誰もやっていないことをして人を驚かせたい
Yosuke Ikeda
パフォーマー 池田 洋介 (2014年10月17日記事)


世界各国から60組以上のパフォーマーが集まり、ストリート上で連日連夜それぞれの芸を披露する大道芸のフェスティバル「BuskerFest」。今年はそのBuskerFestに、日本人の池田洋介さんが初登場した。池田さんは、パントマイムやマジック、ジャグリングなどを融合させたパフォーマンスで、日本だけでなく海外でも高い評価を得ている。

― どういったきっかけで、パフォーマンスを始めましたか?

「高校生時代は、 ちょうどテレビでマジックとか、Mr.マリックの超魔術とかが流行っていた時代だったので、それで興味を持って。自分で本などを買って練習して、独学で研究していました。その後大学に入ったら奇術研究会があったので、そこに入部したんです」

― ご出身は京都大学でしたね

「そうです。理学部数学科が専攻だったので、(今の職と)違うといったらぜんぜん違う方向ですよね。まさか京都大学に行ってパフォーマーになるという人はたぶんいないですよね(笑)。それで、その奇術研究会で、最初はマジックをやっていたんですけど。周りのほとんどの人がマジックをやっているんですよ。だからみんなと違うものをしようと思って、ジャグリングを始めました。それで大学にジャグリングサークルを立ち上げて。当時はまだジャグリングという言葉が日本にまだ浸透していなかったので、東京大学や京都大学など数えるほどしかありませんでした。それで大道芸のパフォーマンスをイベントごとに見に行くようになって、人に見せる、ということに興味を持ち始めましたね。大学の勉強はあんまりちゃんとしていなかったんですけど(笑)」


今年の8月後半にトロントで開催されたBuskerfestの様子。子どもを中心に多くの観客を惹きつけた


― 大学在学中から大道芸のイベントに出るようになったんですか?

「そういうイベントには、一般の人が参加するチャレンジコンテストや、アマチュア部門みたいなものがあるんですよ。そういうのに少しずつ出るようになっていきました。大学を卒業して大学院には進んだものの、大道芸の活動をしたかったので休学して。このままパフォーマーをやっていこうかと思っていたんですけど、当時付き合っていた彼女が、それでは絶対食べていけないから、といって予備校のチラシを持ってきて、講師の仕事があるからこれをしなさい、と。それで数学の講師を始めました。結局、大学院はそのままフェードアウトして辞めてしまったんですが、講師とパフォーマーという二足の草鞋状態をずっと続けていました。予備校は時間の制約がそこまでなく自分の好きな時間を作ることができるので、パフォーマーを無理なく続けられて。授業のコマが増えてくると時間の制約も増えてくるんですけど、自分である程度コントロールできるので、自由時間が作りやすいんです。普段は講師をしつつ、年に2、3回大きな大道芸のイベントに出て、といった生活をずっと続けていました」

― そういった生活を続けている中で、海外でパフォーマンスをしようと思ったきっかけはなんですか?

「きっかけは『HelloGoodbye』という作品です。この作品は、ビートルズの『ハロー・グッバイ』という歌にあわせて『Hello』や『Goodbye』といった歌詞の単語が箱や布などに現れるパフォーマンスなのですが、これを発表したのは2年程前になります。自主制作のステージというものを企画して、そのために作った作品なのですが、わりと高い評価をいただいたんです。それで思いつきでYouTubeにその映像をアップしたら、世界中にばっと広まって。『HelloGoodbye』を見た南アフリカのプロデューサーの方から、今年の5月と6月に南アフリカのケープタウンであった、『Jive Cape Town Funny Festival』というフェスティバルに誘われたんですよ。それは約1か月間、ほぼ毎日ステージでコメディショーをするといったものでした。さすがに予備校をそんなに長く休むわけにはいかないので一度辞めて、せっかくだからパフォーマンスをしながら海外を回ろうと決意しました。夏の間はカナダやヨーロッパなど、いたる所でフェスティバルがあるので、日程や場所がうまくつながってスムーズに公演ができるように計画しました」

― その中のひとつ、フランスのミモス国際マイムフェスティバルで準優勝されましたね

「そのときは、今回トロントのBuskerFestで披露したものと同じものをしました。メトロノームなどの音にあわせてパントマイムなどをする『Rhythm』と『HelloGoodbye』を続けてパフォーマンスしたんです」

― 2つとも、パントマイムにジャグリングやマジックを組み合わせたものですよね

「マジックだけ、ジャグリングだけ、という演出の仕方もありますが、パフォーマンスって、そもそもきっちりした区切りはないですよね。自分がやりたい面白いものができれば、そういう区切りは必要ないかな、と。『HelloGoodbye』を作ったときは、歌詞にあわせて単語とかが出てくるパフォーマンスがあれば面白いなぁと思ったのがきっかけでした。フェスティバルに出演するために応募すると、ほかの人がやっている二番煎じのようなものは選ばれないので、人がなるべくやっていないものを考えますね」



メトロノームなどのリズムに合わせたパフォーマンス
『Rhythm』を 公演する池田さん


― 新作のパフォーマンスを考えるときに数学的な観点がヒントになったりしますか?

「論理的に考えていくプロセスというのが、全体的に役に立つでしょうね。計算をすることが数学なのではなくて、何かを組み立てて考えていく、理路整然と並べていく、ということが数学なので。パフォーマンスをつくるときも、今こういう方向性でいっているから、次は逆にこういう方向性でいこう、というように考えます。面白いパフォーマンスを見たときに、何で面白いのかを理屈化して、自分なりにもう一回構築する、といった、そういうのが数学的な思考なのかなと。あと、なぜかはわからないですけれど、ジャグリングをやる人は理系の人が多いですね」

―最後に、今後の予定を教えてください

「トロントのあとは日本に帰って、また日本で活動をする予定です。日本でも大道芸の大きなフェスティバルがたくさんあるので。それに向けて新作も考えつつ、各地で活動をしていきたいと思います」。



 
 


Biography

いけだ ようすけ


京都出身。京都大学理学部卒業。在学中に独学でマジック、ジャグリング、パントマイム などを習得。2002年からそれらを組み合わせた独自のパフォーマンススタイルを始め、新しい作品を次々に発表。大手予備校「河合塾」の講師も勤めていたが、2013年に授業をすべて降り、翌年には世界各地のフェスティバルなどでパフォーマンスを行なう。
サイト iky.no-ip.org