クラウンYoshiが世界中に笑顔を運ぶ
深井 吉紀
クラウン(2011年09月16日記事)

楽しさの中にある厳しさと、その先にある夢

今回は、毎年恒例の大道芸の祭典『バスカーフェスト』に出演する日本人クラウン(ピエロ)にその活動等を伺いたいと思い、取材を申し込んだ。イベント初日、待ち合わせ場所にはスタッフと思われる人たちや観光客らが行き交う。その中で、一際個性的な出で立ちの男性が見えた。絶対彼がクラウンのYoshi さんだと声を掛けると、やっぱりそうだ…。Yoshi さんは外見からは意外と思えるほど静かな物腰で話してくれた。

ークラウンって具体的には何をするのですか?

「コメディマジックや長い風船で色々モノを作ります。これらはどちらかと言えば子ども向け。大人向けには、お客さんを交えてのジャグリングやアクロバット。子どもには分かりやすい芸、大人にはブラックジョークを混ぜたりしています」

ーそういう芸はどこで学ぶのですか?
「独学なんです。(僕の出身の)三重県や名古屋の辺りには芸人すらあまり居なかった。今はだいぶ浸透してきて多いですけどね。15年前の話ですから…。だから外国人アーティストのビデオを見たり、サーカスを見たりして芸を盗みました」

ー15年前だったら特に、職業としての大道芸人はあまりいなかったでしょうね。

「そうですね。最初は全然食べられなくて、ハラハラ、ドキドキ(笑)。別の仕事を持ちながらやっていました。元々サラリーマンで、クラウンは週末にやっていました。土・日にピエロのメイクをして路上に立って、ただ風船を作る(笑)。他に芸が無かったんですよね。でも、それが楽しかった。そのうち『いつか職業に…』と思い始めました。そんな時にたまたま、日本で(大道芸の)フェスティバルが開催されていて『こんな職業もあるんだ』という感じで出会いました。そこから、今に至る、という感じです」

ー会社では何のお仕事を?

「商品管理とか、工場を廻ったりしていました。今の仕事は波があるし、ボーナスもないし安定していないので、会社を辞める時には親に大反対されました。『何で大道芸なんだ!?』って…。『出て行け!』と言われて東京に行って、最初はフラフラしていたんですが、『まあ、何とかなるだろう』という性格だったのでよかったんでしょうね」

ー会社勤めを辞められてから、具体的には何をなさっていたんですか?

「ピエロができるかも、と思ってサーカスでバイトしました。サーカスって言っても、チケットもぎりとか売店とか色々なポジションがありますが、それだとショーが見られないので照明係。照明だと毎日サーカスが見られる。すごく運がよかった。後半は眠そうにしてましたけど(笑)。1〜2か月後に『サーカスに入るか?』って言われて、『ピエロがやりたいんです』って言ったら、そこではピエロは海外から呼んでるから空中ブランコからだと言われました。だから辞めちゃった(笑)。でも、すごく刺激的でした。なんかね、集団社会に馴染めないんですよ。個人でやりたかったんだと思います。そういう性格なんでしょうね」

ーでも、ピエロって誰でも出来るという職業ではなさそうですよね。昔から、手先が器用だったりしたのですか?

「器用かどうかは分かりませんが、体は柔らかかったです。小学校からやっていた器械体操が今に活かされましたね。でも多分、人を笑わせるのが好きだったという要因が大きいと思います。子どもの頃はすごく内気だったんですけど… 泣き虫で…。矛盾してますね(笑)」

ー今とは正反対ですね(笑)。バスカーとしてストリートとステージでは、どちらがやりやすいですか?

「どちらも好きな空間があるんですよね。見てもらうことには変わりないんですけど… どちらも好きです。でも、難しいのはストリート。通りがかりの人達に足 を止めてもらうということなので」ーパフォーマンスではお客さんを絡めることもありますが、人を選ぶコツは?「基本的にはニコニコして観ていてくれる人。ステージに立ったら直ぐに自分の中でオーディションをするんです。あまり盛り上げ上手な人でも難しいし、大人しすぎてもだめ。すごく慎重に選びます」

ー日本人だとシャイですしね

「海外のお客さんのほうが盛り上げ上手でしょうね。でも、日本国内でも違って、特に名古屋のお客さんはシャイです」

ーそうなんですか? 意外ですね

「大阪はノリがいい。『早よヤレー!』みたいな野次が飛んだり(笑)。名古屋では、拍手でも他の人がしているから私も…という感じです。ちゃんと最後まで観てくれますけどね。名古屋でどかーんと行かせたら一流の芸人さんだと、昔から言われているんですよ」

ー逆に、海外のお客さんは途中で帰ったり、反応がハッキリしすぎていませんか?

「そういう時は、どこで(お客さんが)帰ったかをキチンと覚えて、改善しなくちゃいけないんです。ここでよく帰る傾向があるから流れを変えなきゃいけないんだな、とか、ここに失敗が多いから帰るんだな、とかね」

ー楽しいだけじゃないんですね

「僕も最初はそう思っていたんですが、全然違うんですよね。パフォーマンス中に事故があってはいけないですし…。道具を取る振りをして、後ろのお客さんを チェックするんです。横や後ろだけじゃなく、頭上など、色んなところに電波を発してないと難しい。今、この状況でも、空に飛行機が飛んでたらリモコンを取り 出してコントロールする振りをしたり…アドリブが一番難しいんですけどね」ークラウンをやり始めた時に思い描いていた目標は叶ってきていますか?「昔はがむしゃらにやってるだけでしたけど、だんだんこうなりたい、って言うのが出てきて、着々と叶ってきてはいます。まだまだこれからですけど。1つでも多くの国に行って、1人でも多くの人に見てもらいたいですね」

ー大道芸人を続ける活力になっているものは何ですか?

「やはり、楽しんでもらえることですね。幸せそうに笑ってもらえることです。ショーが終わった後に『ありがとう』って言われたことがあるんですよ。その時は感激しましたね。特に、介護・福祉施設などを廻ってる時には、元気になってくれてよかった、と思いますし、幼稚園では園児の喜ぶ顔とかを見るとね…、辞められないですよ」

Biography

ふかい よしのり クラウンYoshi、もしくはLOTO として活躍中。ジャグリング、パントマイム、アクロバット、コメディマジック等を得意とする。98 年、水口パフォーマンスコンテスト優秀賞受賞。00年にスカイランド生駒・大道芸コンテスト優勝。以来、日本各地はもとより、アメリカ各地、中国、ニュージーランドなどでも公演。大道芸フェスティバル以外にも、愛知万博などのイベントや遊園地での公演や、テレビ出演、保育園・老人会・学園祭などにも出張し、笑いを振りまいている。www5.ocn.ne.jp/~loto