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Umin Boya
映画監督/俳優  ウミン・ボヤ (2014年12月19日記事)


『KANO』で伝えたいネバーギブアップの精神

日本統治下の台湾。嘉義農林学校の弱小野球部に、日本人の監督・近藤兵太郎がやってくる。甲子園進出を目指すという監督の下、厳しい練習に励む部員たちは、次第に勝利への強い思いを抱くようになる…。

今年2月に台湾で公開され、異例の大ヒットを記録した作品は、日本統治下の1931年、台湾代表として全国高校野球選手権大会に出場し、準優勝を果たした嘉義農林学校(通称:嘉農=KANO)野球部の実話を元にしたストーリー。監督は、日本統治下の台湾で実際に起こった先住民族と日本軍との熾烈な戦い「霧社事件」を扱った2部作『セデック・バレ』(2011)に出演した俳優でもあるウミン・ボヤ監督。11月に行なわれたリールアジアン国際映画祭でトロントを訪れた監督に、話を伺う機会を得た。


▲映画『KANO』より

― 台湾での大ヒットおめでとうございます

「ありがとうございます。嬉しい気持ちでいっぱいです。台湾の歴史に触れたこの作品を多くの人々が気に入ってくれたことに感動しています」

― この作品の制作のいきさつを教えてください

「私が出演した『セデック・バレ』のプロデューサー、ウェイ・ダーション氏と一緒に受けたインタビュー中に、彼がベースボール映画のシナリオを完成したと聞いて、その企画に興味があることを伝えたんです。その時点では、俳優として関わるつもりだったんですが、彼の考えは違っていたようで…。私に監督のオファーをしてくれました。理由は私自身に野球の経験があり、野球の大ファンであること、また、テレビ映画のディレクターをしていた経緯があったからだろうと思います。それが『KANO』の制作の始まりでした」

― 日本人の俳優も多数出演されていますが、永瀬正敏さんについてはどこが起用のポイントだったのでしょうか?

「彼は素晴らしい演技力の持ち主だと以前から思っていて、近藤監督はぜひとも彼にやってもらいたいと思っていました。スクリーン上で見る彼のキャラクターが近藤監督とぴたりとはまっていたので」

― 撮影を進めていく上で台湾人と日本人とのカルチャーギャップなどは感じましたか?

「それはありましたが、我々のチームは日本人と一緒に映画を作るのは初めてではなかったので、それほど困難なことではなかったです。すごくいいチームワークだったと思います」



― 制作中、最も困難だったことは何ですか?

「野球のシーンの撮影に一番苦労しました。撮影スケジュールが天候次第になってしまうからです。この物語は、”ネバーギブアップ“というメッセージを伝えるお手本のような物語。それなのに、撮影の途中、私自身がほとんどあきらめそうになりました。撮影期間が延びるのに伴って制作コストが予算オーバーになってしまったことも、大きなプレッシャーでした」

― 嘉義農林学校野球部のストーリーは企画が持ち上がる前から知っていたのですか?

「いいえ、知りませんでした。台湾でもそれほど一般に知られている話ではありません。日本統治下にあったこの時期の歴史について学校では習ったことはありません」

― 個人的にはこの時期の歴史についてどのように思いますか?

「この時期にあった階級や差別などが、未だに台湾社会に存在するのは非常に理不尽なことだと思います。嘉義農林学校野球部のストーリーは、日本統治時代に起こったポジティブな出来事の一例だと思います」



― 日本には行ったことがありますか?

「何度か行ったことがありますが、その前から日本には馴染みがありました。祖父母が子どもの頃、台湾の日本語学校に通っていたので、彼らから日本のことはよく聞いていましたから」

― 全国高校野球選手権大会を甲子園の会場で観戦したことはありますか?

「甲子園には2度行ったことがあります。この企画が始まる直前の2012年春の大会と14年夏の大会です。夏の大会は『KANO』に出演した俳優たちと決勝戦を観戦しました」

― 俳優としても成功されていますが、映画監督を経験されて、監督業のどのようなところに魅力を感じましたか? また、将来はどちらを中心に活動していく予定ですか?

「伝えたいメッセージを自分が思うような伝え方で発表して、それを観客と共感できることが監督の醍醐味だと思いますね。俳優としてでは、自分の思うようにストーリーを伝えることは不可能ですから。監督業のようなクリエイティブな仕事を通して、自分自身をより理解できるようになるというのもありますね。今後も俳優と監督、両方をやっていこうと思っています」



― 少し早いですが2015年の抱負を教えてもらえますか?

「現在、脚本を2本執筆中なので、それを完成させることですね。1本は1980年代に栄えていた台湾の基隆港(きーるんこう)で働く漁師を主役にした話 。もう1本は1944年に起こった台湾沖航空戦のことを扱ったストーリーです」

― 最後に、日本公開を来年1月24日に控えた『KANO』の見どころを教えてください

『KANO』は、台湾と日本の共通の史実です。異なる人種の人々が大きなゴールのために、ネバーギブアップの精神で向かっていくストーリー。映画を見た後はきっと、”あきらめなければ目標は達成できる“という自信が持てるようになると思います。新しい感動を与えてくれるベースボール映画に仕上がっていると自負しています」。


 
 


Biography

ウミン・ボヤ(マー・ジーシアン)


1978年、台湾花蓮出身。2000年に俳優としてデビュー、台湾国内のドラマと映画に多数出演。2011年の『セデック・バレ』では、タイモ・ワリス役で出演。『KANO』は監督として初めての長編映画となる。『KANO』は1月24日(土)より日本国内公開予定。

『KANO』オフィシャルサイト  kano1931.com