"楽しい"と思える瞬間を大切に
Yoshihiro Murakawa Quartett
ジャズバンド 村川佳宏 Quartett (2014年6月20日記事)

音楽を通してつながる世界や人との出会いがうれしい

6月19日から28日まで開催しているトロント・ジャズフェスティバル。毎年世界各地から著名なミュージシャンが集まり、ダウンタウンの各所でライブが開かれるこのイベントに、今回初めて参加するのが「村川佳 Quartett」。同バンドは、昨年7月に行なわれた、日本国内において最大規模のジャズの祭典「サッポロ・シティ・ジャズ」内のプログラム「パークジャズライブコンテスト」に出場し、グランプリを獲得。その褒賞としてトロント・ジャズフェスティバル出演の切符を手にした。公演は、最終日の6月28日に、市庁舎前にて予定されて いるステージ「Youth Jazz Showcase」にて行なわれる。海外公演は初めてという「村川佳宏Quartett」のリーダー、村川佳宏さんに話を伺う機会を得た。

左から三間大輔さん、木村優さん、村川佳宏さん、伊藤未央さん
写真提供:サッポロ・シティ・ジャズ実行委員

まず、今回トロントのジャズ・フェスティバルに参加するきっかけとなったコンテストについて訊ねた。
「『サッポロ・シティ・ジャズ』は2007年に始まったフェスティバルで、いろいろなバンドが野外ステージで演奏するという主旨のイベントです。その中の『パークジャズライブコンテスト』は音源選考による10組が、最終日にグランプリを競うというイベントです。僕たちが参加した昨年度の参加バンド数は300組くらいだと聞いています。選ばれた10組が会場でライブを行ない、そのパフォーマンスが審査の対象になります。各バンドに与えられる時間は30分で、僕たちは3曲のインストルメンタル(人声を用いず、楽器のみで演奏する楽曲)を演奏しました」

同コンテストで最終選考に残ったのは昨年が2回目だったといい、2度目にしてグランプリ受賞を獲得した。その勝因を伺った。
「最終選考に残った最初の年に感じたのは、グランプリを取るバンドは、その会場で一番盛り上がったバンド、お客さんとステージが一体化するパフォーマンスをしたバンドかな? という感想を持ちました。なので今回は、せっかくやるのであればと思い、会場のお客さんと空気を共有できる空間を意識して、ダイナミックな演奏を心掛けました。結果的に、お客さんと一体化した瞬間を感じながら楽しくやれました。

グランプリの発表を聞いた直後は、ポカンとしてしばらく実感が沸きませんでしたね。発表直後のステージで、お 客さんが温かい視線をステージに送ってくれているのを見たり、いろんな人からの"おめでとう!"という声から、応援されていたんだなということを感じて、ありがたいなという気持ちの後から、うれしさがこみ上げてきたという感じでした」

バンドではサックスを担当している村川さんだが、幼少時代にクラシックピアノを始めた後、10代初期にはギターやドラムに夢中になった。一時期はB'zの松本孝弘さんのようなギターヒーローに憧れていたという彼が、ジャズに転向したのは大学に入学した時だった。
「大学は4年間あるので、新たな楽器に挑戦してみようと思ったんです。それで今までやっていなかった管楽器のサックスを始めてみようと思い立って、サックスをやるためにジャズのサークルに入ったんです。
サックスという楽器は移調楽器と呼ばれるもので、ピアノの"ド"に当たる音はサックスだと違う音を指します。そのため、譜面もピアノとは異なるのでその変換が大変でしたね。それと、小さい頃からやっている人も多い楽器で、僕が始めたのは10代後半。遅く始めた分、必死に練習しました」

最前列に立ち、楽曲の主旋律を奏でるサックスはジャズバンドの花形とも言われる。その魅力は? と問うと、「一言でいうならば深い楽器ですね」という答えが返ってきた。
「直感的にやってみたいと思ったのが始まりなんですが、サックスは独特の音が出る楽器だと思いますね。かなり細かく音を表現することが可能で、吹き方の違いが明確に出て来るなということを実感しています。そういう細かい部分に気を使いながら、テクニックを高めていくというのが難しさでありますが、それがおもしろさでもありますね」

