原作の一番のファンだからこそプレッシャーは感じない
Yoshihiro Nakamura
映画監督 中村義洋(2017年10月13日記事)


今まで観たことがない忍者映画に
なったと胸を張って言える


2016年度におけるトロント日本映画祭のクロージングナイトを飾った『白ゆき姫殺人事件』とともにゲストとして参加した中村義洋監督が、最新作『忍びの国』を引き下げ再び同映画祭に登場した。中村監督は、伊坂幸太郎の人気小説『アヒルと鴨のコインロッカー』、海堂尊の医療ミステリー小説『チーム・バチスタの栄光』、荒木源の『ちょんまげぷりん』などの人気小説を次々に映画化しているヒットメーカーでもある。日本映画界で批判が多いといわれる原作小説の実写化にあっても、原作ファンをも納得させる映像を生み出すことでも定評がある。
『忍びの国』は、戦国時代に伊賀忍者と織田信長軍との間に起こった天正伊賀の乱を題材にした、和田竜による同名小説の実写化だ。ダイナミックなアクションシーンと、今まで描かれてこなかった忍者の知略を駆使した戦いの行方に目を離せない戦国エンターテイメントである。数々のヒット作を生み出す実力派監督に、同映画の見所と作品作りについて話を聞いた。


―トロント日本映画祭への参加は『白ゆき姫殺人事件』以来2回目となりますが、再びこの映画祭に参加する今のお気持ちはいかがでしょうか?
トロントの街はやっぱりいいですね。前回はナイアガラの滝やCNタワーなどの観光地に行くことができ、ちょうどプライドパレードの時期だったので、運良く見ることもできました。今回は滞在日程が少ないこともあり、観光は難しかったのですが、またこうしてトロントに来れて光栄に思います。過去にも何度か海外の国際映画祭に招かれて映画を上映したのですが、お客さんの反応がやはり日本での上映の時と違って独特なんですよね。笑いの起きるタイミングが、日本の方と海外の方とではやっぱり違うんです。海外の方はクスッと笑うよりゲラゲラと笑うので笑い声が長い。だから、編集の時にシーンの間合いを少し長くするなどの工夫をしてます。特に今回の『忍びの国』は歴史物ということもあり、脚本作成や撮影時から海外での上映を意識して作りました。戦国時代を知らない海外の方にどう映画を楽しんでもらうか考えることと、子供に歴史を教えることって似ていると思うんですよ。私自身も幼い子供がいるんですが、その子達に教えるように丁寧な描写を心がけました。海外の方はもちろん、歴史背景を知らない方も絶対に楽しんでもらえる映画になったと自信を持って言えますね。

―日本映画では忍者を題材にした映画が多くありますが、今回の『忍びの国』を製作する上でそれらと差別化した部分はどこですか?
今映画の特徴は、忍術の仕組みやからくりを描いています。例えば、身代わりの術や隠れ身の術などを解説した映画は、今までに作られていないと思います。映画の中での忍者の印象は、闇に紛れながら、時には姿を消したりするというのが多いと思うのですが、今映画に登場する忍者達は、昼間に団体で行動するし、大勢で仕掛ける忍術も出てくるので、今までに観たことがない忍者映画になっていると思います。まるでマジックショーの種明かしをしているような感じなので、そういった部分では、もしかすると忍者好きの方には物足りなく映るかもしれません。しかし、本来忍術は逃げるための術であり戦うための術ではないんですよね。それが劇中では、戦わざるを得ない展開になるので、忍者たちは敵とどう戦っていくのかが見所でもありますね。


―主演の大野智さんとは『映画 怪物くん』以来、約6年ぶりのタッグですが、今回の主人公に抜擢された理由をお聞かせください。
実は脚本作成時の当初は、主役が全然思い浮かばずに作業が止まってしまっていたんですね。でもある日、大野くんに当てはめて考えて物語を考えていったら、すごくハマったんです。大野くんは、本番以外の時間は本当にやる気がないように見えるんですが、いざ本番になるとしっかりとやり遂げてくれる人。この映画の主役である無門(むもん)も、正にそうなんです。普段は、寝てばかりでやる気もないけど、銭のためとなるとものすごい能力を発揮する。さらに大野くんの雰囲気や佇まいなど、私がイメージする無門そのものだったので、まさにハマリ役だなと思いました。大野くん自身も普段は少し猫背なのですが、劇中でもそのままの姿勢でやってもらいました。

―過去の作品などを見ますと小説が原作の実写化が多いですが、中村監督がその小説を読んで、映画にしたいと思う決め手をお聞かせください。
作家の主張にどれだけ自分が共感できるかが第一ですね。よくインタビューを受けた際に「人気小説の映画化ということでプレッシャーはありましたか?」と聞かれるんですが、今までまったく感じたことはありません。もし感じるとすれば、それは私自身がイマイチ映画化に乗り気じゃないと思うんです。なぜなら、自分はこの原作の世界一のファンという自信があるので、純粋に好きな小説をどう映像で表現するか、どう伝えるかだけを考えて作っているので、実際は楽しくて仕方ないんです。無我夢中で作品作りを楽しんでいるので、今までも、多分これからもプレッシャーを感じることはないと思います(笑)。


―コメディからホラーまで幅広い作品で今まで監督をされていますが、挑戦したい分野はありますか?
もちろん、これからもジャンルを問わず、自分が魅力的に思う小説の映画化はしていきたいですね。あとは、私自身が飽きっぽい性格だということもあるのですが、この道一筋的な職人さんにスポットを当てた作品を手掛けてみたいと思っています。でも、まだその予定は無いので私のただの願望ではあるのですが、これから先そんな方と出会う機会があればいいなと思っています。





 

Toronto Japanese Film Festival
第六回トロント日本映画祭

忍びの国
Mumon: The Land of Stealth
© 2017 Mumon Film Partners

監督:中村義洋
上映時間:125分
出演:大野智、石原さとみ、鈴木亮平、知念侑李ほか







Biography

なかむら よしひろ
映画監督。大学在学中にPFF(ぴあフィルムフェスティバル)にて準グランプリを受賞し、早い時期からその才能を開花させた。『ゴールデンスランバー』『チーム・バチスタの栄光』『白ゆき姫殺人事件』ほか、人気小説の映画化を数多く手がけている。