじいちゃん、おばあちゃんと接していて、学校で誰かと島唄について語ることなどなく、同級生とは共有できませんでした。当時はそのことが少し嫌だと思っていた時期もあったのですが、1度大きな病気をして、もう歌えなくなるかもしれない…という状況になった時に、“歌えなくなるなんて絶対に嫌だ!”という強い思いが出てきて、それからは、友達と共有できる、できないなどは関係なく、“歌いたい”という気持ちが強くなっていきました。高校を卒業して上京し、ポップスの歌手としてデビューしましたが、自分の原点に戻ろうと思ったのが2、3年前のことで、その頃からライブでも島唄を歌うようになりました。
奄美大島は昔は琉球王国だった歴史から、島唄の言葉は沖縄の方言なのですが、音階的には沖縄音階(ドレミファソラシドを弾いた時の「レ」と「ラ」を抜いた音階)ではなく、裏声を多用して歌うという特徴があります。奄美大島は、それほど大きな島ではないのですが、車で10分ほど離れた距離であっても、歌い方が微妙に違ったりします。聞けば聞くほど、その微妙な違いが魅力でもあります」

はなわ「もともと祖母が三味線を習っていて、最初は祖母から手ほどきを受けていたのですが、9歳になった時に、この先続けるのなら、ちゃんと習いに行った方がいいと勧められて、近くの教室に通い始めました。三味線は、おばあちゃんたちがやっているものという印象が強くて、先ほどの話と同じく、私も周りと共有はできませんでした。私が習っていた教室では、あまり上手でなくても、とりあえず舞台にあげるという指針を先生が持っていらっしゃったので、私も幼い頃から地域のお祭りや老人ホームの慰問の際に、ステージに出させていただいていました。そこで演奏した後に観客の方からすごくよかったよ、とか、頑張ってね、と言われるなど、喜んでくれるお客さんの反応をダイレクトに受ける環境で育ててもらったので、もっとたくさんの人に聞いてもらって、元気になってもらいたいな、と、やりがいを感じるようになり、自然に、大人になったらプロになりたいな、と思い始めました」

金刺「小学生の頃から地元のお祭りが大好きで、 毎日お祭りに行きたいと思って、10歳の頃に地元の青年団に入りました。僕も小、中、高、大学まで、太鼓をやっている、とは言えませんでした。それができなかったから、 今の子どもたちには気軽に触れて欲しいという思いが強く、学校公演などを積極的に行なっています。歌や三味線も一緒だと思いますが、少しでも子どもたち、また子どもたちに限らず、世界の人に伝えたいというのが1番の思いです。邦楽を通して日本に興味を持ってもらいたい。そういう活動が、ちょっと大それた言い方にはなりますが、世界平和みたいなことにつながっていくのではないかという気持ちで日々を重ねています。お祭りが好き、ということで太鼓を始めましたので、日本のお祭りの、高揚する感じを自分のステージにも毎回求めています。この2人とのカナダでの公演は、今年前半で1番力を入れているイベントであり、今から楽しみにしています」


▲里アンナさん

▲金刺敬大さん

▲はなわちえさん

—海外公演はそれぞれ数多くされていますが、初めてのカナダ公演を前に、意気込みを聞かせてください

「私が歌う曲の大半は方言ですので、そういう意味では言葉の壁を越えて伝わるのかな、というのがありますが、私自身がそれをどう伝えられるかということが課題です。そして何より、私たちの演奏をみなさんに楽しんでいただくことが1番です。そこを共有できたらと思っています」

はなわ「私もこの編成、そしてカナダも初めてなのでイメージがわかないのですが、楽器に関しては音色や日本人独特の間合いなど、その空気感を含めて、日本の文化として感じ取っていただき、楽しんでいただけたら、と思います。私自身、奄美には行ったことはないんですが、島唄を聞いて、なぜか懐かしいな、と思うんですよね。それと同じく、青森が発祥の地である津軽三味線も、青森出身じゃない方が聞いても、“やぁ、懐かしいな”って、思われる人が多いかと思います。そのように私たちのDNAに元からある感情をうずかせる力を日本の音楽は持っていると思いますので、それをステージから放てるように、空気感を丸ごと楽しんでいただけるようなステージにしたいと思っています」

金刺「歌と和太鼓と三味線というシンプルにならざるを得ない編成ですので、それぞれの個性が引き立つような内容にしたいと思っています。今回は、日本女性の強さ、それと日本の文化の良さがかけ合わさった、ビジュアル的にも、音楽的にも、そういうステージを届けたいと思っています。3人が日本から古く伝わる芸能、楽器を選び、それをずっとやってきたからこそ得られたものが伝わり、そこから日本の良さを見出してもらえることができたらすごくいいな、と思います」。  

 
 


Biography

さと あんな

3歳より奄美の島唄を習い始め、島唄の大会で数々の賞を受賞。2005年アルバム「恋し恋しや」でデビュー。08年にリリースした奄美の方言で書き下ろした「吾島(わんしま)」は海外でも発売。13年より、ミュージカル「レ・ミゼラブル」フォンテーヌ役にて出演。シルク・ドゥ・ソレイユの公認ボーカリスト。

オフィシャルブログ:satoanna.artistsite.jp


かなざし けいた

小学生の頃から和太鼓を始め、ソロとしてだけなく、2001年に結成した兄弟3人による太鼓ユニット“は・や・と”としても活動。子ども劇場でのコンサート開催や幼稚園、小学校をはじめとする学校公演、新宿区主催・文化体験プログラムの講師などを務めている。国内および海外での活動も多く、さまざまな世代に向けて和太鼓の魅力を伝えている。

オフィシャルサイト:keita.main.jp


はなわ ちえ

9歳の時、津軽三味線の佐々木光儀氏に師事。17歳で、津軽三味線全国大会A級女性部門の最年少 チャンピオンになる。12歳で海外文化交流公演に参加。2004年、アルバム「月のうさぎ」でメジャーデビュー。 05年、東京芸術大学邦楽科を卒業。様々なジャンルに挑戦する若手女性三味線奏者の第一人者。

オフィシャルサイト:chiehanawa.munique.co.jp