2013年度のサッポロ・シティ・ジャズ「パークジャズライブコンテスト」にて
写真提供:サッポロ・シティ・ジャズ実行委員

村川さんにとってサックスと出会った大学時代は、現在のミュージシャン活動に大きな影響を与えたといい、有意義なものだったと振り返る。
「所属していたジャズサークルは人数も多くて、先輩の中には日本各地、海外でもライブ活動をしている人がいましたね。ジャズ喫茶と親交が深かったこともあって、ミュージシャンとの出会いやライブをする環境が整っていました。『村川佳宏Quartett』のメンバーの木村優さん(ピアノ)、伊藤未央さん(ベース)、三間大輔さん(ドラム)とも大学時代のサークルを通して知り合いました。普段から音楽だけじゃなくて楽しく遊んだり、気心の知れた仲間という感じです。このメンバーでグランプリが取れて、いろいろなところにみんなで行けるということは公私ともに本当にうれしいです。メンバーはそれぞれ、他のバンドでも活動をしているので、一緒に演奏する時はお互いにほかで吸収してきたことを発表し合う場という感じになっていますね。メンバーのテクニックが以前より上達しているのを見たり、今までにない盛り上げ方をしたりするのを見ると、うれしく思います」

そんな気心の知れたバンドで演奏するオリジナル曲は、そのほとんどが村川さんの作品。「誰が聞いてもまっすぐに心に応える曲」を念頭に置いて曲作りをしている。

「音楽の世界も他の分野と同じく、無限の可能性があって、いろいろなアプローチの仕方があります。そういうことに挑戦することもアートの世界にはあるんだ思いますが、ライブという場においては、お客さんに音が届いて、盛り上がってはじめて価値があるものだと思うので、より多くの人に直感的に"いい!"と感じてもらえるような作品を目指していますね。多くの人にガツンと共感してもらえるものを伝えていきたいなという思いは常にあります」

その思いを伝えるべく、ライブ活動を勢力的にこなす村川さん。活動を通じて派生する出会いは格別なものだという。
「ジャズをやっているだけで、初めて会う人とでもすぐにセッションができたりとか、音楽をキーワードに、交友関係や世界がどんどん広がっていく。今回のトロント公演のこともそうだと思っていますが、そういうつながりができることが楽しいんです」

そして、ミュージシャンとして大切にしていることを後に続けた。

「"楽しい"と思える瞬間を大事にしています。もちろん、曲作りでもステージでも自分の思っているものがうまく形になる時ばかりではないですけど、思うような形になっていないということは、それは自分の中で課題を見つけたことにもなるので、そのチャレンジがまた楽しいという感じです」

言葉のふしぶしから音楽に対する真摯な気持ちが伝わってくる村川さんに、最後にトロント公演に向けての意気込みを伺った。

「トロントで現地のミュージシャンをはじめ、いろいろな人と交流ができることを今から楽しみにしています。外国人は日本のミュージシャンとはまた違う音楽性を持ち合わせていると思うんですよね。なので、自分たちが何か新しいものを吸収できることにも期待しています。トロントのみなさんに素直に喜んでもらえることを意識して、いい演奏ができるようにします。ぜひ見に来てください」。



 
 
Biography

むらかわよしひろQuartett

リーダーの村川佳宏(Sax)を中心に、木村優(pf)、伊藤未央(b)、三間大輔(ds)の4 人編成。2010年より北海道の札幌市を中心に、ジャズ喫茶、ライブハウスやイベントなどでライブ活動を行なっている。2013年、サッポロ・シティ・ジャズ「パークジャズライブコンテスト」にてグランプリを受賞。メンバーはそれぞれ、ビックバンド、ラテン、サンバ、ポップスなど多方面にて活動の場を広げている。トロント・ジャズフェスティバル (torontojazz.com)の詳細はP.9 にて。