外交も友人関係と同様に全人格的なコミュニケーションが大事
Yasunori Nakayama
在トロント日本国総領事 中山泰則 (2015年1月9日記事)

昨年9月8日に着任された中山泰則在トロント日本国総領事。到着したその夜から、トロント国際映画祭関連のジャパン・ファウンデーションで行なわれたパーティに出席するなど、着任以降、外交行事に加え、精力的にトロントの日系社会のイベントに参加している。多忙な中山総領事にトロントの日系社会に対する印象や今後の抱負など、話を伺う機会を得た。

― トロント総領事に着任されて2か月が(11月時点)経ちましたが、街の印象をお聞かせください

「想像していた以上に活気のある街だなと思っています。総領事館の周りは金融街なので、ニューヨークのマンハッタンに似ているような雰囲気がある一方で、少し北に行くと、トロント大学のキャンパスがあり、さらに北に行くと住宅街になり、緑が広がっていて…。とても美しい、住みやすい街だなという印象を持っております」

―着任以降、数多くの日系イベントに出席なさっていますが、トロントの日系社会について、また日系人について、どのような印象を持たれていますか?

「JCCC(日系文化会館)に代表されるように、トロントの日系人の方々は、非常に活発な活動をしておられるのと、みなさんカナダの社会に溶け込んでいらっしゃって、カナダの良き市民として、また、コミュニティの一員として活動されている方が多いと感じました。トロントの日系人と一口に言いましてもいろいろな方がいらっしゃいます。戦前に移民で来られた方もいて、すでに5世になる方もいらっしゃれば、戦後に移民された新日系人の方もいらっしゃり、一言ではなかなか語れない多様性があるなと感じております。また、ワーキングホリデーや留学で、長期滞在の後に永住権を取り、そのままこちらに住まれている方々も、いらっしゃいます。若い人たちが増えているのは日系社会の活性化の上でも大変いいことだと思います」



―留学生というお話が出ましたが、総領事ご自身はイギリスのオックスフォード大学に留学された経験がおありですよね。当時の留学生活はどのようなものでしたか?

「私の場合は、仕事で海外留学をさせてもらいました。当時24歳で、それが初めての海外でした。期間は2年だったのですが、言葉の面でかなり苦労した思い出がありますね。大学の勉強もありましたし、 慣れない土地でわからない英語での生活は大変でした。英語は未だに、勉強を続けているというような状況です。今も新聞や雑誌を読んでわからない言葉が出てきたら、辞書を引いたりしています」

―これまでいろいろな国に赴任されていますが、特に印象深い赴任地はありますか?

「印象に残っているという意味では、1996年から99年まで勤務したインドネシアです。ちょうど政権交代があった時期で、非常にドラマチックで、スリリングなこともありました。外交官として普通は経験できないような貴重な経験をさせていただいたので、そういう意味で非常に印象深いです」

―外交官という職業の概要を教えてください

「基本的には、外国において日本の政府を代表して、相手国との交渉や在留邦人の方々の支援をするのが仕事です。国と国との間で正式なコミュニケーションを取る必要が出てくる際に、相手国にメッセージを伝達をすることです。みなさんおっしゃることではありますが、ただ単にメッセージを伝えるというのではなく、駐在をしてその相手国の政府の関係者と人間関係を築き、そういった個人的な信頼関係に基づいて仕事をすることが大事になります。どうやって相手国政府の方々と友好的な信頼関係を築くのかが大事なポイントだと思っています」

―友好的な信頼関係を築くために心掛けていることなどありますか?

「信頼関係を築く、それは外交官に限らず、友達でも一緒だと思うんですけれど、誠意を持って、相手に接することが大事だと思います。たまに会って話をするだけでは信頼関係は出来ないので。友達の間でもそうですけれど、できる限り頻繁に、コミュニケーションを取っていくことが大事だと思いますね。また、難しい話ばかりをしていても友好的な関係は築けません。時に文化・芸術などの話もしながら、全人格的に相手との間でコミュニケーションを取るということが、信頼関係を築く上で非常に大事だと思っています」



―総領事が赴任されている間に日本とカナダの2国間で新なた交渉提携がされるなど、大きな動きは期待できそうでしょうか?

「日本とカナダの間で経済連携協定(EPA)の交渉がなされております。これについて総領事館なり私個人が直接交渉に関与しているわけではないですが、日本側もカナダ側もできる限り早く交渉をまとめて経済連携協定を連結したいという気持ちは強く持っています」

―在トロント日本国総領事館のフェイスブックでは、日本の文化やトレンドなど興味深い情報を定期的に発信していますが、今後、日本のどのような面をカナダ人にアピールしていきたいと思っていますか?

「ソフトパワーとでもいいますか、日本の文化というのは海外の人に対して非常にアピールできる部分だと思っております。例えば歌舞伎や相撲などの伝統的文化に加えて、いわゆるポップカルチャーといったアニメ、映画、B級グルメといったものが世界で高く評価され、関心を引いているということは日本にとって大変ありがたいことです。普通の日本人がどういうことを大事に思って、何を楽しみに生きているのかという、等身大の姿を知ってもらうということは、大きな意味のあることだと思っています。アニメ、日用雑貨品や食べ物など、そのおもしろさや良さを共感すること、また、日本の社会が重きを置いていることや、大事にしていることを伝えることで、日本に対する理解を深めてもらえると思います。それが日本のいろんな産業や、観光などの振興になっていくわけですので、カナダの人たちにもどんどん知らせていければな、と思っております。特に若い人は、インターネットやSNSなどで情報を収集している人たちが多いですよね。みなさん気軽にアクセスしてくださるので、フェイスブックやホームページなどは強力なツールだと認識しております。今後もそういうSNSを有効活用して、広くみなさんに情報を発信していきたいと思っています」

―最後に2015年の抱負を聞かせてください

「昨年9月に着任してがむしゃらに数か月やってきたんですが、今年からは少しゆっくり腰を落ち着けて、カナダにいらっしゃる日系人を含めてみなさまとじっくり話をして、日本とカナダの関係、友好関係をさらに深めていきたいと思っております。引き続き、走りながらになるかと思うんですが、今までに得た知識と経験を元に、もうちょっとゆっくり見渡して、何ができるかを見極める年にしたいなと思っております」。


 
 


Biography

なかやま やすのり

神奈川県出身。東京大学法学部卒業後、外務省入省。外務省研修で英国オックスフォード大学に2年間留学。外務省では、EU(欧州連合)日本政府代表部参事官、在インドネシア大使館参事官、領事局外国人課長などを経て、2006年、在フィリピン日本国大使館公使、09年、軍縮会議日本政府代表部公使、12年、経済産業省大臣官房審議官(通商戦略担当)などを歴任。